ベバシズマブのFDA承認

プラチナ抵抗性で再発性の上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんに対する化学療法との併用療法(2014/11/14)

難治性、再発性または転移性の子宮頸がんに対する化学療法との併用療法(2014/08/14)

転移性大腸がんにフロロピリミジンベースの併用化学療法(2013/01/23)

転移性乳がんへ適用取り消し(2011年11月18日追記分)

転移性腎細胞がんへの承認(2009年7月31日追記分)

神経膠芽腫における二次治療薬(2009年5月5日追記分)

非小細胞肺がん(NSCLC)への初回治療薬としての承認(2006/10/11)

転移した大腸がんの二次治療薬としての承認(改)(2006/06/20)

転移した大腸がんの初回治療薬としての承認(2004/02/26)

発行された薬剤警告(2011/09/30追記)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報Full prescribing information (原文)が参照できます。

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プラチナ抵抗性で再発性の上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんに対する化学療法との併用療法

2014年11月14日、米国食品医薬品局(FDA)は、プラチナ抵抗性で再発性の、上皮性卵巣がん、卵管がん、または原発性腹膜がんの患者に対する治療として、パクリタキセル、ペグ化リポソームドキソルビシン、またはトポテカンと、ベバシズマブ静注(アバスチン、ジェネンテック社)の併用療法を承認しました。

本承認は、化学療法単独群と、ベバシズマブと化学療法の併用群を比較した、国際非盲検ランダム化2群試験(AURELIA試験)の結果に基づいています。主要評価項目は、研究者の評価した無増悪生存期間(PFS)でした。副次的評価項目は、全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、および安全性でした。

本試験はプラチナ抵抗性で再発性の上皮性卵巣がん、卵管がん、または原発性腹膜がんの患者361人を対象とし、179人はベバシズマブと化学療法の併用群、182人は化学療法の単独群に割り付けられました。これらの患者は全員、以前に受けた化学療法レジメンが2つ以下で、、ECOG によるパフォーマンスステータスが0、1、または2であり、プラチナ製剤治療の最終投与終了から6カ月以内にがんの進行がみられました。骨盤検査で上部直腸や大腸終末部(S状結腸直腸接合部)に腫瘍のある患者、CT検査で腸への腫瘍浸潤が認められる患者、または臨床的に腸閉塞症状を有する患者は除外されました。

化学療法は、パクリタキセル、ペグ化リポソームドキソルビシンまたはトポテカンの中から、個々の患者の状況により研究者が選択しました。治療は、がんの進行がみられたり、許容できない毒性が認められたり、または治療同意を撤回するまで継続されました。

ベバシズマブと化学療法の併用療法は、化学療法単独群と比較し統計学的に有意にPFSを改善しました(ハザード比[HR]=0.38; 95%CI: 0.30, 0.49; p

臨床試験は化学療法レジメンによって層別化されました。ベバシズマブを上乗せする各化学療法のレジメンを比較する探索的解析が行われました。パクリタキセルにベバシズマブを併用した群に最大の改善がみられ、PFS中央値を5.7カ月改善し(9.6カ月 vs. 3.9カ月; HR 0.47; 95%CI: 0.31, 0.72)、また奏効率を改善し(53% vs. 30%)、さらにOS中央値を9.2カ月改善(22.4カ月 vs. 13.2カ月; HR 0.64; 95%CI: 0.41, 1.01)しました。パクリタキセルにベバシズマブを併用した患者の97%が、以前の化学療法レジメンでパクリタキセルの投与を受けていました。これらの探索的解析により、パクリタキセルによる治療歴がある患者では、パクリタキセルの毎週投与にベバシズマブを併用することが有益であることが示されました。

最もよくみられた有害反応は、好中球減少症、末梢性感覚ニューロパチーおよび高血圧で、ベバシズマブと化学療法を併用投与した患者の15%以上にみられました。ベバシズマブを投与した患者の1.7%に消化管穿孔が報告されました。本試験では腸浸潤や腸閉塞の患者が除外されたため、プラチナ抵抗性の卵巣がんに対するこれまでのベバシズマブの臨床試験における報告と比較して、穿孔の発現率が相対的に低かったと考えられます。腸管瘻はベバシズマブを投与した患者の2%に発現しましたが、化学療法単独群の患者ではみられませんでした。

ベバシズマブの推奨用法と用量は、10 mg/kgの2週毎投与とし、併用としてパクリタキセル、ペグ化リポソームドキソルビシン、毎週トポテカンの化学療法レジメンのうち一つを静注投与します。ベバシズマブ15 mg/kgを3週毎投与し、トポテカンを3週毎の併用投与としてもよいでしょう。
本試験で投与した化学療法レジメンは以下のとおりです。
・パクリタキセル80 mg/m2を、1、8、15、22日目に4週毎静注投与。
・ペグ化リポソームドキソルビシン40 mg/m2を、1日目に4週毎静注投与。
・トポテカン4 mg/m2を、1、 8、 15日目に4週毎、または1.25 mg/m2を、1から5日目まで3週毎静注投与。
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松川深玲 訳
野崎 健司(血液内科/住友病院)監修 
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難治性、再発性または転移性の子宮頸がんに対する化学療法との併用療法

