2007/12/18号◆スポットライト「変わりつつある子宮頸癌検診のアプローチ」
同号原文|
NCI Cancer Bulletin2007年12月18日号(Volume 4 / Number 32)
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◇◆◇スポットライト◇◆◇
変わりつつある子宮頸癌スクリーニングのアプローチ
Dr. Mark Schiffman氏へ子宮頸癌の検診の背後にある戦略について尋ね、同氏は結局ある一点に行き着くと述べた。
NCI癌疫学・遺伝学研究部門(NCI’s Division of Cancer Epidemiology and Genetics)に所属し、子宮頸癌及びその原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)についての世界的第一人者の一人であるDr. Schiffman氏は、「全ては持続感染についての根本的な知識へと話は戻り、私たちは持続感染を検査によって捕らえたいと考えているだけである」と説明している。
この理由は単純である。世界中の事実上全ての子宮頸癌症例の原因となっているのが約15種類の「発癌性」HPVのうち1種類に持続感染をすることであるからだ。しかし圧倒的多数の症例では、HPV感染及びそれに関連する子宮頸部の病変は免疫システムによって抑圧されたり、処理される前に一時的に発現するだけである。このことは、より性的に活発であり、そのため上の世代の女性よりも、新しくHPVに感染したり複数のHPVに感染するリスクの高い30歳以下の女性に特に当てはまることである(短期間のHPV感染は最も一般的な性感染症である)。
以上の知識及び過去数年に渡る多くの研究結果をもとに、子宮頸癌及びHPVの専門家らは検診を通じて持続感染を取り除く最良の方法についての考え方を転換し始めた。今年10月に公表された3件を含む各研究によって、多くの米国女性にとってほとんど儀礼的になっている年1回のパップ・テストと比較すると、30歳以上の女性を対象にDNA検査によってHPVの存在を数年ごとに検査することは臨床的により効果的な選択肢である可能性が示された。
しかしDr. Schiffman氏は、「適切な時機が訪れたときや、いずれその時機はやって来るというコンセンサスが高まったときに、検診方法の転換は非常に注意深く行われる必要がある」と述べている。
「質の劣る方針を捨てて、優れたものを選ぶという話をしているのではなく、非常に優れた方針から更に優れたものへと転換する話をしているのである」と同氏は述べている。
持続感染を利用する
今まで開発された最も成功した子宮頸癌予防法として歓迎されてきた年に1度のパップ・テスト検診が1960年代に広く利用されるようになって以来、米国における子宮頸癌の発生率は2倍以上減少した。そして組織化された国家的検診プログラムを行なっている、主として発展途上国においても同様の成功を収めてきた。
持続感染という要素はパップ・テストの成功の原因となっている。単一のテストとしては、パップ・テストは潜在的なHPVの持続感染または前癌状態を検知するのにとりわけ感度が高いわけではない。しかし、典型的には定期的婦人科検診の一部として毎年行うことで、生命を脅かす前にほとんどの前癌病変がパップ・テストによって結局は捕らえられる。
しかし、そのような定期的なテストの必要性は批判されてきた。
「検診を頻繁に行うことによって細胞診の感度の低さを埋め合わせるという方法では、リスクがある女性全てが適切に検診されていると保証することが困難である」と、コロンビア大学のDr. Thomas C. Wright氏は最近の論評で述べている。毎年子宮頸癌と診断される1万件の症例のうち約半数が最近パップ・テストを受診しなかった女性であると同氏は言及している。また、このように頻繁にテストを行う費用対効果もまた問題となっている。
HPVのDNA検査―そのうち米国食品医薬局(FDA)によって現在承認されているものはひとつのみである―は非常に感度が高い。つまり、この検査によって陰性の結果が得られたならば危険な感染は存在しないと強く確信できることが一貫して研究により示されてきた。
しかし、パップ・テストよりも高額であるHPVのDNA検査に関する懸念は、まさに1回のテストにおいて陽性が出た場合どのように対処するべきかということである。そのような結果は、通常一過性のため無害な感染を示す結果であるのだ「1回のHPV検査の結果だけではコルポスコピーによる検診を実施することにはつながらないだろう」、とNCI癌予防部門所属であり、最近発行された子宮頸癌のリスク評価ガイドの共著者であるDr. Diane Solomon氏は述べている。コルポスコピーによる検診のあいだ、医師は子宮頸部に病変がないかをより綿密に検査することができ、必要な場合は生検を行うことができる。「コルポスコピーを行う前に、ある一定の期間を置いて行われたHPVのDNA検査結果が2回とも陽性であることが必要かもしれない。そのような方針によって、持続感染をターゲットとする一方でHPVテストによってもたらされるより高い感度を充分に利用することができるだろう」と同氏は述べている。
間隔が重要である
以上のことによって、対象となる研究者らは今や検診の間隔についてより綿密に調査している。言い換えると、HPV検査で陰性だった女性は次回テストを受けるまでにどれだけ待てばよいのかということである。
「どれだけの期間この(陽性結果のリスクからの)『保護』が続くのかに関して発表されたことはなかった」、とコネチカット州Carole and Ray Neag 総合がんセンター部長であり、婦人科腫瘍内科医であるDr. Carolyn Runowicz氏は述べている。また、「3年続くのか、または5年続くのか?われわれはその点を究明しなければならない。われわれは連続したより長い期間のフォローアップによるデータを待たなければならない」とも述べている。
カイザー・パーマネンテ健康保険の北部カリフォルニア地区では、HPVテストを利用してより長い期間の検診の間隔を空けることを推奨する活動を真っ先に進めてきた。2004年にこの地区は全ての30歳以上の女性に対して一次検診としてHPVテストを(必須ではないが)提供する米国内で最初の健康プランを導入した。ただしそれはFDA承認された適応と合致するパップ・テストとの組み合わせでのみ提供される。またパップ・テストの結果が“疑陽性“であった場合に、トリアージ検査として使用することも承認された。
両テストで陰性だった女性はその後3年間は子宮頸癌の検診を行わない。一方、パップ・テストでは陰性でありHPVテストでは陽性という結果の場合は、12ヶ月後再検査することを奨められ、再検査でも同じ結果となった場合は、コルポスコピーによる検査を奨められる。
両方の検診結果が陰性だった女性の検査間隔を延長することは功を奏してきたと、Dr. Walter Kinney氏は述べている。「われわれのメンバーの90%以上は年1回のパップ・テストの代わりに3年ごとに両方の検査をすることを選択している」と述べている。
二重検査アプローチがカイザー・パーマネンテの北部カルフォルニア地区における発病率に影響をあたえたかどうか知るには時期尚早である。また、Dr. Kinney氏と同僚らは、併用アプローチを利用して発見される子宮頸部の進行性病変の件数を2005年以降見直していない。しかし、同氏は来年度に見直しをすることの承認をカイザー・パーマネンテ審理会から得られるのを希望している。
「われわれはこのアプローチに非常に満足しており、変更を考えたことはない」と同氏は述べている。
—Carmen Phillips
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佐々木 了子 訳
榎本 裕 (泌尿器科) 監修
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