OncoLog2014年1月号◆In Brief「強度変調陽子線療法が口腔咽頭癌治療の副作用軽減を実現する可能性」

MDアンダーソン OncoLog 2014年1月号(Volume 59 / Number 1)

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強度変調陽子線療法が口腔咽頭癌治療の副作用軽減を実現する可能性

テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターが実施した最新の研究によると、強度変調陽子線療法(IMPT)を行った口腔咽頭癌の患者では、胃瘻管が必要となる割合が50%減少することが明らかになった。

現在、強度変調放射線療法(IMRT)が標準的な口腔咽頭癌の放射線治療であるが、IMRTでは癌細胞周辺の弱い組織を傷つけてしまうことがある。
このような細胞損傷は嚥下障害を引き起こし、患者が適切に栄養を摂取するため胃瘻管が必要になる場合がある。

一方、IMPTは癌細胞をより的確に狙い撃ち、周辺組織に照射される放射線量を抑えることができる。本研究の筆頭著者であり放射線腫瘍学部准教授のSteven Frank医学博士は、「IMPTは腫瘍の形状に合わせて陽子線をいくつもの層に分けて照射する技術であり、特に頭頸部癌のような複雑な形状の腫瘍をもつ患者に適している」と語った。

Frank医師の研究チームは、IMPTを行った患者25人とIMRTを行った同数の患者25人を解析し、IMPT群のうち胃瘻管が必要になったのはわずか5人であったのに対して、IMRT群では12人の患者で胃瘻処置が必要になったことを示した。また、IMPT群では、典型的な放射線治療の副作用として知られる嘔吐、悪心、消化管の炎症の発生率が低かったことも明らかにした。

本研究結果は米国放射線腫瘍学会年次総会で発表された。これらの有望な結果をもってFrank医師のチームは、口腔咽頭癌の患者でIMRTとIMPTの有効性と副作用の発生率を比較することを目的とした第2相及び第3相試験を開始している。
Frank医師は次のように語った。

「近年米国では成人のヒトパピローマウイルス(HPV)関連の頭頸部癌が急増しているが、治療中、最終的には余生にまで影響を及ぼす従来のIMRTによる副作用を最小化することが強く求められている。放射線治療は極めて若い患者層において主力の治療法であるため、われわれはIMPTのようにより先進的な技術が患者に対してさらなる恩恵をもたらすかどうかを解明しなければならない」。

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翻訳担当者 遠藤豊子

監修 中村光宏 (医学放射線/京都大学大学院医学研究科)

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