FDAが切除不能/転移HER2陽性乳がんにトラスツズマブ デルクステカンを承認

2019年12月20日、米国食品医薬品局(FDA)は、転移性の乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けた切除不能または転移HER2陽性乳がん患者に対して、トラスツズマブ デルクステカン(販売名:ENHERTU、第一三共株式会社)を迅速承認した。

2つ以上の抗HER2療法を受け、HER2陽性であり、切除不能であるか転移が認められる乳がん女性患者184人を対象とした多施設共同単群試験であるDESTINY-Breast01(NCT03248492)において、有効性が評価された。患者は、許容できない毒性または疾患進行が認められるまで、3週間毎にトラスツズマブ デルクステカン5.4 mg/kgの静脈内投与を受けた。

主要有効性評価項目は、RECIST1.1に基づいて独立中央判定が評価した客観的奏効率(ORR)および奏効期間であった。ORRは60.3%(95%信頼区間[CI]:52.9~67.4)であり、このうち完全奏効率は4.3%、部分奏効率は56%であった。奏効期間中央値は14.8カ月(95%CI:13.8~16.9)であった。

安全性は、DESTINY-Breast01試験およびDS8201-A-J101(NCT02564900)試験でトラスツズマブ デルクステカン5.4 mg/kgを1回以上投与され、切除不能であるか転移が認められるHER2陽性乳がん患者234人のプール解析によって評価された。トラスツズマブ デルクステカンに最もよくみられた副作用(20%以上)は、悪心、疲労、嘔吐、脱毛、便秘、食欲減退、貧血、好中球減少症、下痢、白血球減少症、咳、血小板減少であった。処方情報には枠組み警告が含まれており、間質性肺疾患(ILD)および胎児毒性が生じる危険性を医療従事者に警告している。間質性肺疾患により死亡に至った患者の割合は2.6%であった。

トラスツズマブ デルクステカンの推奨用量は、許容できない毒性または疾患進行が認められるまで、3週間毎に5.4 mg/kg 静脈内投与(21日サイクル)である。

ENHERTUの全処方情報はこちらを参照。

本審査には、FDAによる評価の促進を目的として申請者が自発的に申請を行うAssessment Aidが使用された。FDAは、本申請を画期的治療薬に指定した。トラスツズマブ デルクステカンはファーストトラックおよび優先審査の指定も受けた。本申請はFDAの目標期日の約4カ月前に承認された。

FDAの迅速承認プログラムに関する情報は、「企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム−医薬品およびバイオ医薬品(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)」に記載されている。

翻訳担当者 星野恭子

監修 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

健康な女性にも乳がんに似た細胞があることが研究で判明の画像

健康な女性にも乳がんに似た細胞があることが研究で判明

乳房組織には、浸潤性乳がんに見られる遺伝子変化を持つ正常細胞が含まれており、将来の早期発見へのアプローチの指針となる可能性がある。

健康な女性の場合、一見正常に見える乳房細胞の一部に浸潤...
心臓病患者は進行乳がんのリスクが高まる可能性の画像

心臓病患者は進行乳がんのリスクが高まる可能性

進行または転移乳がんと診断された患者は、早期乳がんの患者に比べて心血管疾患の既往の可能性が高いことが研究から判明

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者によると、心血管疾患(C...
米FDAが切除不能/転移ホルモン陽性HER2陰性乳がんにダトポタマブ デルクステカンを承認の画像

米FDAが切除不能/転移ホルモン陽性HER2陰性乳がんにダトポタマブ デルクステカンを承認

2025年1月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、切除不能または転移性疾患に対するホルモン療法および化学療法を受けたことのある切除不能または転移、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮...
米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告の画像

米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告

米国保健福祉省(HHS)ニュースリリース飲酒は米国におけるがんの予防可能な原因の第3位本日(2025年1月3日付)、米国公衆衛生局長官Vivek Murthy氏は、飲酒とがんリ...