上咽頭がん発生率は、アジア系アメリカ人でも民族によって大きく異なる
データから高リスク要因の特定につながる可能性
中国系アメリカ人とラオス系アメリカ人は、上咽頭がん発生率が他のアジア系アメリカ人の民族別グループを上回っており、非ヒスパニック系白人アメリカ人と比較すると、上咽頭がんと診断される可能性がそれぞれ10倍以上、14倍以上高い。本研究結果は、2021年10月6〜8日に開催された第14回AACRバーチャル会議『人種・民族マイノリティおよび十分な医療サービスを受けていない人々におけるがん医療格差の科学』で発表された。
「研究においてアジア系アメリカ人を一つの人種集団とみなすことは、民族特有の重要なリスクパターンを見落としかねないということが明確になってきています」と、本研究筆頭著者であるAlice Lee博士(カリフォルニア州立大学フラトン校助教、公衆衛生学修士)は述べた。「今回の研究結果は、重点的介入によって大きな利益を得ると思われる、上咽頭がんリスクが特に高い人々を特定するものです」。
上咽頭がんは比較的まれな頭頸部がんで、アジア系の人により多く発症することがわかっている。SEER (Surveillance, Epidemiology, and End Results)データベースのデータに基づく先行研究では、上咽頭がんの発生率は、アジア系アメリカ人が非ヒスパニック系白人アメリカ人と比較して7倍以上高いと推定される。
しかし、アジア系アメリカ人と言っても、それは高度に不均質な集団であり、がんリスクにさまざまな影響を与える可能性がある文化やライフスタイルも異なる。この集団を民族別グループに分けることによって、上咽頭がんリスクを高める遺伝的、環境的、行動的要因の特定を進めることができるとLee氏は言う。
本研究では、SEERデータベースから1990年~2014年にアジア系アメリカ人で上咽頭がんと診断された約9,700人を特定した。この集団を9つの民族別グループ(中国人、日本人、フィリピン人、韓国人、アジア系インド人/パキスタン人、ベトナム人、ラオス人、カンボジア人、ハワイ先住民/太平洋諸島民)に分け、年齢で調整した後、各グループの発生率を計算した。
Lee氏らは、非ヒスパニック系白人アメリカ人と比較して、上咽頭がん発生率が、ラオス系アメリカ人で14.71倍、中国系アメリカ人で10.73倍高いことを発見した。日本人とアジア系インド人/パキスタン人を除いて、他のほとんどの民族別グループも、非ヒスパニック系白人と比較して上咽頭がんのリスクが有意に高かった。Lee氏は、「この違いは、上咽頭がんの病因の根底にあるメカニズムの解明に役立つかもしれません」と、述べた。
「日本人とアジア系インド人/パキスタン人に関する結果は、危険因子を特定し、重点的予防プログラムを開発するための今後の研究において、高リスク群との対比として役立つでしょう」と、Lee氏は説明した。
研究では、これらの格差が異なる上咽頭腫瘍組織構造間で一貫しているかについても調査した。中国人とラオス人は、本研究で調査したすべての組織構造において、より高リスクであったが、特に分化型非角化腫瘍と未分化型非角化腫瘍のリスクが高く、後者は、非ヒスパニック系白人アメリカ人と比較して、中国系アメリカ人とラオス系アメリカ人の両方で25倍高い発生率を示した。
Lee氏は、これらのデータがアジア系住民におけるがんリスクの研究方法の変化を促し、これらの格差の背景にある理由についての研究がさらに進むことを期待している。
「私たちの研究結果から明らかになったとおり、アジア系アメリカ人を単一の人種集団とみなしてがんを調べるという従来の方法を変える必要があります。一括的アプローチでは見逃される民族固有の格差が明確に存在するからです。病気の負担が不均衡に重い人々を特定できれば、彼らのリスクを高める可能性のある行動的、生物学的、社会的要因について考え始めることができます」と、Lee氏は述べた。
本研究の限界として、一部の民族別グループの調査人数が少なかったこと、および患者・ライフスタイル要因(移民歴、喫煙、アルコール摂取、体格指数など、確認された格差の交絡因子となり得る要因)に関する情報が限られていたことが挙げられる。
本研究は、カリフォルニア州立大学フラトン校による資金提供を受けた。著者は、利害相反がないことを宣言している。
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