ペムブロリズマブが頭頸部がんに効果
ダナファーバーがん研究所
原文掲載日 :2016年6月6日
米国臨床腫瘍学会の2016年年次総会(ASCO 2016)において、ダナ・ファーバー癌研究所やペンシルバニア大学などの研究者らが第2相臨床試験の結果を示し、pembrolizumab[ペムブロリズマブ]の高い有効性について発表した。再発または遠隔転移を伴う頭頸部がん患者の治療において、PD-1阻害薬であるペムブロリズマブが約2割の患者で奏効した。
KEYNOTE-055試験中間結果報告の統括著者はダナ・ファーバー癌研究所の頭頚部がん治療センター部長であるRobert I. Haddad医師である。ASCO 2016ではペンシルバニア大学ペレルマン医学大学院血液腫瘍学部准教授Joshua Bauml医師により発表された。
171人がペムブロリズマブによる治療を受け、そのうち評価可能な92人の患者において17%に部分奏効(PR)が認められ、さらに18%の患者が安定(SD)と評価された。
全奏効率17%は、プラチナベースの化学療法およびセツキシマブに対して抵抗性を示す頭頸部がんの治療薬として承認されたメトトレキサートによる奏効率の3倍以上である。本試験参加者はすべてプラチナ製剤およびセツキシマブによる効果が認められなくなった、あるいは効果がまったくなかった患者である。プラチナ製剤およびセツキシマブに対し抵抗性が認められる患者の全生存期間は6カ月といわれるが、ペムブロリズマブの全生存期間は8カ月であり、患者にとって希望をもたらす結果となった。
頭頸部がんの一種である中咽頭がんの主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)であるが、ペムブロリズマブはヒトパピローマウイルス陽性患者および陰性患者ともに同様の効果がみられた。また、忍容性も高かった。
Haddad医師は、「ASCOで発表された研究成果は臨床現場における治療に変化をもたらすものであり、頭頸部がんの進行における免疫チェックポイント阻害剤の高い効果を示しています。将来的には、こうした薬剤が再発頭頸部がん治療の主力として展開されると期待しています」と語った。
Bauml医師によると、ペムブロリズマブは特定の患者群にとって有望な治療薬であり、これまで治療法がなかった高悪性度の頭頸部がん患者にとっても、HPV感染の有無にかかわらず生存期間を延長する治療薬となり得る。
FDAにより承認されたペムブロリズマブは抗PD-1抗体であり、PD-1による免疫作用阻害を抑止することでT細胞の浸潤を促し、腫瘍細胞への攻撃を可能とする。転移メラノーマ(悪性黒色腫)およびPD-L1(下記参照)を発現する転移非小細胞肺がんの治療薬として承認されているが、現在その他の部位におけるがんに対しても試験が実施されている。
(監訳者注:原文では、express PD-1とありますが、express PD-L1であるべきと思います。)
米国では、毎年新たに54,000症例の頭頸部がんが報告されているが、その90%以上が頭頸部扁平上皮がん(口腔、咽喉および副鼻腔などで発症)である。リンパ節や肺などの部位に転移し、死に至るケースもあり、診断から5年以上生存する割合はわずか約5割とされる。
Bauml医師は、「第1相および第2相試験の分析結果は、現状ではほとんど選択肢がないこのような患者にPD-1標的免疫療法が奏効する可能性を示唆しています。ペムブロリズマブと標準化学療法を比較する現在進行中の第3相試験の結果に期待しています。これらの臨床試験では、本剤による頭頸部がん治療を早期から用いることの臨床価値が明らかになるでしょう」と述べた。
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山口真奈美 訳
高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)監修
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