シプリューセル-TのFDA承認
原文 2010/04/30掲載 2013/07/03掲載
商標名:Provenge®
・無症候性または症状の少ない転移性去勢抵抗性(ホルモン抵抗性)前立腺癌の治療に承認(2010/04/29)
臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。
2010年4月29日、米国食品医薬品局(FDA)は、無症候性または症状の少ない転移性去勢抵抗性(ホルモン抵抗性)前立腺癌の治療に自家細胞免疫療法としてシプリューセル-T(PROVENGER、Dendreon社製造)を承認しました。
シプリューセル-Tは白血球アフェレーシスで得られ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子に前立腺酸性フォスファターゼをつなげた組換えヒトタンパク質(PAP-GM-CSF)で培養(活性化)された自己由来の末梢血単核細胞(PBMCs)からなる細胞免疫療法です。
本承認はランダム化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験(9902B試験)で得られた結果に基づいています。全生存率(OS)は本試験の主要有効性評価項目でした。適格患者は転移部位の所見または、前立腺特異抗原(PSA)の一連の測定により進行の認められた、軟部組織や骨に転移がある患者でした。全患者はテストステロン値を去勢レベルに維持した適切なホルモン療法による治療歴がありました。肝臓、肺または脳に転移のある患者は本試験から除外されました。中等度から重度の前立腺癌による疼痛を訴えた患者や癌性疼痛に麻薬を使用している患者も除外されました。患者はシプリューセル-T投与群またはコントロール(活性化されていない末梢血単核細胞)群に無作為に割り付けられました。両群の患者は白血球アフェレーシス工程を3回(おおむね0、2、4週目)行い、その3日後にシプリューセル-Tまたは非活性化コントロールの点滴投与を受けました。試験中に疾患の進行があった患者は医師の判断により治療されました。
512人の患者が2:1の割合でシプリューセル-T投与群(n=341)またはコントロール投与群(n=171)に無作為に割り付けられました。82%はCAB療法(注;抗アンドロゲン剤を併用した内分泌療法)による治療歴があり、54%は局所放射線療法による治療歴があり、35%は前立腺全摘出術を受けており、18%はドセタキセルを含む化学療法による治療歴がありました。年齢中央値は71歳(範囲40から89歳)でした。患者の90%は白人でした。
コントロール投与患者の全生存率中央値が21.7カ月であったのに対し、シプリューセル-T投与患者の全生存率中央値は25.8カ月でした(p=0.032, HR 0.775, 95%CI 0.61, 0.98)。無進行期間に差はありませんでした。シプリューセル-T投与患者の57%およびコントロール投与患者の50.3%が疾患の進行後にドセタキセルを投与されました。
二次試験(9901試験)では、9902B試験の結果を支持するエビデンスが得られました。9901試験は転移性去勢抵抗性前立腺癌患者127人を対象とした小規模のランダム化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験でした。患者は2:1の割合でシプリューセル-T群(n=82)またはコントロール群(n=45)に無作為に割り付けられました。主要評価項目は無進行期間でした。全生存率解析方法は事前に規定されていませんでしたが、全患者の全生存率が追跡されました。主要評価項目の解析は統計学的有意差に達しませんでした。コントロール投与患者の全生存率中央値が21.45カ月であったのに対し、シプリューセル-T投与患者の全生存率中央値は25.9カ月でした。
シプリューセル-T投与患者601人の安全性評価で報告された主な副作用は、悪寒、疲労、発熱、背部痛、悪心、関節痛および頭痛でした。副作用の大半は軽度から中等度の重症度でした。重度の有害事象が起きたのはコントロール投与患者では25.1%であったのに対し、シプリューセル-T投与患者では23.6%でした。生命を脅かす有害事象が観察されたのは、コントロール投与患者では3.3%であったのに対し、シプリューセル-T投与患者では4.0%でした。致命的な有害事象が起きたのは、コントロール投与患者では3.6%であったのに対し、シプリューセル-T投与患者では3.3%でした。コントロール投与患者と比較してシプリューセル-T投与患者で頻繁に報告された重篤な副作用は急性注入部位反応および脳卒中でした。
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張 知子 訳
榎本 裕(泌尿器科医)監修
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。 FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。 |
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