FDAが多発性骨髄腫の治療に新しい免疫賦活薬エロツズマブを承認

米国食品医薬品局(FDA)ニュース

米国食品医薬品局(FDA)は本日、1〜3種類の薬物治療を受けたことがある多発性骨髄腫患者の治療薬として、2種類の他の治療薬との併用でelotuzumab[エロツズマブ](米国商品名:Empliciti)を承認した。

多発性骨髄腫は血液がんの一種で、骨髄内にある感染防御に働く形質細胞(白血球の一種)が腫瘍化した疾患である。これらのがん細胞は、増殖して異常なタンパク質を産生し、骨髄から他の正常な血液細胞が押し出される。その結果、この疾患を有する患者では、免疫機能が弱まり、骨や腎臓に他の問題が生じることがある。米国国立がん研究所によると、米国では2015年には26,850人が新たに多発性骨髄腫と診断され、11,240人が関連死すると推定されている。

「われわれは、多発性骨髄腫を含めたさまざまな種類のがんが、免疫系と相互に影響する機序について研究し続けています」と、FDA医薬品評価研究センターの血液学・腫瘍製品室長Richard Pazdur医師は述べた。

「本日承認されたのは、骨髄腫患者の治療に対して承認された2番目のモノクローナル抗体であり、他の既承認治療薬と併用することでさらなる利益をもたらします」。本剤の他には、すでに同月に承認されているdaratumumab[ダラツムマブ](米国商品名:Darzalex)が、多発性骨髄腫患者の治療にFDAが承認した唯一のモノクローナル抗体治療薬である。

エロツズマブは体内の免疫系を活性化することで、多発性骨髄腫細胞を攻撃し死滅させる。エロツズマブは、多発性骨髄腫の治療法としてFDAに承認されているレナリドミド(商品名:レブラミド)とデキサメタゾン(副腎皮質ステロイドの1つ)の併用療法に追加して投与する3剤併用療法として承認された。

エロツズマブの安全性および有効性は、治療後に再発した、あるいはこれまでの治療に奏効しなかった多発性骨髄腫患者646人が参加したランダム化、オープンラベル臨床試験で確かめられた。レナリドミドとデキサメタゾンにエロツズマブを併用した患者では、病状が増悪するまでの期間(19.4カ月)に、レナリドミドとデキサメタゾンのみの患者(14.9カ月)と比べ延長が認められた。加えて、レナリドミドとデキサメタゾンにエロツズマブを併用した患者の78.5%で完全奏効または部分奏効が認められたのに対し、レナリドミドとデキサメタゾンのみの患者では65.5%であった。

エロツズマブに最もよく見られる副作用は、疲労、下痢、熱(発熱)、便秘、咳、手足の脱力感やしびれを引き起こす神経損傷(末梢神経障害)、鼻と喉への感染(鼻咽頭炎)、上気道感染症、食欲減退、肺炎である。

本申請は、FDAより画期的治療薬に指定された。この指定は、1つ以上の臨床的に重要な評価項目において、従来の治療を上回る顕著な改善が実証できる可能性が予備試験結果により示唆された場合に、重篤な疾患の治療を目的とした医薬品に対して与えられる。

エロツズマブは、優先審査およびオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定も受けた。優先審査の適用は、承認により重篤な疾患の治療において、安全性や有効性の有意な改善が見込まれる薬剤の申請に対して認められる。

希少疾病用医薬品に指定されると、税額控除、審査費用免除、オーファンドラック独占権資格など、希少疾病用医薬品の開発を促進および支援するための優遇措置が受けられる。

エロツズマブは、ニューヨーク州ニューヨークにあるBristol-Myers Squibb社により販売される。ダラツムマブは、ペンシルバニア州ホーシャムにあるJanssen Biotech社により販売されている。レナリドミドは、ニュージャージー州サミットに拠点を置くCelgene Corporation社により販売されている。

翻訳担当者 田村克代

監修 佐々木裕哉(血液内科・血液病理/久留米大学病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

骨髄腫に関連する記事

骨髄性悪性腫瘍の精密医療による治療:NIH臨床試験の画像

骨髄性悪性腫瘍の精密医療による治療:NIH臨床試験

国立衛生研究所 (NIH) は、急性骨髄性白血病 (AML) および骨髄異形成症候群 (MDS) 患者の腫瘍細胞における特定の遺伝子変化を標的とした治療薬の新たな組み合わせに関して、概...
NPM1変異を有する骨髄腫瘍では骨髄芽球の割合との相関は認められないの画像

NPM1変異を有する骨髄腫瘍では骨髄芽球の割合との相関は認められない

MDアンダーソンがんセンター骨髄芽球が20%未満のNPM1変異陽性骨髄腫瘍はまれであり、その分類には一貫性がない。Guillermo Montalban Bravo医師が主導した新しい...
【ASCO2024年次総会】多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン追加で進行・死亡リスク減の画像

【ASCO2024年次総会】多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン追加で進行・死亡リスク減

ASCOの見解(引用)(原文6月2日)「DREAMM-8試験から、再発または難治性多発性骨髄腫患者において、ファーストインクラスのBCMA標的抗体薬物複合体であるベランタマブ ...
再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるかの画像

再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるか

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「多発性骨髄腫は 血液腫瘍の中では2 番目に多くみられ、再発と寛解を繰り返すのが特徴です。ダラツムマブ(販売名:ダラキューロ)、...