チピファルニブがHRAS変異陽性の頭頸部がん患者に有望
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤のチピファルニブ[tipifarnib]が、HRAS遺伝子に変異を有する再発/転移性頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者に対する第2相臨床試験で持続的な奏効を示したことが、10月26日~30日開催のAACR-NCI-EORTC 国際分子標的治療治療学会で発表された。
「再発/転移性の頭頸部扁平上皮がんは難治性で疾患であり、新しい治療を必要としている」とスローンケタリング記念がんセンターの腫瘍内科医、Alan L. Ho医師(医学博士)は述べた。「この試験が成功すれば、チピファルニブは、頭頸部扁平上皮がん患者の腫瘍ゲノムに個別化した分子標的薬物療法のひとつとなる可能性がある」。
チピファルニブは、10年以上前に、3つのRAS遺伝子のいずれかに変異を有する腫瘍を標的として当初開発されたが、研究の結果、HRAS変異陽性のがんがチピファルニブに顕著な感受性を示す可能性があることがわかった、とHo医師は説明している。進行した頭頸部扁平上皮がん患者の約5~8%は、HRAS変異を有する、と医師は続けた。チピファルニブは、がん原遺伝子HRASの活性化に必要な酵素、ファルネシルトランスフェラーゼの極めて選択的な阻害薬である。
「今回の試験データから、腫瘍の20%以上にHRAS変異を有する頭頸部扁平上皮がん患者に対して、チピファルニブ 600 mgを1週間ごとに1日2回投与すると高い奏効率が得られることがわかった」とHo医師は話す。「これは、がんのゲノムや生物学的機構を理解することが、新規の有効ながん治療の開発を促すことを示す新たな事例である」。
Ho医師らは、この第2相試験に対して頭頸部扁平上皮がん患者と他臓器の扁平上皮がん(SCC)患者を募集した。すべての患者が再発/難治性のがんを有し、中央値として2レジメンの前治療歴があり、以前の治療(プラチナ療法、免疫療法、またはセツキシマブと化学療法併用もしくはセツキシマブ単独など)で進行していた。
試験は完了前に主要目的を達成し、最も奏効が予測される患者に対象を絞るため、変異アレル頻度(VAF)が35%以上のHRASミスセンス変異を有する頭頸部扁平上皮がん患者のみを募集するよう変更された。また、VAFが20%以上の患者も組み入れられたが、その場合はベースラインの血清アルブミンが3.5 g/dL以上であることを条件とした。
患者は、チピファルニブ 600 mg~900 mgを、1サイクル28日のうち1~7日目と15~21日目に1日2回経口で投与された。
総じて、この要約の発表時点では、頭頸部扁平上皮がん患者は23人、扁平上皮がん患者は10人であった。VAF高値の(変更した組み入れ基準を満たす)頭頸部扁平上皮がん患者15人では、全体の奏効率は53%であり、部分奏効8人、安定5人であった。
VAF高値(20%以上)の頭頸部扁平上皮がん患者の無増悪生存期間(PFS)中央値は5.4カ月であり、部分奏効の患者では19カ月、安定の患者では4.5カ月であった。一方、直近に前治療を行った症例では奏効は示されておらず、無増悪生存期間中央値は3.2カ月であった。
「この試験が他の治療に反応を示さなくなった患者を対象にしていることを考えると、この結果は大変喜ばしいものだ」とHo医師は話す。「チピファルニブは、複数の前治療歴がある患者に対しても安全で忍容性が高い」。
この試験ではすべての患者に、試験治療下で発現した有害事象(TEAE)の1つ以上が認められた。最も頻度が高かったグレード3を超える有害事象は、血液およびリンパ系障害、胃腸障害、腎障害であった。「チピファルニブの安全性は開発当初に広範囲に評価されており、今回の試験で観察された副作用は管理可能で、かつ先行試験での安全性プロファイルと一致している」とHo医師は述べている。
「チピファルニブは、HRAS変異陽性の頭頸部扁平上皮がん患者に対する有望な新規の治療となる可能性がある。この試験の成功はまた、個々腫瘍に固有の生物学的機構に個別化した、効果の高い治療を見つけるためのがんのゲノムシーケンシング活用の可能性を伝えるものとなるだろう」とHo医師は話している。
この試験の問題点は患者数が少ないことにある。「HRAS変異陽性の頭頸部扁平上皮がん患者に対してチピファルニブの有効性をしっかりと確立するには、より多くの症例が必要である」とHo医師は注意を促している。
この試験は、Kura Oncology社による資金提供を受けた。同社はまた、Ho医師の研究チームに対して、ならびにHo医師の責任医師会議と、本試験のデータ発表のための会議出席時の交通費/宿泊費/会費に対して資金提供を行った。
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