2014年8月14日に、米国食品医薬品局(FDA)は難治性、再発性または転移性の子宮頸がんの治療に対し、シスプラチンまたはトポテカンのいずれかとパクリタキセルとの併用で、点滴静注のベバシズマブ注(商品名:アバスチン、製造元:ジェネンテック社)を承認しました。
承認は、全生存期間の2つの主要な比較がある国際共同ランダム化試験(4治療群、2×2の要因デザイン)の結果に基づきました。1つ目は、化学療法(パクリタキセルとシスプラチン、またはパクリタキセルとトポテカン)単独と、ベバシズマブと化学療法の併用療法との比較でした。2つ目は、ベバシズマブ併用の有無は問わず、白金製剤を用いない2剤化学療法(すなわちパクリタキセルとトポテカン)と、白金製剤を主体とする2剤化学療法(パクリタキセルとシスプラチン)との比較でした。
試験には452人の患者が登録され、227人の患者に化学療法とベバシズマブを受けることが割り付けられ、225人の患者に化学療法のみを受けることが割り付けられました。化学療法はシスプラチンに併用してパクリタキセル、またはトポテカンに併用してパクリタキセルのいずれかでした。
投与は疾患の増悪、許容できない毒性、または同意撤回まで継続されました。登録されたすべての患者は良好な全身状態(GOG基準でスコアが0または1)にありました。80%が放射線療法の治療歴があり、74%が放射線と化学療法の併用による治療歴がありました。
最初の主要な比較における重要な有効性評価では、ベバシズマブと化学療法を受けた患者において、化学療法のみを受けた患者に比べて統計的に有意な全生存期間の改善が示されました(HR=0.74、95%CI:0.58, 0.94;p=0.013、ログランク検定)。化学療法のみを受けた患者の生存期間の中央値が12.9カ月(95%CI:10.9, 15)であったのに比べて、ベバシズマブと化学療法を受けた患者の生存期間の中央値は16.8カ月(95%CI:14.1, 19)でした。
2番目の主要な比較で、パクリタキセル+トポテカン(ベバシズマブありまたはなし)を投与された患者は、パクリタキセル+シスプラチン(ベバシズマブありまたはなし)を投与された患者に比べて全生存期間の改善は示されませんでした[HR=1.15(95%CI:0.91, 1.46)]。しかし、いずれかの化学療法レジメンへのベバシズマブの追加に対するハザード比は同様でした(パクリタキセル/シスプラチンに対しHR 0.72およびパクリタキセル/トポテカンに対しHR 0.76)。本結果から、パクリタキセル+トポテカンにベバシズマブを加えたレジメンは、進行子宮頸がんで白金製剤の治療の対象とならない女性患者の代替治療として容認できることが示唆されました。
ベバシズマブと化学療法を受けた患者の最もよくみられた有害反応(少なくとも20%の患者にみられた)は、疲労、食欲減退、高血圧、高血糖、低マグネシウム血症、尿路感染、頭痛および体重減少でした。消化管穿孔がベバシズマブを投与された患者の3.2%に報告され、すべての患者が骨盤放射線前照射を受けていました。消化管と膣の間の瘻孔がベバシズマブを投与された患者の8.2%およびベバシズマブを投与されていない患者の0.9%に発現し、またすべての患者が骨盤放射線前照射を受けていました。グレード3以上の他の数件の有害反応は、静脈血栓塞栓症、出血、高血圧、タンパク尿および創傷治癒の合併症があり、化学療法のみを受けた患者より化学療法+ベバシズマブを受けた患者でより多くみられました。
ベバシズマブの推奨用量は、パクリタキセルとシスプラチンまたはパクリタキセルとトポテカンとの併用で、点滴静注(IV)として3週ごとに15 mg/kgです。臨床試験で用いられたレジメンは下記のとおりであり、21日ごとに繰り返されました。
・1日目:パクリタキセル135 mg/m2を24時間かけて静注、2日目:シスプラチン50 mg/m2の静注+ベバシズマブ;
または、1日目:パクリタキセル175 mg/m2を3時間かけて静注、2日目:シスプラチン50 mg/m2の静注+ベバシズマブ;
または、1日目:パクリタキセル175 mg/m2を3時間かけて静注+シスプラチン50 mg/m2の静注+ベバシズマブ
・1日目:パクリタキセル175 mg/m2を3時間かけて静注+ベバシズマブ、1~3日目:トポテカン0.75 mg/m2を30分かけて投与
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木下秀文 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)監修 
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転移性大腸がんにフロロピリミジンベースの併用化学療法

2013年1月23日、米国食品医薬品局(FDA)はベバシズマブ(アバスチン®、製造元 米国Genentech社)を、転移性大腸がん(mCRC)で、ベバシズマブを含む一次治療レジメン中に病状が進行した(がんが増殖、広がった)患者に対するフロロピリミジン‐イリノテカンあるいはフロロピリミジン-オキサリプラチンベースの化学療法との併用療法に関して治療適用を承認しました。ベバシズマブは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に結合して、内皮細胞表面の受容体とVEGPの相互作用を阻害する、ヒト化モノクローナル抗体です。

今回の承認は、一次治療であるフロロピリミジン-オキサリプラチンまたはフロロピリミジン‐イリノテカンとベバシズマブベースの併用療法実施中または中止3カ月以内に、mCRC(転移性大腸がん)の増悪をみとめた患者で実施されたランダム化非盲検多国籍共同臨床試験の結果に基づいています。

この臨床試験では、820人の患者が無作為に、化学療法単独群か(N=411人)、ベバシズマブとの併用化学療法(N=409人)に割付けられました。患者は、フロロピリミジン‐イリノテカンベースか、フロロピリミジン-オキサリプラチンベースの療法を、それぞれの先行の治療に基づき(先行治療がオキサリプラチンベースであればイリノテカンベースに、先行がイリノテカンベースであればオキサリプラチンベースで)投与されました。両群の治療サイクルは、それぞれの化学療法レジメンに基づき、2、3週間であり、ベバシズマブが2週間毎に5mg/kgか、あるいは3週間毎に7.5mg/kgで静注されました。ベバシズマブは、がんの増悪かもしくは認容できない毒性がみとめられるまで継続投与されました。

主要な有効性の評価指標は、全生存期間(OS)でした。治療方法の割付けは、一次治療(イリノテカンベースまたはオキサリプラチンベース)、一次治療の無憎悪期間(9カ月を超える、または9カ月以下)、ベバシズマブを最後に投与されてからの期間(42日超、または42日以下)、米国東海岸臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステイタス(身体機能尺度)(0~1または2)によって層別されました。

