FDAが進行卵巣がんの初回維持療法にニラパリブを承認

2020年4月29日、食品医薬品局(FDA)はプラチナ製剤ベースの初回化学療法に完全奏効または部分奏効を示した進行上皮性卵巣がん、卵管がんまたは原発性腹膜がんの成人患者の維持療法にニラパリブ(販売名:ZEJULA、グラクソ・スミスクライン社)を承認した。

患者733人をニラパリブまたは適合するプラセボに無作為に割り付けた二重盲検プラセボ対照試験であるPRIMA(NCT02655016)で有効性を評価した。患者はプラチナ製剤ベースの初回化学療法に完全奏効または部分奏効を示していた。

主要有効性評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、初めに相同組換え欠損群、次に全群で試験が行われ、RECIST 1.1に従い盲検下独立中央判定委員会により判定された。腫瘍のサンプルを使って相同組換え欠損の状態を検査し、相同組換え欠損は腫瘍の乳がん感受性遺伝子(tBRCA)変異の有無またはゲノム不安定性スコア(GIS)が42以上のいずれかにより決定された。この対象決定にZEJULAによる治療を開始する際にFDA承認のコンパニオン診断は不要である。

ニラパリブに割り付けられた患者の無増悪生存期間(PFS)がプラセボと比較して相同組換え欠損群および全群において統計学的に有意に改善することが本試験で明らかになった。相同組換え欠損集群のPFS中央値は、プラセボ投与群の10.4カ月(8.1~12.1カ月)に対し、ニラパリブ投与群は21.9カ月(19.3カ月~上限不明)であった(ハザード比[HR] 0.43、95%信頼区間[CI]:0.31~0.59、p<0.0001)。全群のPFS中央値は、プラセボ投与群の8.2カ月(7.3~8.5カ月)に対し、ニラパリブ投与群は13.8カ月(11.5~14.9カ月)であった(ハザード比[HR]0.62;信頼区間[CI]95%CI:0.50~0.76;p<0.0001)。

PRIMA試験でニラパリブを投与された全患者の10%以上にみられた最も多い副作用は、血小板減少、貧血、悪心、疲労、好中球減少、便秘、筋骨格系疼痛、白血球減少、頭痛、不眠、嘔吐、呼吸困難、食欲減退、めまい、咳、高血圧、AST/ALT上昇、急性腎障害であった。

進行卵巣がんの初回維持療法のニラパリブ推奨用量は体重または血小板数に基づいている。体重が77kg(170ポンド)未満または血小板数が150,000/μL未満の患者には200mgを1日1回経口投与することが推奨されている。体重が77kg(170ポンド)以上で血小板数が150,000/μL以上の患者には300mgを1日1回経口投与することが推奨されている。ZEJULAの全処方情報は こちらを参照。

本審査には、臨床適応全体の出願に先立つデータの提出を簡素化したReal-Time Oncology Review(RTOR)およびFDAによる評価の簡易化を目的として申請者が自発的に提出を行うAssessment Aidが使用された。本申請はFDAの目標期日の2カ月前に承認された。

本申請は優先審査に指定された。FDA迅速承認プログラムに関する情報は「企業向けガイダンス:重篤患者のための迅速承認プログラム-医療品およびバイオ医薬品」(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 松長愛美

監修 喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)

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