がんの免疫療法について

免疫療法は、免疫系ががんに対抗する力を助けるがん治療の一種です。免疫系は、人体が感染症などの疾患に対抗するための機構です。免疫系は白血球とリンパ系の器官および組織から構成されます。
免疫療法は生物学的療法の一種です。生物学的療法は、がん治療のために生物由来物質を使用する治療法の一種です。
(*サイト注:本ページは、免疫療法の種類についての一般的な説明を記載しています。研究段階のもの、日常の診療では使用されないものも含まれていますため、*サイト注を追加しています。)

目次
・免疫療法の種類
・免疫療法の対象となる人
・免疫療法が抗腫瘍効果を示すしくみ
・免疫療法による副作用の可能性
・免疫療法薬の投与法
・免疫療法薬を受けられる場所(米国事情のため略)
・免疫療法薬の投薬の頻度
・免疫療法が効いているかどうかを知るには

免疫療法の種類
数種類の免疫療法ががん治療に使用されます。免疫療法には、免疫系ががんを直接攻撃するのを助けるものと、免疫系を全体的に活性化するものがあります。

◇免疫系が直接がんに対抗するのを助ける免疫療法には次のようなものがあります。

免疫チェックポイント阻害薬:(*サイト注:いくつものがん種に標準治療として承認済み)
腫瘍に対する免疫系の反応を強める薬剤です。こうした薬剤は、T細胞(白血球の一種で、免疫系の一部)の「ブレーキ」を外すことでがん細胞を殺傷するように作用します。これらの薬剤は腫瘍を直接攻撃するものではありませんが、がん細胞が免疫系による攻撃を回避する能力を抑制します。

養子免疫細胞療法:(*サイト注:エビデンスはまだ不十分で標準治療ではない)
T細胞が本来持っているがん対抗する能力を増強しようという治療法です。この治療法では、患者自身の腫瘍からT細胞を採取します。そして最大の抗腫瘍活性をもつT細胞だけを施設内で大量に培養します。施設でのT細胞の培養には2~8週間を要します。この間に、化学療法や放射線治療などを受け、体内の免疫細胞を減少させることもあります。こうした治療を受けた後に、施設内で培養したT細胞を静脈内投与で再移植します。

養子免疫細胞療法の一種であるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法(遺伝子を人工的に改変したT細胞を使用)(*サイト注:CAR-T細胞療法はエビデンスあり・米国既承認)に関する詳細は、CAR T-Cell Therapy: Engineering Patients’ Immune Cells to Treat Their Cancers(英語)を参照してください。

モノクローナル抗体*サイト注:化学療法薬として多くの薬剤が承認済み)
抗体医薬品としても知られ、施設内で製造される免疫系のタンパク質です。こうした抗体医薬品は、がん細胞表面の特定の標的分子に結合するよう設計されています。一部のモノクローナル抗体には、免疫系ががん細胞を容易に見つけて殺傷できるように標識(目印)を付けます。他に、直接がん細胞の増殖を抑制したり、がん細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導したりするものもあります。また、がん細胞に抗がん剤を運ぶものもあります。モノクローナル抗体医薬品はがん細胞上の特定のタンパク質を認識するので、標的治療ともみなされます。

がん治療ワクチン*サイト注:承認薬はまだ数少ない。2018年現在、転移性前立腺がんへのプロベンジのみ
がん細胞に対する免疫応答を活性化することで抗がん作用を示します。がん治療ワクチンは感染症予防に使用するワクチンとは異なります。

 ◇がんに対抗する人体の免疫応答を強める免疫療法には次のようなものがあります。

サイトカイン*サイト注:日本でも現在いくつかのがん種に使用されている
人体の細胞が産生するタンパク質です。人体の正常な免疫応答において、そして、がんに対する免疫応答能に重要な役割を果たします。がん治療に使用される代表的な2種類のサイトカインがインターフェロンとインターロイキンです。

・BCG(カルメット・ゲラン桿菌;Bacillus Calmette-Guérin):*サイト注:膀胱がんの膀胱内注入のみ日本で保険適用)
免疫療法として膀胱がんの治療に使用されます。BCGは結核菌の弱毒株です。カテーテルを使用して膀胱内に直接注入すると、BCGはがん細胞に対する免疫応答を引き起こします。他の種類のがんでも研究が行われています。


免疫療法の対象となる人
免疫療法は現時点では、外科手術、化学療法、放射線治療ほど一般的ではありません。しかし、免疫療法は多くの種類のがんの治療法として承認されています。がん治療に使用できる免疫療法については、PDQ®がん情報サマリーの「治療(成人)」「治療(小児)」(日本語版)を参照してください。

他にも多くの免疫療法について臨床試験(ヒトを対象とする試験)が行われています。ご自身にとって治療の選択肢となる臨床試験を探すには、Find a Clinical Trial(英語)を参照してください。

免疫療法が抗腫瘍効果を示すしくみ
がん細胞が増殖する理由の1つは、がん細胞が免疫系から逃避できることです。一部の免疫療法薬はがん細胞に標識を付けることができるので、免疫系は容易にがん細胞を見つけ殺傷できます。他の免疫療法はがんに対する免疫系の働きを高めます。

免疫療法による副作用の可能性
免疫療法はさまざまな副作用を引き起こす可能性があります。可能性のある副作用とどのような症状が出るかについては、治療前の健康状態、がんの種類、がんの進行度、受けている治療の種類、および投薬量によって異なります。治療中にどのような症状が出るか、医師や看護師にも確実なことはわかりません。

最も多い副作用は、注射部位の皮膚反応です。こうした副作用には次のようなものがあります。

・痛み
・むくみ
・ヒリヒリした痛み
・発赤
・かゆみ
・発疹

インフルエンザ様の副作用には次のようなものがあります。
・発熱
・悪寒
・脱力感
・めまい
・吐き気や嘔吐
・筋肉痛や関節痛
・疲労
・頭痛
・呼吸困難
・低血圧や高血圧

他にも次のような副作用がみられることがあります。
・体液貯留による浮腫や体重増加
・動悸
・鼻づまり
・下痢
・感染リスク

免疫療法は重度または生命に関わるアレルギー反応を引き起こすこともあります。しかし、こうした反応はまれです。

免疫療法薬の投与法
さまざまな剤形の免疫療法薬がさまざまな方法で投与されます。投与方法には次のようなものがあります。

・静脈内投与(IV):静脈内に直接投与します。
・経口投与:錠剤またはカプセル剤を服用します。
・局所投与:クリーム剤として皮膚に塗布します。きわめて早期の皮膚がんに使用されることがあります。
・膀胱内注入:膀胱内に直接投与します。

免疫療法薬の投薬の頻度
免疫療法薬を受ける頻度と期間は、以下によって異なります。

・がんの種類と進行度
・受ける免疫療法の種類
・治療に対する身体の反応

毎日、毎週、または毎月治療を受ける可能性があります。一部の免疫療法薬はサイクル単位で投与されます。サイクルとは投与を続ける一定の期間のことで、サイクルの後に休薬期間が設けられます。この休薬期間中に身体は回復し、免疫療法薬に反応し、新たな正常細胞を作る機会を得ます。

免疫療法が効いているかどうかを知るには
担当医に診てもらうことが多いでしょう。担当医は身体検査を行い、体調について尋ねます。血液検査やさまざまな種類の画像診断などの臨床検査があるでしょう。このような検査によって腫瘍の大きさを計測し、血液の機能に変化がないか調べます。

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翻訳担当者 渡邊 岳

監修 橋本 仁(獣医学)、

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原文掲載日 

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