FDAが転移非小細胞肺がんに化学療法+アテゾリズマブを承認

2018年12月6日、米国食品医薬品局(FDA)は、EGFRまたはALK遺伝子変異がない転移非扁平上皮非小細胞肺がん( NSq NSCLC)患者の一次治療に対してベバシズマブ、パクリタキセルおよびカルボプラチンとの併用でアテゾリズマブ(テセントリク、Genentech, Inc.社)を承認した。

今回の承認は、転移非扁平上皮 NSCLCの一次治療を受ける1202人を対象とした3群非盲検ランダム化(1:1:1)臨床試験、IMpower150試験(NCT02366143)に基づくものである。EGFRまたはALK遺伝子変異を有していないと同定されたのは87%(1045人)であった。本試験は対照群とアテゾリズマブを含む各投与群とを比較するデザインで行われ、患者は以下の投与群に無作為に割り付けられた。

・アテゾリズマブ、カルボプラチン、パクリタキセルおよびベバシズマブ(4剤レジメン)

・アテゾリズマブ、カルボプラチンおよびパクリタキセル(3剤レジメン)

・カルボプラチン、パクリタキセルおよびベバシズマブ(対照群)

4または6サイクルのカルボプラチンおよびパクリタキセルの投与完了後、4剤レジメン群および対照群ではベバシズマブを、4剤レジメン群および3剤レジメン群ではアテゾリズマブを、それぞれ疾患の進行または忍容できない毒性が認められるまで投与した。主要有効性評価項目は、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)であった。

EGFRまたはALK遺伝子変異を有さない非扁平上皮 非小細胞肺がん( NSq NSCLC)患者のうち4剤レジメン群ではOS推定中央値が19.2カ月で、カルボプラチン、パクリタキセルおよびベバシズマブ投与群では14.7カ月であった(ハザード比[HR] 0.78; 95%信頼区間[CI]:0.64~0.96; p = 0.016)。PFS推定中央値は、4剤レジメン群では8.5カ月であり、対照群では7.0カ月であった(HR 0.71; 95%CI :0.59~0.85; p = 0.0002)。全奏効率は、4剤レジメン群では55%、対照群では42%であった。3剤レジメン群と対照群の間には、中間解析時のOSまたは最終解析時のPFSに有意差は認められなかった。

カルボプラチン、パクリタキセルおよびベバシズマブに加えてアテゾリズマブが投与された患者に最もよくみられた有害反応(20%以上)は、疲労または無力症、脱毛症、悪心、下痢、便秘、食欲低下、関節痛、高血圧および神経障害であった。15%の患者にて、有害反応のためアテゾリズマブの投与が中止された。アテゾリズマブ投与の中止に至った患者の原因として最も多かった有害反応は肺臓炎(1.8%)であった。

アテゾリズマブに対する抗体(抗薬物抗体、ADA)産生の発生率は、本適応の承認のもととなった臨床試験において30%~42%の範囲であった。IMpower150試験にて4剤レジメン群の非小細胞肺がん患者364人中36%(132人)でアテゾリズマブに対する抗体が認められたが、そのうちの多く(132人中83%)は、2回目のアテゾリズマブの投与前にADAが認められていた。投与により誘導されたADA陽性の患者は、ADA陰性の患者と比較して、アテゾリズマブの全身暴露量が低かった。探索的解析では、全生存(OS)のHRは、ADA陽性サブグループ(0.69; 95%CI:0.44~1.07)およびADA陰性サブグループ(0.64; 95%CI:0.46~0.90)において同様の結果であった。ADAの存在により、有害反応の発生率も重症度も上昇しなかった。ADAの産生が高頻度であることを考慮して、Genentech社はアテゾリズマブ開発プログラムを通して、ADAの有効性、安全性および薬物動態に対する影響を評価するための解析を行うことに合意した。

アテゾリズマブの推奨用量は1200mgを3週間毎に60分かけて行う点滴静注である。

テセントリクの全処方情報はこちらを参照。

FDAは本申請を優先審査に指定した。 FDAの迅速承認プログラムに関する情報は、企業向けガイダンス、重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品およびバイオ医薬品(Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 西原 晋

監修 田中謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/九州大学病院 呼吸器科)

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