2010/11/30号「世界との連携」特別号◆FDA最新情報「末期乳癌の治療に新たな選択肢が追加される」「デノスマブが癌患者の骨関連疾患の予防に承認」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年11月30日「世界との連携」特別号(Volume 7 / Number 23)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

____________________

FDA最新情報
・末期乳癌の治療に新たな選択肢が追加される
・デノスマブが癌患者の骨関連疾患の予防に承認
後期乳癌の治療に新たな選択肢が追加される

米国食品医薬品局(FDA)は、末期乳癌に対して、2種以上の化学療法での治療歴のある女性における転移乳癌の治療薬として、メシル酸エリブリン(Halaven)を承認した。

エリブリンは海綿動物(クロイソカイメン、学名Halichondria okadai)由来の合成化合物である。本剤は微小管形成を阻害することにより、癌細胞の増殖を抑制すると推定されている。エリブリン注射剤による治療の条件は、早期または末期乳癌に対するアントラサイクリン系およびタキサン系薬剤による治療歴があることである。

FDAによるエリブリンの承認は第3相試験(EMBRACE試験)のデータに基づいている。6月に行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された予備結果によると、エリブリン投与群の全生存期間の中央値は、対照群の中央値より2.5カ月長かった。エリブリン投与群の全生存期間の中央値は13.1カ月であり、単剤投与群では10.6カ月であった。

本試験は、化学療法レジメンを過去に2種以上受けている転移乳癌の女性患者762人を対象とした。患者は、エリブリン投与群または腫瘍専門医が選択した薬剤での単剤治療群に無作為に割り付けられた。

主な副作用は、感染防御白血球の減少(好中球減少)、貧血、白血球数の減少(白血球減少)、抜け毛(脱毛)、倦怠感、悪心、衰弱(無力症)、神経損傷(末梢神経障害)、および便秘であった。

「他の薬剤で治療歴のある進行末期乳癌患者の治療選択肢は限られています」とFDA医薬品評価研究センター抗腫瘍製品室長のDr.Richard Pazdur氏は声明で述べた。「Halavenは生存期間延長に明らかな有効性を示しており、女性患者にとって重要な新しい選択肢となります」。

デノスマブが癌患者の骨関連疾患の予防に承認

モノクローナル抗体製剤であるデノスマブは、骨折リスクが高い閉経後女性の骨粗鬆症の治療を目的として2010年6月に承認されたが、固形腫瘍からの骨転移を有する患者における骨関連事象の予防を目的として、より高用量での追加承認を取得した。臨床試験においてデノスマブは、さまざまな種類の癌患者が骨折や脊髄圧迫を発現したり、骨痛のための手術や放射線治療の必要性が生じたりするまでの期間を延長したという点で、ゾレドロン酸(ゾメタ)より優れていた。

デノスマブは、癌患者への投与時(製品名:Xgeva)と、骨粗鬆症患者への投与時(製品名:Prolia)では安全性プロファイルが異なっている。また、骨粗鬆症患者にはデノスマブ60mgを6カ月に1回投与癌患者には4週間に1回デノスマブ注射剤120mgを投与するのに対し、癌患者ではXgevaがより高用量で頻回の投与となる。

「Xgevaは、癌による骨合併症を減少する目的の既承認薬とは作用機序が異なります」とFDAのDr.Richard Pazdur氏は言う。総計5723人の患者を対象とした3つの国際的な大規模臨床試験では、乳癌の女性患者と前立腺癌の男性患者の治療において、デノスマブがゾレドロン酸より優れていた。これらの薬剤は、非小細胞肺癌、多発性骨髄腫、腎癌、小細胞肺癌などの癌患者では同等の有効性を示していた。しかしながら、デノスマブは多発性骨髄腫または、その他の血液癌の患者に対する適応では承認されていない。

******
山本 容子 訳
辻村 信一(獣医学/農学博士・メディカルライター)監修 

******

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告の画像

米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告

米国保健福祉省(HHS)ニュースリリース飲酒は米国におけるがんの予防可能な原因の第3位本日(2025年1月3日付)、米国公衆衛生局長官Vivek Murthy氏は、飲酒とがんリ...
【SABCS24】乳がんctDNAによるニラパリブの再発予測:ZEST試験結果の画像

【SABCS24】乳がんctDNAによるニラパリブの再発予測:ZEST試験結果

ステージ1~3の乳がん患者において治療後のctDNA検出率が低かったため、研究を早期中止

循環腫瘍DNA(ctDNA)を有する患者における乳がん再発予防を目的とするニラパリブ(販売名:ゼ...
【SABCS24】CDK4/6阻害薬の追加はHR+/HER2+転移乳がんに有効の画像

【SABCS24】CDK4/6阻害薬の追加はHR+/HER2+転移乳がんに有効

「ダブルポジティブ」転移乳がん患者において、標準療法へのCDK 4/6阻害薬追加により、疾患が進行しない期間(無増悪期間)が有意に延長したことが、サンアントニオ乳がんシンポジウ...
【SABCS24】中リスク乳がん患者のほとんどは乳房切除後の胸壁照射を安全に回避できる可能性の画像

【SABCS24】中リスク乳がん患者のほとんどは乳房切除後の胸壁照射を安全に回避できる可能性


BIG 2-04 MRC SUPREMO臨床試験によると、中リスク乳がん患者は乳房切除後に胸壁照射(CWI)を受けても受けなくても、10年生存率は同程度であったという結果が、2024年...