Advexin®〔アドベキシン〕は頭頸部癌の生存を改善する

キャンサーコンサルタンツ
2008年7月

標的薬剤であるAdvexin(p53癌抑制療法)は、p53バイオマーカーを有する頭頸部癌患者に対するメトトレキサート治療と比較して生存を改善する。この結果は最近、米国癌学会(AACR)Centennial Conference on Translational Cancer Medicine 2008におけるCancer Clinical Trials and Personalized Medicine誌で発表された。

癌治療に対するワクチン療法を開発する試みは、多数行なわれてきたが、癌治療用にFDAが承認したワクチンは現在のところ存在していない。ワクチン開発は困難であるにもかかわらず、この分野での研究は継続されている。

p53抑制遺伝子は遺伝子治療を評価する際の主な焦点となっており、それは癌の重要な部分はこの遺伝子の変異(変化)がみられるからである。「細胞自殺」遺伝子と呼ばれることもあるp53遺伝子は、細胞が厳しい条件下にあっても正常な複製を維持するのに役立つ。細胞のDNAに遺伝子変異がある場合、あるいはウイルスが細胞に感染した場合、この傷害細胞がさらに複製されるのを停止し、遺伝子変異がさらに進行するのを抑制することは、p53遺伝子が起こす現象の一つである。これは細胞の増殖停止、あるいは細胞の自殺(アポトーシス)により生じる。p53遺伝子内に変異がある細胞では複製が抑制されず、これによって癌細胞の無秩序な増殖を引き起こす。

Advexinはまだ臨床試験中のワクチンである。アデノウイルスに挿入されるのは機能的なp53遺伝子である。Advexinは腫瘍組織に直接注入される。癌治療によって癌細胞のDNAがしばしば損傷するため、Advexinが抗癌作用を高め、直接癌を殺傷する作用を有する可能性がある、と研究者らは推測している。正常なp53はこの損傷を認識し複製を停止するか、あるいは癌細胞のアポトーシスを引き起こすはずである。米国におけるこのワクチンの以前の試験では、腫瘍内注入+全身的シスプラチン投与に対して臨床的な効果を示した。

研究者らは近年、再発あるいは前治療に対する反応停止がみられる頭頸部癌患者へのAdvexin投与とメトトレキサート投与を比較する臨床試験を行なった。Advexin投与群とメトトレキサート投与群との間で生存期間に相違はなかったが、p53遺伝子の有無による分析では相違が認められた。

・p53バイオマーカーを有する患者群にAdvexinが投与された場合、メトトレキサートが投与された患者群に比べて、6ヵ月および1年生存率に有意な改善がみられた。

・p53バイオマーカー不在の患者群は、Advexinに比べてメトトレキサートによって有意な生存改善が認められた。

・Advexinはメトトレキサートよりも副作用が少なかった。

識別されたp53バイオマーカーを有する患者群にAdvexinで治療すると、前治療後に進行した頭頸部癌患者に対するメトトレキサート治療に比べ生存を改善する、と研究者らは明言した。Advexinはまだ米国食品医薬品局(FDA)によって承認されていない。

コメント:
FDAがp53陽性の頭頸部癌の治療に対してAdvexinを承認するかどうかを確かめることは興味のあることとみられる。

参考文献:
Introgen Therapeutics. ADVEXIN(R) Shows Statistically Significant Six-Month and Overall Survival Benefit as Compared to Methotrexate in Prospectively Defined Biomarker Patient Population [press release]. Available at: 190273&p=irol-newsArticle&ID=1178041&highlight=. Accessed July 2008.


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翻訳担当者 大内英理子

監修 中村光宏(医学放射線)

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