FDAが慢性移植片対宿主病にイブルチニブを承認
米国食品医薬品局(FDA)は2017年8月2日、1種類以上の治療で効果がみられなかった慢性移植片対宿主病(cGVHD)の成人患者の治療薬として、イブルチニブ(商品名:イムブルビカ)の適応を拡大した。cGVHDの治療薬としては、本剤が初めてのFDA承認薬である。
cGVHDは、特定の血液または骨髄のがんを治療するために、造血幹細胞移植(HSCT)、つまり血液または骨髄からの幹細胞移植を受けた患者に起こりうる命に関わる状態である。cGVHDは、移植幹細胞 に由来する細胞が患者の組織内の健常細胞を攻撃する場合に生じ、その症状は、皮膚、目、口、腸、肝臓、肺に現れる。この状態は、HSCTを受けた全患者の30〜70%に生じると推定される。
「免疫系を抑制するためのコルチコステロイドなどの治療法に反応しないcGVHD患者にも、今や、彼らの症状を治療するための特別な適応を持つ治療選択肢が与えられます」と、FDAのOncology Center of Excellence室長で、FDAの医薬品評価研究センターの血液学および腫瘍学科のオフィスの常任理事であるRichard Pazdur医学博士は話した。「この承認は、幹細胞移植を受けた血液がん患者に起こり得る重篤で生命を脅かす状態の治療に対して、既存のがん治療薬が新たな用途を見つけられることを強調するものです」と語った。
コルチコステロイドを用いた標準的治療を受けたにもかかわらず症状が持続するcGVHD患者42人を対象とした単一群試験で、cGVHD治療におけるイブルチニブの有効性と安全性を検討した。患者のほとんどに口内炎や皮膚発疹が見られ、半数以上の患者では2つ以上の臓器にcGVHDによる影響が確認された。本試験では、67%の患者のcGVHD症状が改善した。また、試験に参加した患者の48%では、症状の改善は5カ月以上持続した。
イブルチニブを投与されたcGVHD患者に多く見られる副作用は、疲労、皮下出血、下痢、血小板減少、筋肉の痙攣、口腔内の腫れおよびびらん(口内炎)、悪心、重度の出血、赤血球減少(貧血)ならびに肺への感染(肺炎)である。
イブルチニブの重篤な副作用として、重度の出血、感染、血球減少、不整脈(心房細動)、高血圧、新たながん(二次原発悪性腫瘍)および代謝異常(腫瘍崩壊症候群)が挙げられる。妊婦または授乳中の場合は、胎児または新生児に悪影響を及ぼす可能性があるため、イブルチニブを服用すべきではない。
キナーゼ阻害剤であるイブルチニブは、慢性リンパ球性白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症および辺縁帯リンパ腫の治療に対する適応を既に取得しており、さらにマントル細胞リンパ腫に対する迅速承認過程にある。
FDAは本申請に対し、優先審査および画期的治療薬指定を認めた。イブルチニブはまた、この適応症に対するオーファンドラッグ指定を受けたが、これは稀少疾患用医薬品の開発を支援し促進するインセンティブを提供するものである。
FDAはPharmacyclics LLC社に対し、イムブルビカを承認した。
処方箋情報:https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2017/205552s017lbl.pdf
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