試験参加者の母集団は、年齢の中央値が63歳、64%が男性、96%がECOGパフォーマンスステイタスが0または1でした。ベバシズマブを追加した併用化学療法群は、単独化学療法群に比べ、統計学的に有意な全生存期間の延長を示しました(hazard ratio 0.81 [95% CI:0.69, 0.94], p=0.0062)。全生存期間の中央値は、ベバシズマブ併用化学療法群が11.2カ月、単独化学療法群では9.8カ月でした。無憎悪生存期間(PFS)も、ベバシズマブ併用群が単独化学療法群に比べ統計学的に有意に延長しました(hazard ratio 0.68 [95% CI:0.59, 0.78], p<0.0001)。PFSの中央値は、ベバシズマブ併用化学療法群が5.7カ月、単独化学療法群では4.0カ月でした。

今回の試験内で安全性における懸念は新たにみられませんでした。安全性データは、以前承認された適用の際に得られた安全性プロファイルと一致しました。

ベバシズマブを含む一次治療レジメン中に病状進行がみとめられた後、フロロピリミジン‐イリノテカンベースあるいはフロロピリミジン‐オキサリプラチンベース化学療法と併用してベバシズマブを投与する場合、ベバシズマブの推奨用量および投与スケジュールは、2週間ごとに5 mg/kg、または3週間ごとに7.5 mg/kgの静注となっています。

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内藤裕子 翻訳
関谷 昇(薬学修士)監修 
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HER2陰性転移性乳がん

2011年11月18日、米国食品医薬品局(FDA)局長のMargaret Hamburg氏は、迅速承認によるベバシズマブ(アバスチン:Genentech社製造)の乳がんへの適応取消しを発表しました。転移性乳がんに対するベバシズマブ投与には、腫瘍増殖抑制という有益性が、重篤かつ生命を脅かしうるリスクを正当化することが示されず、その使用に将来的な乳がん女性患者の延命およびQOL改善に役立つエビデンスも認められないためです。

この決定には、HERS2陰性転移性乳がんに対し化学療法で治療されていない患者への、抗がん剤パクリタキセルとの併用も含まれます。本適応はベバシズマブの添付文書からただちに削除されることになります。

ベバシズマブは、ある種の大腸がん、肺がん、腎臓がん、脳腫瘍(多形神経膠芽腫)に対する承認治療薬として今後も市場に残ります。

本剤は、2008年2月、FDAの迅速承認制度(全面的承認許可のためには不十分な段階でのデータに基づき医薬品を承認する制度)の下、転移性乳がんの承認を受けました。迅速承認制度により、臨床確認試験が実施されている間、重篤あるいは生命を脅かす状態を治療する見込みのある新薬を通常より早期に患者に使用することができます。その臨床試験で、薬剤の継続的な承認または特定の適応に正当性が認められない場合、FDAはその承認を撤回することがあります。今回の迅速承認は、1つの臨床試験での有望な結果に基づいたものであり、その試験は、ベバシズマブが治療開始から腫瘍増殖または死亡までの期間を有意に延長する可能性を示していました。

ベバシズマブの乳がんに対する迅速承認後、本剤のスポンサーであるGenentech社は2つの追加的な臨床試験を終え、それらの試験データをFDAに提出しました。そのデータは、標準の化学療法のみを投与した場合に比べ、患者の延命またはQOLの向上が認められるエビデンスは示されず、わずかな腫瘍増殖抑制効果がみられただけであり、本剤投与のリスクを凌駕するものではありませんでした。

FDA医薬品評価研究センター(FDA’s Center for Drug Evaluation and Research:CDER)はベバシズマブ承認の責任部署であり、これらの追加試験結果は継続的な承認を正当化するものではないという最終結論を出し、Genentech社に対し適応を削除するよう通知しました。Genentech社は同センターのデータ評価に同意せず、FDA規則の手順に従い、削除案についての公聴会と併せ、局長による決断を要請しました。その公聴会は、2011年6月28日~29日に開催されました。

Hamburg氏は、公聴会で示された論拠やエビデンスの見直し、公聴会の前後にCDERおよびGenentech社により提出された申立書、パブリックコメント、複数の臨床試験データに基づき決定を下しました。

詳細については質問と回答を参照:アバスチン添付文書から転移性乳がんの適応削除へ(原文)

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佐々木亜衣子 訳
廣田裕 (呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック院長)監修 
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2011年6月29日に、FDA(米国食品医薬品局)の抗腫瘍薬諮問委員会は、乳がんに対するベバシズマブ(ジェネンテック社製造のアバスチン®)の承認を取消すよう提案しました。FDA医薬品評価研究センターとジェネンテック社は、2011年7月28日までに追加の意見書を提出する予定です。この協議事項に関しては一般からの意見も同日まで受け付けています。

医薬品評価研究センターは、乳がんに対するアバスチンの使用に関し、FDA局長の最終決定を待つことになります。 乳がんに関わる局長の決定は、アバスチンの大腸がん・肺がん・腎臓がん・脳腫瘍への適応承認には影響しないものと考えられます。乳がん承認の最終決定(可否)にかかわらず、アバスチンは市場に留まることになります。

乳がんに対するアバスチン(ベバシズマブ)投与の安全性および有効性が示されていないことから、FDA(米国食品医薬品局)は、乳がんへの適応を同剤の医薬品表示(ラベル)から外すよう提言していると2010年12月16日に発表しました。

アバスチン自体は、現時点で市場から撤去されておらず、本日の発表により、乳がんに対する使用に即時影響するものではありません。また、同発表が、大腸がん、腎臓がん、脳腫瘍、肺がんに対する認可に影響することはないでしょう。

