FDAが肝臓がんにレゴラフェニブを承認

米国食品医薬品局(FDA)は本日、regorafinib[レゴラフェニブ](商品名:Stivarga[スチバーガ])の適応を、ソラフェニブでの前治療歴がある肝細胞がん(HCCまたは肝臓がん)患者の治療に拡大することを承認した。FDAが肝臓がんの治療薬を承認したのは、直近10年間では今回が最初である。

「肝臓がん患者には、限られた治療選択肢しかありません。ソラフェニブを用いた一次治療で奏効が得られなくなった場合に利用できる治療薬がFDAに承認されたのは、HCC患者にとっては今回が初めてです」とFDA医薬品評価・研究センター血液腫瘍製品室長代理で、FDAOncology Center of Excellence室長であるRichard Pazdur医師は述べた。

米国国立がん研究所によると、2017年には約40,710人が肝臓がんと診断され、約28,920人が同疾患で死亡すると推定されている。HCCは、肝臓で生じ、肝臓がんの中で最も多いがん種である。

レゴラフェニブはキナーゼ阻害剤の一種であり、がんの増殖を促進する複数の酵素、たとえば血管内皮増殖因子経路に関わる酵素を阻害することで作用する。レゴラフェニブは、前治療に不応となった結腸直腸がんおよび消化管間質性腫瘍の適応で承認されている。

HCC治療でのレゴラフェニブの安全性と有効性は、ソラフェニブ投与後に腫瘍が進行したHCC患者573人を対象としたランダム化比較試験で検証された。本試験では、治療後に患者が生存した期間の長さ(全生存期間)、治療後に腫瘍が増殖しなかった期間の長さ(無増悪生存期間)、および治療後に腫瘍のすべてまたは一部が退縮した患者の割合(全奏効率)を測定した。全生存期間中央値は、プラセボ投与患者の7.8カ月に比べ、レゴラフェニブ投与患者では10.6カ月であった。無増悪生存期間中央値は、プラセボ投与患者の1.5カ月に比べ、レゴラフェニブ投与患者では3.1カ月であった。全奏効率は、プラセボ投与患者の4%に比べ、レゴラフェニブ投与患者では11%であった。

レゴラフェニブに多くみられる副作用には、痛み(消化器痛および腹痛など)、手足皮膚反応、疲労、下痢、食欲減退、血圧の上昇(高血圧)、感染症、発声困難(発声障害)、血中ビリルビン値の上昇(高ビリルビン血症)、発熱、粘膜の炎症(粘膜炎)、体重減少、発疹および悪心が挙げられる。レゴラフェニブに関連する重篤なリスクは、肝臓への障害(肝毒性)、感染症、重度の出血(出血)、胃または腸の破れ(胃腸の穿孔または瘻孔)、皮膚の損傷(皮膚毒性)、高血圧、心臓の血流障害(心筋虚血および心筋梗塞)、一時的な脳浮腫(可逆性後頭葉白質脳症症候群)、および創傷治癒障害である。

妊娠中、授乳中の女性は、胎児や新生児の発達を害する恐れがあるため、レゴラフェニブの投与を避けること。レゴラフェニブを投与中の男女は、投与中および最終投与後2カ月間は有効な避妊を行うこと。

今回のレゴラフェニブの承認申請は優先審査認定が適用された。優先審査認定では、FDAは、その薬剤が承認された場合には、治療、診断、または重篤な状態の予防における,安全性や有効性を著しく改善するかどうかを判断し、6カ月以内に承認申請に対する措置を取ることを目標とする。

また、今回拡大されたレゴラフェニブの適応はオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)にも指定された。希少疾病用医薬品とは、希少疾患の治療を目的とする医薬品の研究開発を支援し奨励するためのインセンティブを提供する制度である。

FDAは、Bayer HealthCare Pharmaceuticals Inc社に対してStivargaを承認した。

翻訳担当者 前田 愛美

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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