口腔咽頭がん発症率増加の原因、HPV感染以外にも

2002~2011年における英国の口腔咽頭扁平上皮がん発症率の増加について、同期間中のヒトパピローマウイルス(HPV)の陽性疾患率は変わっていないことから、HPVへの感染だけに起因するものではないという研究報告が、米国がん学会誌「Cancer Research」に掲載された。

口腔咽頭がんは、頭頸部がんの一種である。

米国国立がん研究所(NCI)によると、口腔咽頭扁平上皮がん(OPSCC)は、口腔咽頭がんの中で最も多いがんである。

OPSCCには、扁桃、舌根、軟口蓋、咽喉の側部および背部壁に発現するがんなどがある。

「OPSCCの発症率は、1990年代半ばから後半にかけて先進国の間で上昇しています」と英国リバプール大学分子・臨床腫瘍学部(Department of Molecular and Clinical Cancer Medicine)の頭頸部外科教授であるTerry M. Jones医師は言う。

「OPSCCはHPV陽性疾患率の上昇により増加したことが複数の研究で示唆されていますが、われわれは英国全土でそうであったかどうかを調査したいと考えました。

「驚いたことに、英国のOPSCC全発生率は予想通り年々上昇している一方、HPVに起因するOPSCCの割合は変化していません。このことは、HPV陽性のOPSCCは発症率が上昇しているが、HPV陰性のOPSCCの発症率も同様に上昇しているということを意味しています」とJones医師は続けた。

「これは他の先進国で報告された傾向と異なり、OPSCCの発症率上昇の根本原因を集団間で一般化できないことを示しています。各集団に特化した方法で分析しなければなりません」。

Jones医師はHPV感染、喫煙、飲酒など、OPSCCには原因となる複数の要因があるため、この結果は疾患予防戦略策定の責任がある公衆衛生当局者に直接関係することであると指摘した。

10年間のあいだに英国全土で発生した悪性腫瘍のうち、HPV陽性のOPSCCの有病率を系統的かつ偏りなく分析することを目的に、Jones医師と英国の主な頭頸部がんセンターの研究者で構成する大規模な総合医療チームは、2002~2011年にOPSCCと診断された患者1,602人から収集した保管用腫瘍組織について、HPV感染の有無を調べた。

各検体は、HPVに関する検証済みの3つの商用試験を用いて分析された。

3試験の患者1,474人の検体から有効な結果が得られた。

患者全体のHPV有病率は51.8%であった。

検体は疾患が診断された年のものであるとすると、HPVの検査結果が陽性である割合は年ごとに違いはなく、約50%であった。

「HPV陽性疾患率に関するデータにより、男女同様のHPV予防接種政策を支持するさらなるエビデンスが得られます」とJones医師は述べた。

「われわれの仮説では、飲酒によりHPV陰性のOPSCCの割合増加するとしていますが、これに関しては未だ確固たるエビデンスは得られていません」。

Jones医師によると、本研究のもっとも重大な弱点は、英国のみを分析対象としており、分析結果が英国人以外の集団に対して一般化されていない点である。

注意すべきこととしては、NCIによると、1988~2004年の米国におけるHPV陽性の口腔咽頭がん発症率の推計が225%上昇した一方、HPV陰性がんの発症率は50%低下したという。

「過去20年余りにわたる、HPV陽性のOPSCC発症率上昇の規模は、米国および英国で実際非常に類似しています」とJones医師は言う。

「大きな違いは、HPV陰性率も本研究期間中に上昇した一方、米国ではそれが低下したと報告されていることです」。

これらの結果は、HPV陰性疾患におけるリスク要因への曝露が2国間で著しく異なることを示唆しています」。

本研究は、GlaxoSmithKline社から研究助成金を受けており、リバプール大学およびAintree Hospitals NHS Foundation Trustの後援を受けた。

組織検体を提供したNorthern Ireland Biobankは、公衆衛生当局のHealth and Social Research Development Divisionから助成を受けた。

Jones医師は、GlaxoSmithKline社およびSanofi Pasteur社から研究助成金および謝礼金を受けた。

Jones医師はまた、Sanofi Pasteur社から教育用プレゼンテーションの開発および発表に対する報酬を得ている。

翻訳担当者 JAMT翻訳チーム

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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