転移性乳がん患者に対しアバスチンの治療を現在行っている腫瘍医は、同剤で治療を継続するか、もしくはその他の治療選択肢を考慮するかを医学的判断に基づいて決定すべきです。

HER2陰性転移性乳がんに対する化学療法を受けたことのない患者の治療として、パクリタキセル(Taxol®)との併用投与に使用する目的で、2008年2月22日FDAはベバシズマブ(ジェネンテック社製造のAvastin®)を迅速承認しました。

この承認は、転移性乳がんに対する初回治療として、パクリタキセルをベバシズマブに併用投与した患者のほうが、パクリタキセルを単独投与した患者と比較して、無増悪生存期間(PFS)の改善が証明されたことに基づき行われたものです。現在入手可能なデータには、乳がんに対するベバシズマブ投与による全生存率の上昇、もしくは疾患に関連した症状の改善を証明するものは存在しません。

転移性乳がん患者に対する一次治療として、ベバシズマブの有効性ならびに安全性が、単一非盲検ランダム化多施設共同試験(Study7またはE2100試験)で検討された。局所的再発または転移性乳がんに対する化学療法を行ったことのない患者を、パクリタキセル90mg/m2/週を3回投与し、1週間休薬する(1サイクル28日)単独群(354人)、もしくはベバシズマブ10mg/kgを14日ごとに併用投与する群(368人)にランダムに割り付けました。HER2を過剰発現する乳がん患者の場合は、トラスツズマブ(ハーセプチン®)による前治療を受けた場合を除いて対象外としました。

パクリタキセルにベバシズマブを追加することで、無増悪生存期間は改善したが、全生存期間の有意な改善は認められませんでした。無増悪生存期間の中央値は、ベバシズマブ+パクリタキセル群で11.3カ月(95% CI:10.5~13.3)、パクリタキセル単独群で5.8カ月(95% CI:5.4~8.2)でした(p<0.0001、ハザード比0.48、95% CI:0.39~0.61)。測定可能病変を有する患者の部分奏効率は、ベバシズマブ+パクリタキセル群のほうが高く、48.9%対22.2%でした(p<0.001)。完全奏効は認められませんでした。

転移性乳がん患者に対する二次および三次治療としてのベバシズマブの有効性ならびに安全性は、単一非盲検ランダム化試験で検討しました (Study8またはAVF2119試験)。補助療法として、もしくは転移性乳がんに対する治療として、アントラサイクリンおよびタキサン系薬の前治療を受けたことのある患者が、カペシタビン単独群またはベバシズマブ併用群にランダムに割り付けられました。本試験には462人が登録した。この試験では、無増悪生存期間および全生存期間における統計学的に有意な効果は証明されませんでした。医薬品表示には、転移性乳がんに対するアントラサイクリンおよびタキサンの化学療法後、乳がんが進行した患者に対し、ベバシズマブの適応外とすることが記載されています。

Trial 7試験におけるデータ収集は、NCI共通有害事象基準(NCI-CTC)によるグレード3~5の非血液学的有害事象とグレード4~5の血液学的有害事象に限定されました。パクリタキセル単独群と比較して、ベバシズマブ+パクリタキセル群ではグレード3~5の有害事象における20%の増加が観察されました。ベバシズマブ併用群において、より高頻度に発生する重篤および致死的な有害事象は、感覚性ニューロパチー、高血圧、疲労、好中球減少を伴わない感染症、好中球減少症、嘔吐、下痢、骨痛、頭痛、蛋白尿、脳虚血などでした。パクリタキセル+ベバシズマブ併用群の363人中6人(1.7%)に致死的有害反応が起きた。死因は、消化管穿孔(2人)、心筋梗塞(2人)、下痢/腹痛/衰弱/低血圧(2人)でした。

最も重篤で時に致死的となるベバシズマブの有害事象は、既に医薬品表示に記載済みで、消化管穿孔、創傷治癒の合併症、出血、動脈血栓塞栓イベント、高血圧クリーゼ、ネフローゼ症候群、うっ血性心不全、好中球減少性敗血症などが挙げられます。最も高頻度に起こるベバシズマブの有害事象で既に医薬品表示に記載済みのものには、無力症、疼痛、腹痛、頭痛、高血圧、下痢、悪心、嘔吐、食欲不振、口内炎、便秘、上気道感染、鼻出血、呼吸困難、剥脱性皮膚炎、蛋白尿などがあります。

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遠藤香利 翻訳
野長瀬 祥兼(工学/医学生)監修 
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転移性腎細胞がん

2009年7月31日、FDAは転移性腎細胞がん患者の治療において、ベバシズマブ(ジェネンテック社製:商品名アバスチン)をインターフェロン アルファと組み合わせて使用することに対して承認を与えました。この承認は、BO17705試験で、ベバシズマブを投与した患者において5ヵ月後の無増悪生存(PFS)中央値が改善したという結果に基づいています。

BO17705試験は、腎摘出術を受けた転移性腎細胞がん患者を対象にしたランダム化・二重盲験・プラセボ対照・多国間臨床試験でした。この試験では、ベバシズマブ+インターフェロン アルファ-2aの組み合わせと、インターフェロン アルファ-2a+プラセボの組み合わせを比較しています。この試験はHoffmann-La-Roche社によりヨーロッパ、アジア、オーストラリアで行われました。治験責任医師らは、この試験の主要評価項目としてPFSを評価しました。治療法の割り当てが盲検化された独立した審査委員会によるPFSの判定は、治験責任医師らのPFS評価を支持するものでした。

