FDAが進行非小細胞肺がんの治療にペムブロリズマブを承認
米国食品医薬品局(FDA)ニュース
PD-L1が発現した肺がん患者に対する初の薬剤が承認された。
米国食品医薬品局(FDA)は、2015年10月2日、pembrolizumab[ペムブロリズマブ](商品名:Keytruda[キイトルーダ])を、進行(転移)非小細胞肺がん(NSCLC)で、他の治療を受けた後で増悪し、かつPD-L1と呼ばれるタンパク質が発現した腫瘍を有する患者の治療に対して迅速承認した。ペムブロリズマブは、非小細胞肺がんにおいてPD-L1の発現を検出するために開発された初めてのコンパニオン診断薬であるPD-L1 IHC 22C3 pharmDx 診断検査と共に使用することで承認された。
肺がんは米国でがんによる死因の第1位であり、2015年新たに肺がんと診断されたのは推定で221,200人、死者数は158,040人にのぼると、米国国立がん研究所は報告する。非小細胞肺がんは、肺がんの中で最も典型的なタイプである。「基本的な分子経路および免疫システムとがんとの関わり方について理解が進んだのは、重要な医学の進歩につながります」と、FDA医薬品評価研究センターの血液腫瘍製品室長であるRichard Pazdur医師は述べた。「本日のペムブロリズマブの承認によって、医師は本剤から得られるベネフィットが最も大きいとみられる特定の患者を対象とすることができます」。
ペムブロリズマブは、PD-1/PD-L1(体の免疫細胞および数種のがん細胞で発見されるタンパク質)で知られる細胞経路を標的とすることで作用する。この経路を阻害することで、ペムブロリズマブは体の免疫システムががん細胞と闘うのを助ける可能性がある。2014年、ペムブロリズマブは進行黒色腫(メラノーマ)を有する患者に対し、免疫療法の一種として、イピリムマブ投与後の治療のために承認された。他剤では、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社製造のニボルマブ(オプジーボ)もPD-1/PD-L1の経路を標的としており、扁平上皮非小細胞肺がん(ある種の非小細胞肺がん)の治療に対して2015年に承認された。
ペムブロリズマブは、550人の進行非小細胞肺がん患者で試験が行われた。ペムブロリズマブの最もよくみられた副作用は、疲労、食欲減退、息切れまたは呼吸機能の低下(呼吸困難)および咳嗽などである。ペムブロリズマブはまた、免疫システムの効果による結果として深刻な副作用(「免疫介在性副作用」として知られる)を引き起こす可能性もある。
この使用方法によるペムブロリズマブの効果は、大規模多施設共同非盲検臨床試験に登録した患者61人の部分集団で示された。本集団はプラチナ製剤ベースの化学療法、または該当する場合、ある種の遺伝子変異(ALKまたはEGFR)のための標的療法を受けた後で増悪した進行非小細胞肺がん患者で構成された。本集団はまた、22C3 pharmDx 診断検査の結果、PD-L1陽性腫瘍を有していた。試験参加者 は10 mg/kgのペムブロリズマブを2~3週間ごとに投与された。主要な転帰尺度は、全奏効率(腫瘍の完全および部分縮小がみられた患者の割合)であった。ペムブロリズマブの治療を受けた患者の41%で腫瘍の縮小がみられ、その効果は2.1~9.1カ月継続した。
進行非小細胞肺がんを有する試験参加者 550人で、肺、結腸、およびホルモン産生腺に関連した重度の免疫介在性副作用が生じた。他のまれな免疫介在性副作用は、発疹ならびに血管の炎症(血管炎)であった。妊娠または授乳中の女性はペムブロリズマブの投与を受けてはならない。なぜなら、発育中の胎児または新生児に害をおよぼす可能性があるからである。臨床試験では、体の免疫システムが末梢神経系の一部を攻撃する疾患(ギラン・バレー症候群)も生じている。
FDAは、メルク・アンド・カンパニー社が本剤は利用可能な最善の治療よりもかなりの改善をもたらす可能性があるという臨床上の予備的エビデンスを示したため、本適応に対してペムブロリズマブを画期的な治療法と指定することを承認した。また、申請書が提出された際に、重篤な疾患の治療への安全性または効果における著効な改善の見込みがある薬に与えられる優先審査品目にも指定された。
ペムブロリズマブは、FDAの迅速承認プログラムのもとで承認された。本プログラムでは、患者に臨床上のベネフィットが予測されるとみられる代用評価項目で効果がみられた薬剤が示す臨床上のデータに基づき、重篤または生命を脅かす疾患を治療するための薬剤を承認する。本プログラムは、企業が検証的臨床試験を実施する間に患者が有望な新薬をより早く入手できる機会を提供する。ペムブロリズマブによる治療を受けた患者の生存率または疾患関連の症状の改善は、未だ立証されていない。
ペムブロリズマブは、ニュージャージー州ホワイトホース・ステーションのメルク・アンド・カンパニー社により販売され、PD-L1 IHC 22C3 pharmDx診断検査は、カリフォルニア州カーピンテリアのDako North America Inc.社により販売された。
米国保健福祉省内の機関であるFDAは、公衆衛生の促進および保護、中でもヒト用および獣医用医薬品、ヒト用ワクチンおよび他のヒト用生物学的製剤ならびに医療機器の安全、効果および危機管理の確保につとめている。本機関はまた、米国の食糧供給、化粧品、栄養補助食品、電子放射線を発する製品の安全および危機管理、ならびにタバコ製品の規制にも関与している。
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
肺がんに関連する記事
STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効
2024年11月18日
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...
先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させる
2024年11月7日
「ラドンへの曝露は肺がんのリスクを高めますが、いまだに検査が行われていない住宅が多くあります。...
世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)
2024年10月17日
肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長
2024年10月16日