Ethyol(amifostine)放射線防護剤の用量漸増試験

キャンサーコンサルタンツ
2005年10月

マサチューセッツ総合病院の研究者らの報告によると、過分割照射と併用して投与するタキソール(パクリタキセル)の用量はEthyol®(amifostine)を使用している患者において漸増可能である。この用量漸増試験の詳細は2005年10月1日発行のCancer誌で報告された。

放射線治療と化学療法の併用は進行性の頭頸部癌患者にとって標準的な治療方法であるが、大半の患者は治療後に再発しているのが現状である。Ethyolは放射線防護薬であり、放射線治療をうけている頭頸部癌患者を対象として、このクラスではこの用途でFDAによって唯一承認されている薬剤である。

これまでの臨床試験で、Ethyolは放射線によって誘発される急性および遅発性副作用を軽減することがわかっている。頭頸部癌患者が参加した主要な試験では、Ethyolによって口内乾燥の発現率が減少したが、口腔粘膜炎の発現率や重症度に対しては影響を及ぼさなかった。また、Ethyolの使用によって骨盤部照射を受けている患者におけるグレード2-3の膀胱または消化器系の毒性の発現率が減少することが示され、最近では、高用量のメルファランを投与されている患者の毒性の減少にEthyolの投与が関係しているとされている。

今回の試験は多施設第1相臨床試験で、36人の進行性頭頸部癌患者を対象としている。患者は放射線治療の他に週1回タキソールを投与された。また、タキソールの投与回数は最低3回から、最高6回まで漸増された。36人の患者のうち28人をEthyol投与群とし、残りの8人をEthyol非投与群とした。Ethyol非投与群は4回のタキソール投与に耐容性を示したが、Ethyol投与群の平均投与回数は5回であった。

おおよそ30ヶ月目では、無増悪生存率と全生存率のいずれも患者全体で66%であった。奏功率についてはEthyol投与群と非投与群の間で差異は認められなかった。

研究者らが出した結論によると、Ethyol投与によって、放射線治療をうけている進行性の頭頸部癌患者がタキソールによる化学療法を1サイクル多く受けることができる。この試験に参加した患者の生存率が上昇するかどうかを結論付けるには長期的な経過観察が必要であり、結果を裏付けるには今後無作為化臨床試験が必要となる。

コメント: 
Ethyolを使用することで放射線治療と併用して投与されるタキソールの用量を増加できる可能性があるが、この著者は、遠隔部の転移を有意に抑制するにはまだ十分ではなく、放射線療法前後により多くの化学療法を実施することが必要だと指摘した。

参考文献:

 Amrein P, Clark J, Supko J, et al. Phase I trial and pharmacokinetics of escalating doses of paclitaxel and concurrent hyperfractionated radiotherapy with or without amifostine in patients with advanced head and neck carcinoma. Cancer . 2005;104:1418-1427


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翻訳担当者 てらしま

監修 平 栄(放射線腫瘍科) 

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