合計649人(327人はベバシズマブ+インターフェロン、322人はインターフェロン+プラセボを投与)の患者が登録されました。PFS中央値はベバシズマブ+インターフェロン群で10.2カ月だったのに対し、インターフェロン+プラセボ群では5.4カ月でした[ハザード比(HR)0.60(95%信頼区間0.49~0.72)、p < 0.0001]。評価可能なレントゲン写真がある569人の独立審査委員会による分析でも、類似する結果が得られました[PFS中央値10.4カ月対5.5カ月、HR 0.57(95%信頼区間0.45~0.72)]。

BO17705試験で、全生存については、インターフェロン+プラセボ群と比較してベバシズマブ+インターフェロン群の統計的に有意な有用性は示されませんでした[HR 0.86(95%信頼区間0.72~1.04)、p = 0.13]。

転移性腎細胞がん患者において、ベバシズマブ+インターフェロン アルファ-2b併用投与と、インターフェロン アルファ-2b単独投与を比較したランダム化非盲験試験(90206)の発表された結果も、BO17705試験の結果を支持しています。この試験は、The Cancer and Leukemia Group Bが北米で行いました。90206試験では、PFS中央値がベバシズマブ併用群の8.4カ月に対し、インターフェロン アルファ-2b単独群では4.9カ月であり、同程度のPFSの延長が報告されました。全生存の改善は見られませんでした。

BO17705試験において、ベバシズマブ+インターフェロン アルファ-2aの併用ではインターフェロン アルファ-2a単独に比較して、全体的な有害作用の発現率が高く、より重度でした。

重篤な有害事象は、ベバシズマブ+インターフェロン アルファ-2a群で31%、インターフェロン+プラセボ群で19%の患者で報告されました。米国国立がん研究所の有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)でグレード3以上の有害事象は、ベバシズマブ+インターフェロン アルファ-2a群で63%、インターフェロン+プラセボ群で47%の患者で報告されました。グレード3以上で、ベバシズマブに起因する有害事象(インターフェロン+プラセボ群に比較して、ベバシズマブ+インターフェロン群で発現率が2%以上多い事象)として、出血、高血圧、尿タンパク、静脈や動脈の血栓がありました。ベバシズマブ+インターフェロン群で、グレード5以上の出血(動脈瘤破裂と喀血)が2人、高血圧性脳症が2人、グレード4の肺塞栓が4人の患者に報告されました。

もっとも多く見られたベバシズマブに関連する有害事象は、出血、高血圧、尿タンパク、静脈または動脈の血栓でした。尿タンパクが報告された20%の患者で、尿タンパク発現までの中央値はベバシズマブ投与開始から5.6カ月(15日~37カ月)で、消散までの期間の中央値は6.1カ月でした。中央値11.2カ月の追跡調査において、40%の患者では尿タンパクの消散は見られませんでした。尿タンパクが発現した患者の30%で、ベバシズマブの投与が恒久的に中止されました。

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水向絢子 翻訳
金田澄子(薬学)
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神経膠芽腫における二次治療薬

2009年5月5日、FDAは、前治療後に進行した神経膠芽腫患者に対する単独療法としてのベバシズマブ静注(ジェネンテック社製:商品名アバスチン)の迅速承認を許可した。承認の根拠は、AVF3708gおよびNCI 06-C-0064Eという2つのシングルアームの臨床試験で示された持続的奏効率であった。

AVF3708gは、前治療歴のある神経膠芽腫患者を対象とする無作為化、オープンラベル、多施設臨床試験であった。ベバシズマブ(10mg/kg静注)を単独もしくはイリノテカンとの併用で、2週ごとに、原疾患の増悪もしくは忍容できない毒性がみられるまで投与した。 患者は全員テモゾロミドおよび放射線照射による前治療歴があった。ベバシズマブ投与は、放射線治療終了から少なくとも8週間経過したあとに行われた。活動性の脳出血のある患者は除外された。承認の根拠として用いられたのは、ベバシズマブ単独療法群(85例)の有効性データだけである。

ベバシズマブの有効性は、WHO画像診断基準に基づく効果判定によって示された。さらに、有効とみなされるにはコルチコステロイドの使用量が不変もしくは減少していることが必要とされた。奏効率は25.9%(95%信頼区間: 17.0%, 36.1%)、奏効期間中央値は4.2カ月(95%信頼区間:3.0, 5.7カ月)であった。画像診断はMRI(T1およびT2/フレアー)を用いて行われた。MRIでは、腫瘍と浮腫、放射線壊死の区別がつかない場合がある。

NCI 06-C-0064Eは、前治療歴のある神経膠腫患者に対するベバシズマブ治療のシングルアーム、単一施設試験であった。この臨床試験には56人の神経膠芽腫患者が参加した。 患者は全員、テモゾロミドおよび放射線治療を受けた後に増悪が確認されていた。ベバシズマブ(10 mg/kg IV)を2週ごとに、原疾患の増悪もしくは忍容できない毒性が見られるまで投与した。

NCI 06-C-0064E試験の奏効率は、AVF3708g試験と同一の効果判定基準を用いて19.6%(95%信頼区間:10.9%, 31.3%)であった。 奏効期間中央値は3.9カ月(95%信頼区間:2.4, 17.4)であった。

AVF3708g試験については安全性データが提出された。ベバシズマブ単独療法を受けた患者において、グレードを問わずもっとも頻繁に報告された有害事象は、感染症、疲労、頭痛、高血圧、鼻血、下痢であった。4.8%の患者で、有害事象のためにベバシズマブ投与が中止された。ベバシズマブ関連の可能性がある死亡は2例(後腹膜出血1例、好中球減少による感染症1例)であった。

ベバシズマブに関連するグレード3-5の有害事象は、出血、中枢神経系出血、高血圧、静脈性・動脈性の血栓性塞栓症、創傷治癒合併症、蛋白尿、消化管穿孔、可逆性後部白質脳症(RPLS)などであった。 比較対照群がないシングルアームの試験デザインのため、いくつかの有害事象(たとえば中枢神経系出血、創傷治癒合併症、血栓性塞栓症など)は、ベバシズマブによるものか、基礎疾患によるものか、あるいは両方によるものか、明らかににすることができない。

