乳癌の手術および再建術による合併症は稀であるが、両側乳房切除術は片側乳房切除術よりも特定の合併症リスクが高い
<乳癌の予防、検診、治療における発展ー2014年乳癌シンポジウム主要研究ハイライト>
(折畳記事)
*この要約には抄録にはない最新データが記載されています
専門医の見解:
「遺伝子検査の時代では遺伝性の乳癌が意識されるようになってきています。しかし、遺伝子変異が認められずリスクが平均的である乳癌患者に対して将来のリスクが過剰に見積もられることが多く、必要範囲を超えて手術が行われる結果になりかねません」と乳癌シンポジウム・ニュースプランニングチームの一員であるJulie Margenthaler医師は述べた。「女性の皆さんは、両側乳房切除術+再建術においては片側乳房切除術+再建術よりもインプラント(人工乳房の埋植)術失敗や輸血あるいは再手術の確率が高いということについて説明を受ける必要もあります」。
両側または片側乳房切除術と乳房再建術を受けた18,000人超の女性を対象とし、術後30日以内に認められた合併症に関して新たな解析が行われた。その結果、片側乳房切除術および両側乳房切除術によって発現する合併症は全体的に稀であることが明らかになった(合併症の全発現率5.3%)。しかし、両側乳房切除術では片側乳房切除術と比較してインプラント術が失敗となる人や輸血を必要とする人の割合が高く、入院期間も長かった。今回の研究は、乳房再建術を併用した場合の片側乳房または両側乳房切除術による合併症を比較評価したこれまでで最大規模のものである。
「女性の皆さんは、手術後の両乳房外観の均質性をもっと高めたいという想いから再発に対する恐れに至るまで、実にさまざまな理由で癌に罹患していない側の乳房手術も選択されます。われわれの所見から、片側乳房切除術も両側乳房切除術も概して安全であることは判明していますが、両側乳房切除術の方が特定の合併症リスクが高くなります」と語るのは本研究の筆頭著者でシカゴ大学Pritzker School of Medicine(医学部)外科臨床助教のMark Sisco医師である。「これらの結果は、乳房切除術と再建術を考慮している女性にとって安心材料になりますし、手術の選択に影響を与え得る追加の情報にもなっています」。
片側乳房のみに癌が認められる乳癌患者において、罹患乳房と健康な乳房の双方を切除する選択的手術、すなわち予防的対側乳房切除術(CPM)の実施率はここ10年で5倍高くなっている。大多数の女性に関して、この手技によって生存期間が向上することを示すエビデンスはない。しかし、BRCA遺伝子変異や乳癌の顕著な家族歴などの遺伝的素因を有する片側乳癌患者については、エビデンスからCPMによって生存期間を改善できることが示唆されている。
研究者らは、米国外科学会のNational Surgery Quality Improvement Program(NSQIP)(全米手術の質改善プログラム)データベースを用いて、片側または両側の乳房切除術と乳房再建術を受けた乳癌患者18,229人を同定した。患者の大半(64.3%)は片側乳房切除術を受けていた。また、両群の大方の女性は、自己の他部位の組織を乳房再建に使用する自家組織再建法(皮弁法)ではなく、インプラント術に基づく再建術を受けていた(合計15,000人:両側乳房切除術群女性の88.6%、片側乳房切除術群女性の79.4%)。術後30日以内に発生した合併症について評価を行った。
解析によれば、インプラント術に基づく再建を行った女性の中では、両側乳房切除術を受けた患者群の方が片側乳房切除術を受けた患者群と比較してインプラント術の失敗率が高く(1%対0.7%)、術後30日以内に2回目の手術を要する患者が多かった(7.6%対6.8%)。出血による合併症のために輸血を要する患者の割合も、再建術の種類に関わらず両側乳房切除群の方が高かった。特に自家組織再建法を実施した患者では、片側乳房切除術受けた患者の3.4%が輸血を必要としたのに対し、両側乳房切除術を受けた患者では7.9%であった。インプラント術に基づく再建を行った患者での輸血の発生頻度は低かったが、片側乳房切除患者の0.3%、両側乳房切除患者の0.8%で輸血を必要とした。
予想されていたように、片側乳房切除群の患者よりも両側乳房切除術群の患者の方が入院期間は長かった(インプラント術に基づく再建術を受けた場合:1日対2日、自家組織による再建術を受けた場合:4日対5日)。肺炎や心臓障害など内科的な合併症の発現率は全体的に低く、2群間で同様であった。
他のエビデンスと共に本研究のデータから、片側乳房切除術と両側乳房切除術(予防的対側乳房切除術)のいずれかを選択しようとする女性を支援する上で、欠くことのできない判断材料の最新情報を得ることができる。
本研究はSection of Plastic Surgery at the University of Chicago Pritzker School of Medicine(シカゴ大学医学部形成外科部門)から支援を受けた。
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