ベムラフェニブのFDA承認

商標名:Zelboraf

・進行期、あるいは切除不能のメラノーマの治療用に承認(2011/08/17)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。

2011年8月17日、米食品医薬品局(FDA)は、ベムラフェニブ錠(ZELBORAF、製造元:Hoffmann-La Roche 社)を、FDA承認診断検査試薬によりBRAFV600E変異が検出された、切除不能あるいは転移性のメラノーマ患者の治療薬として承認した。

承認は主に、cobas 4800 BRAF V600 Mutation Test(製造元:Roche Molecular Systems社)によりBRAFV600E変異が検出された、前治療歴のない転移性あるいは切除不能のメラノーマ患者を対象とした、ランダム化、オープンラベルの国際共同臨床試験に基づく。この併用診断検査試薬は、ベムラフェニブ承認と同時にFDAに承認された。

この臨床試験は、675人が登録され、337人はベムラフェニブ960 mgを1日2回経口投与される群、338人はダカルバジン1000 mg/m2を3週間毎に静脈内投与される群に無作為に割り付けられた。治療は、増悪あるいは許容できない毒性が認められるか、同意撤回されるまで継続された。すべての患者は全身状態の指標(ECOG performance status)で0または1を示し、95%の患者が転移性疾患を有していた。有効性の主要な効果判定は、全生存期間(OS)、及び試験担当医評価による無増悪生存期間(PFS)であった。その他の効果判定には試験担当医評価による最良総合効果があった。

全生存期間解析時点での追跡期間中央値は、ベムラフェニブ投与群で6.2カ月、ダカルバジン投与群で4.5カ月であった。全生存期間は、ダカルバジン投与群に比較してベムラフェニブ投与群において有意に改善した(HR=0.44, 95%CI: 0.33~0.59, p< 0.0001, ログランク検定)。全生存期間はベムラフェニブ投与群では中央値に達しておらず (95%CI: 9.6カ月~未達)、ダカルバジン投与群では7.9カ月(95%CI: 7.3~9.6カ月)であった。

無増悪生存期間(PFS)もまた、ベムラフェニブ投与群において有意に改善した(HR=0.26, 95%CI: 0.20~0.33; p<0.0001, ログランク検定)。PFSの中央値はベムラフェニブ投与群で5.3カ月(95%CI: 4.9~6.6カ月)、ダカルバジン投与群で1.6カ月(95%CI: 1.6~1.7カ月)であった。奏効率(完全奏効率+部分奏効率)はベムラフェニブ投与群で48.4%(95%CI: 41.6%~55.2%)、ダカルバジン投与群で5.5%(95%CI: 2.8%~9.3%)であった。

ベムラフェニブはまた、少なくとも1つの全身的治療歴のあるBRAFV600E変異陽性の転移性メラノーマ患者132人が登録された単群での多施設共同臨床試験でも評価された。治療効果に関する独立した審査により、確定された最良総合効果率52%(95%CI: 43%~61%)、奏効期間中央値6.5カ月(95%CI: 5.6カ月~未達)が示された。

ベムラフェニブ投与群に最も好発した有害事象(30%以上)は、関節痛、発疹、疲労感、日光過敏症{にっこう かびん しょう}および悪心であった。皮膚に生ずる扁平上皮癌及びケラトアカントーマを含む皮膚有棘細胞癌(CuSCCs)は、ベムラフェニブ投与群の約24%に認められた。CuSCCsは臨床試験中に切除により治療され、患者はベムラフェニブ用量を調整せずに試験を継続することができた。ベムラフェニブ投与群で報告されたその他の、時に重篤な有害事象は、過敏症、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、ブドウ膜炎、心電図QT延長、ならびに肝酵素値異常であった。

ベムラフェニブの推奨用量は960 mg、1日2回、約12時間間隔で、食事と共に、あるいは別に服用する。

ベムラフェニブ治療の前に、FDA承認診断検査試薬を用いたBRAFV600E変異陽性メラノーマの確認が必要である。ベムラフェニブは、BRAF変異を有さないメラノーマ患者への使用は推奨されない。本剤の承認には、医療関係者及び患者にベムラフェニブの潜在的リスクを知らせる医薬品ガイドが含まれている。

この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

翻訳担当者 石岡 優子

監修  須藤 智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター) 

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