FDAが特定の遺伝子特性を有する固形腫瘍に対してlarotrectinibを承認

2018年11月26日、米国食品医薬品局(FDA)は、既知の後天的な耐性変異を伴わない神経栄養因子受容体チロシンキナーゼ(NTRK)融合遺伝子を有し、転移がみられるか外科的切除による重篤な合併症の発症率が高く、適切な治療がない、もしくは治療後にがんの進行がみられた固形腫瘍を有する成人および小児患者に対して、larotrectinib[ラロトレクチニブ](VITRAKVI[ビトラクビ]、Loxo Oncology Inc.社とBayer社) を迅速承認した。

これは、FDAが、がん由来組織に制限されない承認をした2番目の抗がん剤である。

今回の承認は、3件の多施設共同非盲検単群試験であるLOXO-TRK-14001試験(NCT02122913)、SCOUT試験(NCT02637687)、 およびNAVIGATE試験(NCT02576431)のデータに基づくものである。NTRK融合遺伝子陽性の同定は、事前に参加施設で次世代シーケンシング(NGS)や蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)を使用して実施された。FISHによってETV6転座が認められた乳児型線維肉腫小児患者3人でNTRK融合遺伝子の存在が推測された。主要有効性評価項目は盲検化された独立画像判定委員会がRECIST 1.1に基づいて決定した全奏効率(ORR)と奏効期間であった。

有効性は、NTRK融合遺伝子を有し、切除不能であるか転移のみられる固形腫瘍を有する患者のうち、3件の臨床試験に登録された最初の55人を対象に評価された。参加者はすべて、可能であれば、がんに対する全身治療を受け、その後がんが進行したか、局所進行がんの場合、合併症のリスクが高い外科的切除を要することが登録条件であった。12人は18歳未満であった。がん種全12種類について検討し、最もよくみられたのは唾液腺腫瘍(22%)、軟部肉腫(20%)、乳児型線維肉腫(13%)、および甲状腺がん(9%)であった。

ORRは75% (95% 信頼区間[CI]:61%,85%)で、22%は完全奏効を示し、53%は部分奏効を示した。データ固定時における奏効期間中央値は未到達であった。奏効期間は参加患者の73%で6カ月以上、63%で9カ月以上、および39%で12カ月以上であった。

Larotrectinibの安全性は、3件の臨床試験に参加した患者176人(そのうち44 人が小児患者)を対象に評価された。Larotrectinib投与群で最もよくみられた有害反応(≧20%)は疲労、悪心、浮動性めまい 、嘔吐、AST増加、咳嗽、ALT増加、便秘、および下痢であった。

Larotrectinibの推奨用量は成人患者で100 mg の1日2回経口投与で、小児患者で100 mg/m2(最大100 mg)の1日2回経口投与である。

VITRAKVIの全処⽅情報はこちらを参照。

本適応は迅速承認された。また、本適応に対する継続的な承認は検証的試験における臨床的有⽤性の検証と内容次第である。FDAは、本申請を優先審査、画期的治療薬、およびオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に指定した。FDAの迅速承認プログラムに関する情報は、「企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム−医薬品およびバイオ医薬品」(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 渡邊 岳

監修 遠藤 誠(肉腫、骨軟部腫瘍/九州大学病院 整形外科)

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