2006/11/14号◆特集記事「膵臓癌の発見に有望な試験結果」

同号原文

NCI キャンサーブレティン2006年11月14日号(Volume 3 / Number 44)
____________________

特集記事

膵臓癌の発見に有望な試験結果

研究者らが、新規のタンパク質マイクロアレイ技術を用いて、血液サンプル中の10のタンパク質バイオマーカーのパネルを同定し、それらが膵臓癌の存在の発見や、サンプルが本当に陰性かどうかの確認に対して、非常に正確であると証明した。

複数のバイオマーカーの専門家が、この発見は予備的ではあるが有望であるとみなしている。しかし、本試験を率いたピッツバーグ大学医学部のAnna E. Lokshin博士は、商業的に使用可能な試験が臨床の場に辿り着くまでには、まだ多くの課題がある、との認識を示した。

「私たちは、このスクリーニング法の感度を100%にまで持っていくために、より強力なバイオマーカーを探しています。」とLokshin博士は言う。「今までのところ、これらの予備的な結果は非常に有望なものですが、この試験方法が広く用いられるためには、100%の正確さを達成しなければなりません。」

Lokshin博士は、この試験結果を月曜日にボストンで開かれた米国癌学会(AACR)の癌予防研究のフロンティア会議で発表した。この試験は、ハーバード大学とノースウェスタン大学の研究者らと共同で実施された。研究チームは、44のバイオマーカーのパネルから手をつけ、それらはLokshin博士の説明によると「腫瘍と身体の間の対話を表すもの」であり、腫瘍細胞によって分泌されたタンパク質、腫瘍に栄養を届ける血管系、免疫システム細胞や、腫瘍の存在によって作り出された腫瘍微小環境の細胞である。

研究チームは次に、タンパク質アレイ・システムを用いて、疾患の初期段階にある患者も含め、切除可能または切除不可能な膵臓癌の患者100人およびコントロール群の健常人400人から採取した血液サンプルを分析した。そして、患者のサンプル中に、コントロール群と比べて、多くのタンパク質発現の顕著な違いがあることを発見した。

Lokshin博士の言う「私たち自身の、極めて強力なアルゴリズム」を用いて、彼らは患者サンプルの97%を正しく同定する、10のバイオマーカー・パネルを発見した。更に、それらのパネルの感度および特異性(腫瘍を正しく同定する力および癌がないことを同定する能力)はそれぞれ95%と98%であった。

「この試験の完了後、私たちは盲検化バリデーション試験において、強力な診断能力と87%の感度および98%の特異性で、結果を再現できました。」とLokshin博士は述べた。

この試験の資金を提供したNCIのEarly Detection Research Network (EDRN)(早期発見研究ネットワーク)の、主任であるSudhir Srivastava博士は、チームの業績を賞賛したが、結果を深読みしすぎることに注意を促した。

「もっと臓器に特異的になるように、パネルを絞り込まなければなりません。」とSrivastava博士は説明した。試験で使用されたバイオマーカーの中には、膵臓癌で発現しているものもあるが、それらは他の癌においても過剰発現しているため、「交差反応」の明らかなリスクがある、と博士は指摘した。

ボストンで発表された結果は、膵臓癌患者を特異的に認識する10のバイオマーカー・パネルを示したが、肺癌、食道癌、頭頸部癌、卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌、メラノーマなどその他の癌患者を認識するものではない。

サンプルを試験するのに使用される診断法も標準化する必要があり、また、結果がその他の施設においても再現可能であることを確かめるために、異なる患者コホートで試験され洗練されたバイオマーカー・パネルが必要になる、とSrivastava博士は付け加えた。

おそらく最も重要なことは、「前方視的に収集されたサンプルにおいて試験されなければなりません。それにより、診断可能となる期間に関してどのような利益を得ることができるかを決定できます。」とSrivastava博士は述べた。言い換えると、その試験法が、治療により実際に生存期間を改善できるくらい早期に疾患を発見できるか、ということである。データ解析に使用される統計学的アルゴリズムも検証される必要がある、と博士は重ねて述べた。

「検証の手続きが、この最初の素晴らしい結果が本物であるかどうかを決めるのに重要でしょう。」と、この分野で研究をしているワシントン大学医療センターのTeri Brentnall博士は述べた。

癌研究ハイライト

翻訳担当者 Oonishi 、、

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

膵臓がんに関連する記事

膵がん転移巣を標的とした放射線治療の追加により無増悪生存期間が延長の画像

膵がん転移巣を標的とした放射線治療の追加により無増悪生存期間が延長

転移膵臓がんの臨床試験で報告された中で最長の無増悪生存期間を達成オリゴ転移(少数の転移巣)のある膵がん患者で、標準治療の化学療法に転移巣を標的とした放射線治療を追加することで無...
膵臓がん早期発見にエクソソームを用いたリキッドバイオプシーが有望の画像

膵臓がん早期発見にエクソソームを用いたリキッドバイオプシーが有望

エクソソームを用いたリキッドバイオプシーは、バイオマーカーCA19-9と併用することで、ステージ1〜2の膵臓がんの97%を正確に検出した。この研究結果は、4月5日から10日まで開催され...
膵臓がんの治験用RNAワクチンに対する免疫応答は、臨床的有用性と相関の画像

膵臓がんの治験用RNAワクチンに対する免疫応答は、臨床的有用性と相関

中央値3年間の追跡調査結果切除可能な膵臓がんの特定の患者において、autogene cevumeran(オートジーン セブメラン:治験中の個別化されたネオアンチゲン特異的mRN...
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...