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盛井有美子 翻訳
寺島 慶太(小児血液腫瘍・神経腫瘍学)監修 
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非小細胞肺がん(NSCLC)の初回治療薬

2006年10月11日、FDAはベバシズマブ(アバスチン、ジェネンテック社)に切除不能、局所進行、再発、または転移した、非扁平上皮、非小細胞肺がんの患者の初期の全身療法のために、カルボプラチンとパクリタキセルとの併用で投与する適応拡大の認可を与えました。この案は、カルボプラチンとパクリタキセルの併用のみの投与を受けている患者と比べカルボプラチン、パクリタキセル、ベバシズマブの併用での投与を受けている患者の全生存(OS)の統計学的に有意な改善の実証に裏づけされています。

この承認を裏付けている主な試験(E4599)は、無作為化、実薬対照、非盲検、多施設臨床試験で、カルボプラチンとパクリタキセルに加えベバシズマブ(n=434)対カルボプラチンとパクリタキセルのみ(n=444)とを評価しました。(プロトコル概要参照(原文))

扁平上皮の組織をもつ患者、扁平上皮細胞優勢の組織をもつ混合性細胞腫瘍の患者、中枢神経系転移した患者、肉眼的喀血(小スプーンの半分の血)のみられる患者、不安定狭心症、治療的な抗凝固の投与を受けている患者は、試験から除かれました。ベバシズマブでの化学療法を行った無作為化、実薬対照、第Ⅱ相試験(AVF0757g)に登録された扁平上皮細胞の組織をもつ13人の患者の中で4人の致命的なあるいは重篤な喀血患者が出たことに基づき扁平上皮細胞の組織を持つ患者は除外されました。

無作為化された878人の患者の年齢の中央値は63才、患者の46%は女性、これまでに化学療法を受けた患者はいません、患者の76%はステージIV疾患、患者の12%は悪性胸水のあるステージIIIB疾患、患者の11%は疾患の再発があり、患者の40%はECOGパフォーマンス状態が0でした。

パクリタキセルとカルボプラチンと併用してベバシズマブの投与を受けている患者とパクリタキセルとカルボプラチンのみの投与を受けている患者と比較して、主要評価項目(OS)は有意に長くなりました。(中央値OS 12.3ヶ月対10.3ヶ月;ハザード比0.80(p=0.013層別化ログランク検定))。調査分析において、一貫した効果が大部分のサブグループでみられましたが、生存ベネフィットのエビデンスは、女性ではみられませんでした。(HR 0.99;95% 信頼区間 0.79、1.25)。

E4599では、データ収集は、NCI-CTCの3-5グレードの有害事象に制限しました。ベバシズマブと化学療法の投与を受けている患者にもっとよく起こる重篤で致命的な有害事象は以下です。

好中球減少(27%対17%)疲労(16%対13%)高血圧(8%対0.7%)

好中球減少による感染症(7%対3%)血栓症/塞栓症(5%対3%)

肺炎または肺浸潤(5%対3%)

グレード3または4の好中球減少による感染症(5%対2%)

好中球減少時の発熱(5%対2%)低ナトリウム血症(4%対1%)

蛋白尿(3%対0%)頭痛(3%対0.5%)

ベバシズマブの投与を受けている患者の致命的な、治療に関連した有害事象は、肺出血(2.3%対0.5%)、消化管出血、脳梗塞、消化管穿孔、心筋梗塞と好中球減少性敗血症でした。

最も重篤で、時には死にいたる、ベバシズマブ毒性は消化管穿孔、創傷治癒合併症、出血、動脈の血栓塞栓性事象、高血圧性危機、ネフローゼ症候群、鬱血性心不全、好中球減少性敗血症です。ベバシズマブの投与を受けている患者の最もよく起こる有害事象は無力症、痛み、腹痛、頭痛、高血圧、下痢、吐き気、嘔吐、食欲不振、口内炎、便秘、上気道炎、鼻血、呼吸困難、剥脱性皮膚炎、蛋白尿です。

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HAJI 翻訳
Dr.Saru 監修 
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転移性大腸がんの二次治療薬

2006年6月20日、FDAは転移した大腸の悪性腫瘍の二次治療薬として、静注での5 フルオロウラシルベースの化学療法と併用し投与するベバシズマブ(ジェネンテック社製アバスチンR)の適応拡大の認可を与えました。この案はFOLFOX4単独の投与を受けている患者の全生存(OS)と比較し、FOLFOX4(5 フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン)に加えベバシズマブの投与を受けている患者の全生存の統計学的に有意な改善の実証に基づいています。

この承認を裏づけている試験(E3200)はベバシズマブ単独(n=244)、ベバシズマブ と FOLFOX4 (n=293)、およびFOLFOX4 単独 (n=292)を評価している、非盲険、無作為化、3群、実薬対照、多施設臨床試験です。予定の中間分析後、FOLFOX4単独と比較してベバシズマブ単独で治療された患者の生存が減少したエビデンスに基づいてベバシズマブ単独療法群は終了しました。

試験に組み込まれた患者は、5 FUとイリノテカンベースでの治療後に病気の進行または再発を見た人でした。患者(99%)は、転移性疾患の最初の治療として、5 FUと併用または単独でイリノテカンの投与を受けていましたイリノテカン主体の術後補助化学療法の投与を受けた患者は、治療が完了して6ヵ月以内に再発があったことが条件として要求されました。

