ニロチニブのFDA承認
原文 2010/07/14掲載 2013/07/03更新
商標名:Tasigna
・新たに診断された慢性骨髄性白血病(CML)患者に対する治療薬として承認
・前治療のある慢性骨髄性白血病(CML)患者に対する治療薬として承認
臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。
新たに診断された慢性骨髄性白血病(CML)患者に対する治療薬として承認
2010年6月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、慢性期(CP)のフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)と新たに診断された成人患者の治療薬として、経口キナーゼ阻害剤であるニロチニブ(タシグナ®カプセル、ノバルティスファーマ社)を迅速承認しました。この適応による本剤の推奨用量は300 mgで1日2回経口投与します。タシグナ®は当初、イマチニブを含む前治療に抵抗性あるいは不耐容を示す慢性期慢性骨髄性白血病(CP-CML)および移行期慢性骨髄性白血病(AP-CML)を有する成人患者への治療薬として2007年10月に承認されました。
新たにCP-CMLと診断された成人におけるニロチニブの有効性および安全性は、単一のランダム化活性対照非盲検多国籍臨床試験によって明示されました。846人の患者を、イマチニブ400mgを1日1回投与する群(n = 283)、ニロチニブ300mgを1日2回投与する群(n = 282)、あるいはニロチニブ400mgを1日2回投与する群(n = 281)に無作為に割り付けました。主要評価項目は、ニロチニブ300mg群および400mg群における投与12カ月時点での分子遺伝学的大寛解(MMR)率を、イマチニブ400mg 1日1回投与群と比較することとしました。MMRは、末梢血のリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RQ-PCR )で測定した国際基準値によりBCR-ABL転写レベルが0.1%以下と定義し、これは標準化ベースラインからの3 log以上の減少に相当するものです。主な副次的評価項目は、12カ月目までの細胞遺伝学的完全寛解(CCyR)率としました。
有効性の主要評価項目である12カ月時点のMMRは、イマチニブ投与群では63人[22%(95%CI:18、28)]、ニロチニブ少用量投与群では125人[44%(95%CI:38、50)]、およびニロチニブ高用量投与群では120人[43%(95%CI: 37、49)]で達成されました。イマチニブ投与群と比較し、ニロチニブ投与による双方の群において統計学的有意差が認められました(p< 0.001)。12カ月後までのCCyR率は、イマチニブ投与群では65%(95%CI:59、 71)、ニロチニブ小用量投与群では80%(95%CI:75、85)、およびニロチニブ高用量投与群では78%(95%CI:73、83)でした。
全治療群における患者の98%以上は1つ以上の副作用(ADR)を経験しました。グレード3または4の毒性の全発生率は、ニロチニブ400mgを1日2回投与した群では52%であったのに対し、ニロチニブ300mgを1日2回投与した群では46%でした。イマチニブによる治療よりもニロチニブによる治療において多く認められたADRsは、発疹、肝機能異常(AST、ALTおよびビリルビン)、高血糖、高コレステロール血症、血清リパーゼ上昇、および頭痛でした。骨髄抑制(好中球減少症、貧血、または血小板減少症、あるいはその全て)の発生率および重症度は、イマチニブ群およびニロチニブ群の両群において同等でした。ニロチニブ投与中の患者において最も頻度の高かった電解質異常は、低リン血症、低カリウム血症、および低カルシウム血症でした。
300mgを1日2回投与するレジメンの安全性プロファイルは、400mgを1日2回投与するレジメンよりも良好でしたが、有効性については両レジメンで同等でした。新たにCP-CMLと診断された患者に対するニロチニブの推奨用量は、300mgを1日2回投与することとなりました。
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栃木 和美 訳
吉原 哲(血液内科/造血幹細胞移植)監修
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前治療のある慢性骨髄性白血病(CML)患者に対する治療薬として承認
2007年10月29日、米国医薬品局(FDA)はこれまで受けたイマチニブを含む治療法に抵抗性または不忍容の慢性期(CP)および加速期(AP)のフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)を有する成人患者の治療用としてニロチニブ(タシグナRカプセル、ノバルティスファーマ社)を迅速承認しました。
ニロチニブの有効性は血液学的(血液に関連する)および細胞遺伝学的(染色体に関連する)な奏効率に基づいています。疾患に関連する症状の改善、または生存期間の延長など臨床的有用性を示す比較対照試験はありません。今回の迅速承認を通常の承認へ切り替えるために、現在進行中の試験のさらなる追跡データを提出する必要があります。
実施中の非ランダム化多施設臨床試験で有効性が示されました。患者は400mg、1日2回を開始用量とするニロチニブの治療を受けました。申請のための中間解析時には232人のCML-CP患者および105人のCML-AP患者が、有効性に対して評価可能と考えられました。前治療にはイマチニブ(100%)、ヒドロキシウレア(85%)、インターフェロン(62%)および骨髄移植(8%)が含まれていました。患者の73%が抵抗性を示し、27%が不忍容だったため、イマチニブの投与が中断されました。それまでに投与されたイマチニブの最大量は>600mg/日で、患者の77%が投与を受けていました。
CML-CPに対する有効性の評価項目は未確認の主な細胞遺伝学的効果で、骨髄におけるPh+分裂中期細胞の消滅またはかなりの減少(65%以上)と定義されました。CP患者での主な細胞遺伝学的奏効率は40%でした(95%信頼区間:33%、46%)。
CML-APに対する有効性の評価項目は血液学的効果でした。血液学的効果は血液学的完全寛解または白血病の兆候なしと定義されました。AP患者での血液学的奏効率は26%でした(95%信頼区間、18%、35%)。CML-CP患者およびCML-AP患者ともに、奏効期間の中央値には達しておらず、申請のための中間解析時には59%のCML-CP患者および63%のCML-AP患者で6カ月以上の奏効期間がみとめられました。
318人のCML-CP患者および120人のCML-AP患者が安全性の評価対象となりました。CML-CP患者でもっとも一般的に(>10%)報告された薬剤に関連する副作用は発疹、掻痒(かゆみ)、悪心、疲労感、頭痛、便秘、下痢および嘔吐でした。一般的にみられた重篤な薬剤に関連する副作用は血小板減少症および好中球減少症でした。
CML-AP患者でもっとも一般的に(>10%)報告された薬剤に関連する副作用は発疹、掻痒および便秘でした。一般的にみられた重篤な薬剤に関連する副作用は血小板減少症、好中球減少症、肺炎、発熱性好中球減少症、白血球減少症、頭蓋内出血、リパーゼ値上昇および発熱でした。
ニロチニブはQT間隔を延長し、突然死を起こすことが報告されています。このリスクはラベルに枠で囲んだ警告文として記載されています。ニロチニブは低カリウム血症、低マグネシウム血症、またはQT延長症候群の患者に使用してはいけません。QT間隔を延長したり、強いCYP3A4阻害剤として知られている薬剤の使用は避けてください。投与前2時間および投与後1時間は食事をしないでください。投与前(ベースライン)、投与開始後7日間、その後定期的に心電図検査を実施してQTc間隔を監視すると同時にその後の投与量の調整をする必要があります。
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吉村祐実 訳
島村義樹 監修
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。 FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。 |
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