2007/05/01号◆特集記事「乳癌発症率低下はホルモン剤の使用減少を反映」
同号原文|
NCI Cancer Bulletin2007年5月1日号(Volume 4 / Number 16)
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◇◆◇特集記事 ◇◆◇
乳癌発症低下はホルモン剤の使用減少を反映
20年間以上にわたって上昇の一途をたどってきた米国の乳癌発症率は、2003年になって急激に低下に転じ、翌年も依然低率であったことが研究者らによって報告されている。
研究者らは、この発症率低下はホルモン補充療法(HRT)がほぼ同時期に減少しはじめたことによるものであると考えている。ある種のホルモンが乳癌などの健康リスクに結びつくことがNIHの試験によって示されて以来、2002年中頃から多くの女性がHRTを中止するようになった。
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDonald Berry医師らは、2003年の発症率低下を新たに分析し、2004年の発症率は、HRTに生じた変化が乳癌減少を促したという同医師らの理論を裏づけていると言う。
同医師らの発見はNew England Journal of Medicine誌の4月19日号に発表された。
この研究者らは昨年12月、2002年から2003年にかけて発症率が約7%低下したことを受けて、HRTと乳癌との間に相関がある可能性を報告した。しかし、2004年の発症率がまだ分からず、1年間の低下が統計的にはまぐれである可能性を否定しきれないでいた。
「今は2004年も低下が持続したことが分かり、このことによって、単年度の例外ではなく、真の発症率低下であることが示唆される」と、共著者のKathy Cronin医師(NCI癌制御人口学部門(Division of Cancer Control and Population Sciences (DCCPS))は述べる。
2004年のデータはこのほか、発症率の傾向がHRTの傾向に追随していることを示唆しているとCronin医師は付け加える。どちらもきわめて近い時期にともに低下しはじめ、急激な低下の後、横ばいになるという型も同じである。
乳癌の減少は、最もHRTを受けている人が多いと思われる50代以上の女性に限りみられる現象であった。また、エストロゲン受容体陰性癌に比べて増殖のホルモン依存性が高いエストロゲン受容体陽性癌において、より明白に低下が認められた。
研究者らは、ホルモン投与を中止したことによって、微小な癌の一部で増殖が緩慢となり、マンモグラムにより検出されなくなる効果が生じたと考えている。しかし、このような癌もいずれは増殖して後に発見され、将来的には発症率が上昇することになるとも考えられる。
「これは乳癌発症率の低下であり、死亡率の低下につながるという論拠はまったくないことをはっきり言う必要がある」と、Berry医師は述べ、ホルモンによって最も大きな影響を受ける腫瘍は、現在用いられる薬剤に対して「きわめて感度が高い」ことを指摘している。
他の因子が低下に寄与した可能性があるが、著者らは、スクリーニング方法の変更や予防によって2003年の低下ほどの大きな減少が説明できるという証拠をほとんど発見できなかった。
たとえば、タモキシフェンなど乳癌の予防に用いられる薬剤のなかで、相当多くの閉経後女性が投与を受けたり、2000年から2004年にかけて使用量に大きな変化があったものはなかった。
いまだホルモン投与を受けている女性は中止を考える必要があると、共著者Christine Berg医師(NCI癌予防部門(Division of Cancer Prevention))は述べる。重度のほてりなどの症状にホルモンが必要であれば、期間を制限して最小用量で用いるべきであるとも述べている。
Berry医師は2004年のデータから、30年かそれ以上にわたる説明のつかない米国での乳癌増大が、ほとんどHRTに起因するものであるという確信を深めている。この増大は、マンモグラフィーによって説明がつくと思われる範囲を超えるものであり、HRTをはじめ多くの因子が役割を果たしていると考えられている。
「2004年の発症率が2002年の水準に戻っていれば、何らかのまぐれが起こったと言われたであろう。しかし、そうはならず、HRTと乳癌との結びつきを強固なものとするのに一役買った」と、Berry医師は語る。
— Edward R. Winstead
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Nobara 訳
林 正樹(血液・腫瘍医) 監修
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