併用療法群と単独療法群において、ベバシズマブ10mg/kgが2週ごと投与されました。FOLFOX4レジメンは2週ごと第1日目にオキサリプラチン85mg/m2とロイコボリン200mg/m2を静注で同時に投与され、その後、急速静注で5FU 400mg/m2の投与後、持続静注で5FU 600mg/m2が投与されました。第2日目に、患者は静注でロイコボリン200mg/m2 の投与を受け、その後、急速静注で5FU 400mg/m2 を投与後、持続静注で5FU 600mg/m2が投与されました。FOLFOX4の併用投与時、第1日目にオキサリプラチンとロイコボリンの前にベバシズマブが投与されました。

無作為化された829人の患者では、年齢の中央値は61才で、患者の49%はECOGの一般状態が0でした。患者の26%が放射線療法を受けており、患者の80%は術後補助化学療法を受けており、全ての患者がイリノテカン療法を受けていました。

試験の主要評価項目である全生存は、FOLFOX4単独投与を受けている患者と比較しFOLFOX4とベバシズマブを併用して投与を受けている患者で、有意に長いものとなりました。(全生存の中央値は、13.0ヵ月対10.8ヵ月;ハザード比0.75、p=0.001層別化ログランク検定) 生存のベネフィットは、年齢(65才以下対65才以上)と性別によって定義されるサブグループでも観察されました。ベバシズマブとの併用で治療された患者は、担当責任医師評価によって有意に長い無進行期間の生存とより高い全体的な奏効率を持つことが報告されました。

最も重篤で、時には死にいたる、ベバシズマブ毒性は消化管穿孔、創傷治癒合併症、出血、動脈の血栓塞栓性事象、高血圧性危機、ネフローゼ症候群と鬱血性心不全です。ベバシズマブの投与を受けている患者の中で最もよく起こる有害事象は無力症、痛み、腹痛、頭痛、高血圧、下痢、吐き気、嘔吐、食欲不振、口内炎、便秘、上気道炎、鼻血、呼吸困難、剥脱性皮膚炎、蛋白尿です。

Trial E3200では、有害事象のデータはNCI-CTC(共通毒性基準)の3-5グレードのみ収集されました。したがって、これらのデータは、真の有害事象率を過小評価しがちです。加えて、有害事象の発現や回復の時間のデータも収集されませんでした。

FOLFOX4単独の投与を受けている患者と比較してベバシズマブの投与を受けている患者でもっとよく起こるNCI-CTCの3-5グレードの有害事象

疲労(19%対13%)下痢(18%対13%)

感覚性ニューロパシー(17%対9%)嘔気(12%対5%)

嘔吐(11%対4%)脱水(10%対5%)高血圧(9%対2%)

腹痛(8%対5%)出血(5%対1%)他の神経学的毒性(5%対3%)

腸閉塞(4%対1%)頭痛(3%対0)

この試験で、ベバシズマブの投与を受けている患者の致命的な、治療に関連した有害事象には、中枢神経出血、消化管出血、敗血症の消化管穿孔が含まれます。

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HAJI 翻訳
Dr.Saru 監修 
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転移性大腸がんの初回治療

2004年2月26日、すでにがんが体の他の部分に移転してしまった結腸直腸がんの患者に対する初回治療としてFDAがベバシズマブ(アバスチン®、ジェネンテック社の商標)を承認しました。 モノクロナール抗体であるベバシズマブは血管新生として知られる過程の新しい血管形成を阻害する薬剤としては初めて承認されました。

結腸がんの患者が標準化学療法薬(「Saltzレジメン」又はIFLとしても知られている)との併用治療としてベバシズマブが静注で投与された場合、患者の命をおよそ5カ月伸ばすことができました。 IFL治療はイリノテカン、5フルオロウラシル(5FU)、とロイコボリンを含んでいます。

ベバシズマブは人間とマウスの抗体の両方の部分を含むように遺伝子を組み換て作られたマウス抗体です。 (抗体は体内の免疫システムによって作り出された、異物と戦う物質です)  特別な技術を使い、実験室で大量に抗体の生産が可能です。

この新しいモノクロナール抗体は新しい血管の形成を刺激する「血管内皮増殖因子」(VEGF)と呼ばれる自然タンパク質の機能を対象としてその抑制をすると考えられています。 VEGFがベバシズマブのターゲットとなって結合すると、VEGFは血管の成長を促進できなくなります。その 結果、腫瘍の成長に必要な血液、酸素、および他の栄養物を遮断します。

ベバシズマブなどの血管新生阻害剤は、がんの成長を抑制できるかもしれないという望みを抱いて30年間に渡り、まず実験室で、それから、患者に対して試験が続けられました。 この薬はこの種類の薬剤として初めて、腫瘍の成長を遅らせ、さらに重要なことに、患者の命を有意に伸ばすことが証明された薬剤です。

「ベバシズマブの承認は、がんと戦う新しい期待できる方法を探す何年もの研究開発の結果で、最近の結腸直腸がんに関する多くの新たな治療の1つであり、これらの新しい治療法を組み合わせることで、この病気と戦うための手段を飛躍的に改良させました。」と、FDA 検査官マーク・B.マクレラン医学博士は言っています。 「これらの医学への貢献は製剤開発者の革命とFDAのがん審査チームの努力の結果を反映し、生物医学革命により得られた期待の証明です。 これらの仕事にかかわる関係者の懸命なる努力はがん患者の人生を確かに変えています。」

疾病対策センター(CDC)によると、結腸直腸がん(結腸又は直腸のがん)は、米国の男性と女性の中で3番目に多い一般的ながんであり、がんに関連した死亡数が2番目に多い病気です。 また、結腸直腸がんは米国で最もよく診断されるがんの1つです; およそ14万7500の新しい患者が2003年に診断されました。

ベバシズマブの安全性と有効性は主に、転移性の結腸直腸がん患者800名以上を対象にした、ベバシズマブの投与により患者の生存の延長がみられたかどうかを解明する設定の無作為化二重盲検臨床試験にて示されました。 およそ患者の半分が標準併用化学療法であるIFLの投与を受け、後の半分はIFLに加えて2週間に一度ベバシズマブの投与を受けました。

