2012/02/07号◆FDA情報「皮膚癌にvismodegib承認」「腎臓癌にaxitinib承認」「イマチニブ拡大承認」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年2月7日号(Volume 9 / Number 3)

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◇◆◇ FDA情報 ◇◆◇

・基底細胞癌の治療薬、優先審査を受けて承認

・進行腎臓癌の治療薬が承認

・FDAが稀な消化管癌の治療薬としてグリベックの適応を拡大

基底細胞癌の治療薬が優先審査を受けて承認

先週、米国食品医薬品局(FDA)は、最も一般的な皮膚癌である基底細胞皮膚癌の成人患者を治療する目的でvismodegib〔ビスモデギブ〕 (Erivedge〔エリベッジ〕)を承認した。本薬剤は外科手術や放射線治療が適応でない局所進行性の基底細胞癌患者や癌が転移している患者への使用を適応としている。

ビスモデギブは転移性の基底細胞癌を適応としてFDAに承認された最初の薬剤であり、治療に多大な進歩をもたらす可能性のある薬剤に対し、6カ月間の迅速審査を行うFDAの優先審査プログラムの下で評価が行われた。

本薬剤は1日1回投与の経口剤であり、大部分の基底細胞癌または毛包などごく少数の通常細胞で活性化している分子経路であるヘッジホッグ経路を阻害する。

ビスモデギブは、局所進行性または転移性の基底細胞癌患者104人を対象とした単一投与群の多施設共同臨床試験において、その安全性および有効性が評価された。

本研究の主要評価項目は客観的奏効率であり、96人の患者において評価が可能であった。転移性の基底細胞癌患者の30%が部分奏効を示し、局所進行性の基底細胞癌患者の43%が完全奏効または部分奏効を示した。

多く見られた副作用は筋けいれん、脱毛、体重減少、悪心、下痢、疲労、味覚異常、食欲減退、便秘、嘔吐、舌の味覚消失であった。

ビスモデギブは、患者や医療専門家に対し、胎児の死亡または重篤な先天異常のリスクのあることを警告する条件付きで承認された。そのため、治療を始める前に妊娠の有無を確認しなければならず、また患者にこれらのリスクや男女双方での避妊の必要性に関して警告しなくてはならない。

進行腎臓癌の治療薬が承認

米国食品医薬品局(FDA)は最近、別の薬剤による一次治療で奏効が得られなかった進行腎臓癌(腎細胞癌)患者を対象とした治療薬として、axitinib(アキシチニブ:Inlyta)を承認した。

腎細胞癌は、腎尿細管の内層に発生する一種の腎臓癌である。アキシチニブは1日2回服用する錠剤で、腫瘍の増殖と癌の進行に関与するキナーゼと呼ばれるタンパク質を阻害することにより効果を示す。

「これは、2005年以降に転移性または進行性の腎細胞癌の治療に承認された7番目の薬剤です」と、FDA医薬品評価研究センターの血液腫瘍製品室長のDr. Richard Pazdur氏は報道発表で述べた。「これらの承認は転移性腎臓癌の治療方式を大きく変化させ、患者に複数の治療選択肢を提供します」。

アキシチニブの安全性および有効性は、一次全身療法の途中または終了後に進行した723人の患者を対象にしたランダム化非盲検多施設共同臨床試験で評価された。その結果、アキシチニブの無増悪生存期間中央値は6.7カ月であったのに対し、標準治療(ソラフェニブ)では4.7カ月であった。

臨床試験で最も多く認められた副作用は下痢、高血圧、疲労、食欲減退、悪心、失声、手足症候群、体重減少、嘔吐、脱力、便秘であった。アキシチニブを服用した患者の一部で出血が認められ、死亡例もあった。未治療の高血圧や未治療の脳転移のある患者、および最近胃腸出血がみられた患者は、アキシチニブを服用すべきではない。

FDA、稀な消化管癌の治療薬としてグリベックの適応拡大

米国食品医薬品局(FDA)はCD117陽性消化管間質腫瘍(GIST)の外科的切除後の成人患者に対し、グリベック(イマチニブ)の適応を通常承認した。CD117、またはKitは、ほとんどのGISTでみられる分子マーカーである。この承認では、標準的な12カ月間投与による治療と比較して、36カ月間投与により全生存期間が延長することも注目された。

大規模なランダム化比較試験で、36カ月間イマチニブを服用したGIST患者では、12カ月間イマチニブを服用した患者より全生存期間および疾患の再発なく生存した期間が有意に長かった。 60カ月時点で、12カ月間イマチニブを服用した患者では82%、36カ月間服用した患者では92%が生存していた。

グリベックは2002年に、転移性GISTの治療に対し迅速承認を得た。続いて2008年、治癒切除(外科的除去)を受けたが再発の可能性が高いGIST患者への補助療法に対して迅速承認を得た。迅速承認の制度により、検証試験が行われている間に患者は有望な医薬品を早期に使用することができる。2008年には、転移性GISTへの適応も通常承認を得た。

「この10年間のグリベックの開発により、医薬品の本当の有益性を明らかにするには承認後の追加試験が必要であることが浮き彫りにされました」と、FDA医薬品評価研究センターの血液腫瘍製品室長であるRichard Pazdur医師は述べる。「グリベックは当初、転移性癌に対して承認されましたが、その後の本臨床試験により、長期間投与でより初期の癌でも生存期間を延長することが実証されました」。

グリベックを服用した患者に認められた主な副作用は、むくみ(浮腫)、悪心、嘔吐、筋攣縮、骨痛および筋肉痛、下痢、発疹、疲労、および腹痛であった。

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下野龍太郎、榎 真由、野中 希 訳

辻村信一(獣医学・農学/メディカルライター) 監修 

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