頭頸部がん切除後の個別化ネオアンチゲンワクチンが一部の患者に有益

米国がん学会(AACR)

個別化ネオアンチゲンがんワクチンであるTG4050は、外科的に切除されたHPV陰性の頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者において腫瘍特異的免疫応答を誘導し疾患の再発率を低く抑えたことが、4月5日~10日に開催された2024米国がん学会(AACR)年次総会で報告された。

パリのキュリー研究所の臨床免疫学者であり研究者であるOlivier Lantz医学博士によれば、局所進行頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者は手術後に再発するリスクが高く、免疫チェックポイント阻害薬を含む現在利用可能な治療法では再発疾患に対する有効性は限られている。

Lantz博士らは、個別化された治療ワクチンによって、外科的に切除された頭頸部扁平上皮がんの再発を遅らせることができるという仮説を検証した。「各患者固有の腫瘍に合わせた治療用ワクチンは、強力な免疫応答をもたらし、最終的に疾患の再発につながる残存病変を除去する可能性があります」とLantz氏は説明し、ワクチンは腫瘍を他の免疫療法に反応しやすくする可能性もあると付け加えた。

TG4050は個別化ワクチンであり、非病原性のポックスウイルスを用いて、抗腫瘍T細胞の活性化と増殖を誘導する30種類の個別化ネオアンチゲン(各患者の腫瘍に固有のタンパク質)を送達する。研究者らは、人工知能と機械学習ツールを用いて各患者の腫瘍のゲノムを解析し、関連する変異と免疫原性ネオアンチゲンを同定し、個別化ワクチンを開発した。

TG4050の安全性と有効性は、第1相臨床試験で評価されている。この試験には、手術および標準治療である補助放射線療法と化学療法を受けたステージ3または4のHPV陰性頭頸部扁平上皮がん患者33人が含まれる。 患者は 2 つの群のうちの 1 つにランダムに割り当てられた。治療群(A)の17人の患者には標準治療の直後にTG4050が投与され、観察群 (B)の16人の患者には疾患再発時にTG4050が投与された。

A群で評価可能であった患者のうち、追跡期間中央値16.2カ月後に再発した患者はいなかった。B群では3人の患者が再発を経験し、1人は6.2カ月後、もう1人は8.8カ月後、3人目は18.5カ月後であった。

免疫応答を評価した17人の評価可能なワクチン接種患者(A群16人、B群1人)のうち、16人は活性化したネオアンチゲン特異的T細胞の証拠を示した。ネオアンチゲン特異的T細胞の大部分はワクチン接種前には存在しなかったことから、TG4050によって誘導されたことが示された。ネオアンチゲン特異的T細胞の数はワクチン接種により急速に増加し、ワクチン接種後7カ月まで安定したままであった。

さらに特徴を調べると、ネオアンチゲン特異的T細胞はエフェクターメモリー表現型を有しており、抗腫瘍活性を有する可能性が示唆され、5人の患者で腫瘍浸潤リンパ球の拡大が認められた。

さらにLantz氏は、TG4050に関連した有害事象は軽度から中等度であり、最も多かったのは注射部位の反応であったと報告している。

「私たちの発見は、TG4050が安全で、ほとんどの患者においていくつかのネオアンチゲン(新抗原)に対する免疫反応を促進することを示しています」とLantz氏は要約した。

「私たちは、これらの予備的データと、ネオアンチゲンをベースとするワクチンを支持するコミュニティによって構築されつつある一連のエビデンスに本当に興奮しています」とLantz氏は付け加えた。「私たちのような研究は、個別化されたネオアンチゲンベースの治療用ワクチンが明日の標準治療の一部となる可能性を示しています」。

この研究の限界は、サンプル数が少ないこと、追跡期間が短いこと、一部の患者の免疫反応データが不完全であることが挙げられる。

この研究はTransgene社の依頼により、Transgene社とNEC社(TG4050の開発元)が共同で資金を提供した。免疫学的解析はBpifranceの支援を受けた。Lantz氏はMnemo Therapeutics社とCereus社の株主であり、Cereus社の創設者で、Biomunex社からコンサルティング料を受け取っている。Lantz氏の研究室はTransgene社の受託業者である。

  • 監訳 山崎知子(頭頸部・甲状腺・歯科/埼玉医科大学国際医療センター 頭頸部腫瘍科)
  • 翻訳担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2024/04/09

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