RET変異または融合遺伝子を有する肺がんおよび甲状腺がんにSelpercatinibを承認
2020年5月8日、米食品医薬品局(FDA)はselpercatinib [セルペルカチニブ](販売名:RETEVMO、Eli Lilly and Company社)を以下の適応症に対して迅速承認した。
・転移RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の成人患者。
・全身療法を必要とする進行または転移RET変異型甲状腺髄様がん(MTC)の成人および12歳以上の小児患者。
・全身療法を必要とする進行または転移RET融合遺伝子陽性の甲状腺がんで、放射性ヨウ素抵抗性(放射性ヨウ素治療が適切な場合)の成人および12歳以上の小児患者。
有効性は、多施設共同、非盲検、多コホート臨床試験(LIBRETTO-001)において、腫瘍にRET遺伝子変異が認められた患者を対象に評価された。RET遺伝子の変異の確認は、次世代シークエンシング、ポリメラーゼ連鎖反応、または蛍光in situ ハイブリダイゼーションのいずれかを用いて、地元の研究室で前向きに判定された。有効性の主要評価項目は、RECIST 1.1を用いて盲検独立審査委員会により判定された奏効率(ORR)と奏効期間とした。
RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する有効性は、プラチナ製剤による化学療法を受けたことのある105人の成人患者を対象に評価された。奏効率(ORR)は64%(95% 信頼区間[CI]:54%~73%)であり、奏効した患者の81%は6カ月以上の奏効が持続した。全身治療を受けたことのない39人の患者についても有効性が評価された。これらの患者のORRは85%(95% CI:70%~94%)であり、奏効した患者の58%は6カ月以上の奏効が持続した。
進行または転移RET変異型甲状腺髄様がん(MTC)に対する有効性は、成人および小児(12歳以上)患者を対象に評価された。この試験には、カボザンチニブ、バンデタニブ、またはその両方の治療歴のある患者と、これらの薬剤を投与されていない患者が登録された。前治療歴のある55人の患者の奏効率(ORR)は69%(95% CI:55%~81%)で、奏効した患者の76%は6カ月以上の奏効が持続した。有効性は、MTCに対して承認された治療法を受けたことのない88人の患者についても評価された。これらの患者のORRは73%(95%CI:62%~82%)であり、奏効した患者の61%は6カ月以上の奏効が持続した。
RET融合遺伝子陽性甲状腺がんに対する有効性は、成人および小児(12歳以上)患者を対象に評価された。本試験には、放射性ヨウ素抵抗性(適切な場合)で、別の全身治療を受けたことのある19人の患者と、放射性ヨウ素(RAI)治療抵抗性で、追加治療を受けていない8人の患者が登録された。前治療を受けた19人の患者の奏効率(ORR)は79%(95% CI:54%~94%)であり、奏効した患者の87%は6カ月以上の奏効が持続した。有効性は、RAI治療を受け、他の追加治療を受けていない8人の患者についても評価された。8人の患者全員が奏効し(95%CI:63%~100%)、患者の75%は6カ月以上の奏効が持続した。
臨床検査値の異常を含む最も一般的な副作用(25%以上発現)は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加(ALT)、ブドウ糖増加、白血球減少、アルブミン減少、カルシウム減少、口渇、下痢、クレアチニン増加、アルカリホスファターゼ増加、高血圧、疲労、浮腫、血小板減少、総コレステロール増加、発疹、ナトリウム減少、便秘であった。
体重に基づいたセルペルカチニブの推奨用量は、50 kg未満の患者では120 mg、50 kg以上の患者では160 mgとなっている。セルペルカチニブは、食事の有無にかかわらず1日2回経口投与するかプロトンポンプ阻害薬と併用する場合は、食事と共に投与する。
RETEVMOの全処方情報はこちらを参照。
本審査には、FDAによる評価を円滑に進めるために、申請者が自発的に申請を行うAssessment Aidが使用された。本申請は、FDAの目標た期日の3カ月前に承認された。
本申請は、奏効率と奏効期間に基づいて、迅速承認された。継続的な承認には、検証的試験による臨床的有用性の検証を条件とする場合がある。
本申請は、優先審査、画期的治療薬、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けた。FDAの迅速承認プログラムに関する情報は、「企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品およびバイオ医薬品」(Guidance for Industry:Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
肺がんに関連する記事
肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えると転帰が改善する可能性
2024年12月21日
欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト
2024年12月20日
米FDAが、非小細胞肺がんと膵臓腺がんにzenocutuzumab-zbcoを迅速承認
2024年12月17日
STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効
2024年11月18日
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...