全体的に見て、IFLとの併用でベバシズマブが投与された患者はIFLのみを投与された患者と比べおよそ5カ月生存が延び、腫瘍の再成長、または新しい腫瘍の発現は平均して4カ月遅くなりました。 治療の奏効率はこの試験の対照群の35%と比べて、本剤投与群は45%でした。

重篤ですがあまり頻繁に起こらないベバシズマブの副作用は、結腸に穴があく(消化管穿孔)事で、外科的な手術を普通必要とし、腹腔内感染、傷の回復の遅延、肺あるいは内臓からの出血などのおそれもあります。 他のもっと一般的な副作用は、高血圧、疲労、凝血、下痢、白血球減少 (病気に対する免疫が弱くなる)、頭痛、食欲の減退、口内の痛みです。

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HAJI  翻訳
Dr.Saru 監修 
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発行された薬剤警告

2011年9月30日、米国食品医薬品局(FDA)は安全性に関する表示を改訂しました。改訂された処方情報は、閉経前の女性における卵巣機能不全のリスク、顎骨壊死、ならびに、ベバシズマブ投与中に初回静脈血栓塞栓症(VTE)発現後、抗凝固療法を受けている患者におけるVTEおよび出血のリスクに関する新たな警告です。

卵巣機能不全
ベバシズマブの使用が承認されていない病期2および3の大腸がんに対するアジュバント療法としてmFOLFOX単独投与(N=84人)またはmFOLFOX+ベバシズマブ併用投与(N=95人)を受けている女性患者179人のサブセット解析で、卵巣機能不全の新規発症率を前向きに評価しました。卵巣機能不全の定義は、3カ月以上の無月経、卵胞刺激ホルモン(FSH)レベル30 mIU/mL以上、かつ、血清β-HCG妊娠検査陰性としました。卵巣機能不全の新規症例は、ベバシズマブ+化学療法併用投与群の34%(32/95)、化学療法単独投与群の2%(2/84)に認められました[相対リスク14(95% CI:4, 53)]。ベバシズマブによる治療を中止した女性患者のうち22%(7/32)は、中止後に卵巣機能の回復がみられました。卵巣機能の回復の定義は、治療期間後の任意の来院時における、生理の再開かつFSHレベル30 mIU/mL未満としました。受胎能に対するベバシズマブ曝露の長期的作用は不明です。生殖能のある女性に対し、ベバシズマブ治療開始前に、卵巣機能不全のリスクについて説明する必要があります。

顎骨壊死
ベバシズマブを投与中だがビスホスホネート製剤は処方されていない患者で、顎骨壊死(ONJ)が報告されました。顎骨壊死の病因は不明です。ベバシズマブの特性である血管新生抑制が骨組織の駆血を生じさせることがあり、その結果、顎の微小血管系の虚血性変化さらに骨壊死となる可能性があります。

抗凝固療法を受けた患者における静脈血栓塞栓症(VTE)および出血事象
ランダム化4群試験において、転移性大腸がん(mCRC)を有する1401人の患者を対象とし、VTE(全グレード)の発症率を前向きに評価しました。初発VTEの全発症率は、ベバシズマブ+化学療法投与群(13.5%)において、化学療法単独投与群(9.6%)より高くなりました。VTE事象の初回発現後、抗凝固剤にて治療された116人(ベバシズマブ+化学療法投与群73人および化学療法単独投与群43人)のうち、続発したVTEの全発症率もまた、化学療法単独投与群(25.6%)と比較して、ベバシズマブ投与群(31.5%)で高くなりました。抗凝固剤にて治療されたこの患者のサブグループにおいて、発症した出血の大部分はグレード1でした。出血の全発症率はベバシズマブ投与群で27.4%、化学療法単独投与群で20.9%でした。
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原信田みを 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)監修 
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2007年9月24日、FDAは安全性に関する表示を改訂しました。改訂された処方情報には、対照臨床試験でベバシズマブを投与した患者に非胃腸管瘻形成が報告され(発生率0.3%未満)、市販後の発症では致死的転帰の症例がいくつか認められたことが明記されました。消化管以外での瘻孔形成が、気管食道、気管支胸膜、胆管、膣、膀胱で報告されました。この事象はベバシズマブ投与期間中を通して報告され、最初の6カ月に事象のほとんどが発生しました。臓器の瘻孔形成がみられる患者に対して、ベバシズマブ投与を永久的に中止するように、医師らは指示を受けています。
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遠藤香利 翻訳
野長瀬 祥兼(工学/医学生)監修 
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2006年9月27日、FDAとジェネンテック社は、医療従事者に対して、ベバシズマブの投与を受けている患者では、可逆性後頭部白質脳症(RPLS)が増加する危険があるというエビデンスがあるとのもうひとつの重要な薬剤警告(原文)を発行しました。RPLSは、まれな脳毛細管漏出症候群で、高血圧、体液鬱滞、血管内皮に免疫抑制薬の細胞障害性作用を伴うものです。鼻中隔穿孔の増加するリスクもあるため、処方情報は重度の副作用を含むように改訂されました。

2004年8月12日、FDAとジェネンテック社は、ベバシズマブに関連した脳血管発作、心筋梗塞、一過性脳虚血発作と狭心症を含む重篤な動脈の血栓塞栓性事象の増加するリスクのエビデンスがあると医療従事者に重要な薬剤警告(原文)を発行しました。致命的な動脈血栓症事象のリスクも増します。転移性結腸直腸がん患者にて行われた無作為化、実薬対照研究において、重篤な動脈の血栓症の事象のリスクは、静注5FUベース化学療法に加えベバシズマブの投与を受けている患者でおよそ2倍高くなり、最大5%の推定全割合でした。
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HAJI 翻訳
Dr.Saru 監修 
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

原文掲載日 

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