オファツムマブのFDA承認

原文 2009/10/29掲載 2014/04/23更新

商標名:ArzerraTM

慢性リンパ性白血病に適応(2009/10/27)
治療歴の無いCLL患者の治療としてクロラムブシルとの併用で承認(2014/04/17)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。

慢性リンパ性白血病に適応
2009年10月27日、米国食品医薬品局(FDA)はオファツムマブ(ArzerraTM、グラクソ・スミスクライン社製造)を、慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療薬として承認しました。CLLは、緩徐に進行する血液と骨髄の悪性腫瘍です。

Arzerraは、他の化学療法では悪性腫瘍を制御できなくなったCLLを適応症として承認されました。

CLLは主に50歳以上に発症し、B細胞という体の免疫系に欠くことのできない白血球の一種から生じます。米国では、1年あたり約16,000人がCLLと診断され約4,400人がこの疾患で死亡しています。

Arzerra はモノクローナル抗体で、生物製剤の一種です。抗体は本来、免疫系が体外から侵入する異物に反応して産生されます。Arzerraは、正常B細胞と悪性B細胞の両方の細胞表面にみられる特異的タンパク質に結合し、免疫系の攻撃に対するB細胞の感受性を高めます。

同剤は、FDAの迅速承認制度が適応され承認されました。迅速承認制度とは、依然満たされていない医療のニーズに合う薬の早期承認を許可する制度です。この制度は、腫瘍の縮小や腫瘍性白血球数の減少のような代替評価項目に基づき薬剤に適用することができます。臨床的転帰についてこうした二次的な評価を行うことで、その薬による患者の生存期間延長や副作用減少がかなりの確率で予測できると考えられています。

「Arzerraの今回の承認は、迅速承認制度を適用して治療選択肢が限られている患者に対する薬を承認するというFDAの方針を示しています」と、FDA医薬品評価研究センターの抗腫瘍薬製品室長であるRichard Pazdur医師は述べています。

迅速承認制度を適用した場合、承認後もその薬に対する臨床研究が必要になります。グラクソ・スミスクライン社は現在、CLL患者を対象に、標準化学療法にArzerraを追加した場合にCLLの進行を遅らせることができるかどうかを確認する臨床試験を行っています。

Arzerraの有効性は、既存の治療法に反応しなくなったCLL患者59人で検討されました。

同剤の安全性は、悪性腫瘍患者を対象にした2件の臨床試験の患者181人で検討されました。正常白血球減少、肺炎、発熱、咳、下痢、赤血球数減少、疲労、息切れ、発疹、悪心、気管支炎、上気道感染症などの副作用が高頻度にみられました。

Arzerraの最も重篤な副作用は、脳の感染症で通常致死的である進行性多巣性白質脳症(PML)などの感染症を発症する可能性が高まることです。B型肝炎に対する高リスク患者の場合、Arzerra投与前に肝炎のスクリーニング検査を行なうべきです。非活動性肝炎が認められる患者には、治療中および治療終了後に、ウィルス再活性化のモニタリングを行うべきです。

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河野裕子 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修 
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治療歴の無いCLL患者の治療としてクロラムブシルとの併用で承認
米国食品医薬品局(FDA)は2014年4月17日、フルダラビンベースの治療が適応外とみなされた治療歴の無い慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療として、オファツムマブ(Arzerra注射液、静脈内投与用、グラクソ・スミスクライン社製)をクロラムブシルとの併用で承認しました。

この承認は、オファツムマブ+クロラムブシル併用群とクロラムブシル単剤群を比較したランダム化非盲検多施設共同試験結果に基づくものでした。この試験では、高齢または併存疾患などの理由のため試験担当医師によってフルダラビンベースの治療が適応外とみなされた患者447人が対象となりました。全試験集団(35~92歳)において、年齢中央値は69歳でした。患者の72%に併存疾患が2つ以上みられ、48%においてクレアチニンクリアランスが70mL/min以下でした。患者は、以下のスケジュールでオファツムマブを静脈内投与されました。

・第1サイクルの第1日目に300mg投与
・第1サイクルの第8日目に1000mg投与
・以後すべての28日サイクルの第1日目に1000mg投与

両群とも、各28日サイクルの第1日目から第7日目にクロラムブシル10mg/m2を経口投与されました。患者はオファツムマブの投与前に、アセトアミノフェン、アンチヒスタミン、グルココルチコイドの前投薬を受けました。

この試験の主要評価項目は独立評価委員(IRC)によって盲検下で評価された無増悪生存期間(PFS)でした。PFS中央値はオファツムマブ+クロラムブシル併用群で22.4カ月(95%CI:19.0、25.2カ月)であったのに対し、クロラムブシル単剤群では13.1カ月(95%CI:10.6、13.8カ月)でした[HR 0.57(95%CI:0.45、0.72)、層別ログランク検定 p値<0.001]。

オファツムマブ+クロラムブシル併用群で最も多く(少なくとも5%に)みられた有害事象は、投与時反応、好中球減少症、無力症、頭痛、白血球減少症、単純ヘルペスウイルス感染症、下気道感染症、関節痛、上腹部痛でした。全体として、オファツムマブを投与された患者の67%に投与時反応の症状が1つ以上みられました。患者の10%がグレード3以上の投与時反応を経験しました。

このランダム化試験結果は、オファツムマブの臨床的有用性を証明するようグラクソ・スミスクライン社に対して出された市販後調査の要請に十分に応えるものであったため、同薬の承認は迅速承認から通常の承認へ変更されました。

治療歴の無いCLL患者に対するオファツムマブ投与に関して、承認されたレジメンの推奨投与量および投与スケジュールは以下の通りになります。

・第1サイクルの第1日目に300mg、1週間後の第8日目に1000mg投与
・第1サイクル後は各28日サイクルの第1日目に1000mgの投与を、最良奏効がみられるまで最低でも3サイクルまたは最大で12サイクルを実施

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寺本瑞樹 訳
吉原哲(血液内科/コロンビア大学CCTI)監修 
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

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