FDAが転移性メルケル細胞がんに初の治療薬avelumabを承認

速報 

2017323

米国食品医薬品局(FDA)は本日、転移性メルケル細胞がん(MCC)を有する成人患者および12歳以上の小児患者(化学療法歴がない患者を含む)に対する治療薬として、avelumab[アベルマブ](商品名:Bavencio)を迅速承認した。FDAが、まれな侵襲性皮膚がんである転移性メルケル細胞がんの治療薬を承認したのは今回が最初である。

「皮膚がんは最も多いがんの一つだが、メルケル細胞がんと呼ばれる希少皮膚がんを有する患者にはこれまで、承認治療薬の選択肢がなかった」と、FDA医薬品評価研究センター(CDER)の血液・腫瘍領域製品室長代理で、同局のOncology Center of Excellence室長でもあるRichard Pazdur医師は話す。「科学界では、さまざまな種類のがんの治療法について、身体の免疫系機序を標的にした新薬の開発が進んでいる。こういった新薬開発の進歩により、治療選択肢が限られていたり、治療法が存在しない希少疾患のがんでも、新しい治療法が見つかっている」。

米国国立がん研究所によると、米国では約1600人が毎年メルケル細胞がんと診断されている。大部分の患者は外科的切除で治療可能な限局性の腫瘍を有するが、全患者の約半数が再発し、30%超では最終的に転移病変が発現する。転移性メルケル細胞がん患者では、がんは皮膚を越えて身体の他の部分に広がっている。

アベルマブは、PD-1PD-L1伝達経路(身体の免疫細胞と数種類のがん細胞に見られるタンパク質)を標的とする。本薬剤はPD-1PD-L1の相互作用を妨害するため、がん細胞を攻撃するための身体の免疫系機能を高める可能性がある。

今回、アベルマブは迅速承認(Accelerated Approval)された。迅速承認とは、有効な治療法がない重篤な病状に対して医学的ニーズ を満たすべく、患者に臨床的有用性を及ぼすと予測される臨床試験データを用いてFDAの薬剤承認を可能にするものである。アベルマブの臨床的有用性を確認するため、今後の追加臨床試験が要求され、同薬の製造元企業は現在これらの試験を実施している。

本日のアベルマブの承認は、1種類以上の化学療法レジメンでの治療歴がある転移性メルケル細胞がん患者88人が参加した単群試験の成績に基づく。試験では、完全縮小または部分縮小した患者の割合(全奏効率)を評価した。また奏効が示された患者において、腫瘍の増大が抑制された期間(奏効期間)についても評価した。本試験でアベルマブが投与された患者88人中、33%で腫瘍の完全または部分縮小がみられた。奏効持続期間について、奏効中の患者86%で6カ月以上持続し、同45%では12カ月以上持続した。

アベルマブに多くみられる副作用は、疲労、筋骨格痛、下痢、悪心、インフュージョンリアクション(投与時反応)、発疹、食欲不振および四肢の腫れ(末梢浮腫)などである。

アベルマブ投与で最も多い重大なリスクは、身体の免疫系が健康な細胞や臓器を攻撃する免疫介在性の問題であり、肺(肺臓炎)、肝臓(肝炎)、結腸(大腸炎)、ホルモン産生腺(内分泌障害)および腎臓(腎炎)などが含まれる。インフュージョンリアクションではさらに重篤なリスクがある。重度または致命的なインフュージョンリアクションが発現する恐れのある患者へのアベルマブ投与は中止しなくてはならない。成長中の胎児あるいは新生児には薬害を来す恐れがあるため、妊娠中または授乳中の女性にアベルマブを投与してはならない。

FDAはアベルマブの申請に対し、優先審査および画期的治療薬の指定を認めた。アベルマブはまた、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)にも指定された。希少疾病用医薬品指定とは、希少疾患の治療を目的とする医薬品の研究開発を支援し奨励するためのインセンティブが受けられる制度である。

FDAEMD Serono Inc社に対し、アベルマブを迅速承認した。

翻訳担当者 岐部幸子

監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

皮膚がんに関連する記事

ニボ+イピ併用で転移メラノーマの長期生存は劇的に改善の画像

ニボ+イピ併用で転移メラノーマの長期生存は劇的に改善

免疫チェックポイント阻害薬の併用療法を受けた転移メラノーマ(悪性黒色腫)患者のうち約半数が10年以上無がん状態で生存していることが、ダナファーバーがんセンターとウェイルコーネル医科大学...
【ASCO2024年次総会】メラノーマ:術前のニボルマブ+イピリムマブが術後療法単独より転帰を改善の画像

【ASCO2024年次総会】メラノーマ:術前のニボルマブ+イピリムマブが術後療法単独より転帰を改善

ASCOの見解(引用)「このランダム化第3相臨床試験は、メラノーマに対して術前に免疫療法を行った場合、術後にのみ免疫療法を受けた患者に比べて転帰が改善するという、複数の初期臨床...
FDAが切除不能または転移を有する悪性黒色腫にリフィリューセルを迅速承認の画像

FDAが切除不能または転移を有する悪性黒色腫にリフィリューセルを迅速承認

米国食品医薬品局(FDA)米国食品医薬品局(FDA)は、PD-1阻害抗体およびBRAF V600陽性の場合はMEK阻害薬の併用の有無にかかわらずBRAF阻害薬の治療歴のある切除不能また...
進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認の画像

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ米国食品医薬品局(FDA)は30年以上の歳月をかけて、免疫細胞である腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocy...