ニボ/イピ+カボザンチニブ3剤併用により進行腎臓がんの悪化を抑制

 ●  3剤併用療法を受けた患者は、2剤併用免疫療法を受けた患者と比較して、病勢悪化または死亡のリスクが27%低かった。

 ● COSMIC-313試験は、遠隔転移を有する腎細胞がんに対し、現在の標準治療であるニボルマブ(販売名:オプジーボ)+イピリムマブ(販売名:ヤーボイ)と、3剤療法とを比較した初の第3相試験である。

2剤併用免疫療法にキナーゼを標的とした阻害薬を追加すると、未治療の進行腎臓がん患者の病勢悪化を遅らせることが、ダナファーバーがん研究所のがん専門医が主導する研究により明らかになった。

「チェックポイント阻害薬であるニボルマブ+イピリムマブに加え、キナーゼ阻害剤カボザンチニブ(販売名:カボメティクス)の投与を受けた患者は、ニボルマブ+イピリムマブのみの投与を受けた患者と比較して、無増悪生存期間が著しく改善しました」と、ランク泌尿生殖器がんセンター長であるToni Choueiri医師は述べる。Choueiri医師は、フランス・パリで開催される欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2022年大会において、現在継続中の重要な第3相臨床試験であるCOSMIC-313試験の結果を発表する予定である。

3剤併用療法を受けた患者は、2剤併用免疫療法を受けた患者と比較して、病勢悪化または死亡のリスクが27%低かった。無増悪生存期間(PFS)におけるそのような優位性は、主要評価項目を満たした。PFSの中央値は、3剤併用療法群では未到達であり、ニボルマブ+イピリムマブ群では11.3カ月であった。

「本試験は、現在の免疫腫瘍学の2剤併用を対照とし、3剤併用療法を評価したはじめての試験です。チェックポイント阻害剤2剤併用にカボザンチニブを追加することで、この患者集団の転帰を改善できるかという重要な問いへの回答が得られるようにデザインされています」とChoueiri医師は述べる。「最初の結果により、この3剤併用療法の有効性および安全性のプロファイルが明確に示され、無増悪生存期間の有意な延長が実証されています」。

患者の経過観察期間は17.7~20カ月である。全生存期間は、COSMIC-313試験における副次評価項目であるが、本試験の現段階では、3剤併用による有意な生存期間の延長は認められなかったため、本試験は次の全生存期間の解析にむけ継続する。

本試験では、国際転移性腎細胞がんデータベースコンソーシアム(International Metastatic Renal Cell Carcinoma Database Consortium:IMDC)のリスクモデルにより生存に関して中または高リスクと判定された、進行した、あるいは遠隔転移を有する未治療の腎細胞がん患者855人を対象とした。ニボルマブ+カボザンチニブ、ニボルマブ+イピリムマブは、いずれも進行した腎がんに対する標準的一次治療薬である。本試験は、ニボルマブ+イピリムマブを対照群として用いた、遠隔転移を有する腎細胞がんを対象とした初の第3相試験である。

ニボルマブとイピリムマブはいずれも、免疫系ががんを攻撃するのを妨げる分子的「ブレーキ」である免疫チェックポイントを解除することで効果を発揮する。このブレーキが解除されると、免疫のT細胞の腫瘍への侵入が可能になり、がん細胞を死滅させることができる。

 カボザンチニブは、MET、VEGFR、TAMなどの、がんを促進するいくつかの経路を阻害し、「チェックポイント阻害剤に対する反応を高める可能性があります」とChoueiri医師は述べ、ニボルマブ+イピリムマブと併用することで相加的、あるいは相乗的に効果が得られるとした。

主要評価項目であるPFSの詳細な結果を含む本データは、パリで開催されるESMO 2022年大会の議長シンポジウム III(2022年9月12日東部標準時間10:30am, 中央ヨーロッパ時間16:30)で発表され、ESMO広報活動で紹介される。議長セッションでは、最先端かつ臨床現場を変えるような重要な研究を、論文著者らが口頭で発表する。

演題/抄録:IMDC中・高リスクの未治療進行腎細胞がん(aRCC)に対し、ニボルマブ+イピリムマブにカボザンチニブを併用する第3相試験(COSMIC-313試験)(アブストラクトNo. LBA8)

– 発表者 Toni Choueiri医師

– 議長シンポジウムIII:2022年9月12日(東部標準時間10:30am, 中央ヨーロッパ時間16:30)

監訳:榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

翻訳担当者 松谷香織

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