進行上咽頭癌にオキサリプラチン(Eloxatin)と放射線の併用がより優れている
Oxaliplatin (EloxatinR) Plus Radiation Superior in Advanced Nasopharyngeal Cancer
(Posted: 11/02/2005) 2005年10月17日Journal of Clinical Oncologyオンラインによると初回治療で放射線治療とともにオキサリプラチン(EloxatinR)を投与した局所進行上咽頭癌患者は放射線のみの患者に比べ有意に結果が良好であった。
要約
局所進行上咽頭癌に対する放射線による初期治療の期間中にオキサリプラチン(EloxatinR)の投与を受けた患者は、放射線治療のみを受けた患者にくらべて、著しく良好な治療成績を示しました。オキサリプラチンから予測される副作用がみられましたが、軽度かつ回復可能でした。
出典 Journal of Clinical Oncology電子版2005年10月17日、印刷版2005年11月20日より (ジャーナル要旨参照).
背景
鼻腔後方の咽頭最上部に発生する上咽頭癌は米国では比較的稀なタイプの頭頚部癌ですが、世界的にはそれほど稀なものではありません。早期発見されれば放射線治療によって5人のうち4人以上が治癒します。
しかし上咽頭癌と診断された時には、近傍組織およびリンパ節へと広がっている症例がほとんどです(病期IIIまたはIV)。このような患者の5年生存率は50%以下になります。
上咽頭癌は手術では容易に到達できず、従来ほとんどの症例は放射線治療によってまず治療されてきました。1998年に行われた第3相臨床試験(Intergroup 0099)によって、上記2種類の治療法を同時に併用する治療(放射線化学療法)の治療成績が、放射線治療のみを用いる方法にくらべて良好であることが示されました。
1998年の臨床試験では放射線治療とともにシスプラチンが併用されました。オキサリプラチンは、シスプラチンやもうひとつの広く使用されている白金製剤であるカルボプラチンにくらべて副作用の少ない新しい白金製剤です。
この臨床試験の結果は、最初に、2003年の米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology meeting)で報告されましたが、今回、さらに長期の追跡調査とともに出版されました。
試験
この第3相臨床試験では、癌の広がり(転移)のない進行上咽頭癌の患者115人が7週間にわたる放射線治療を受けました。このうち56人は放射線治療期間中にオキサリプラチンの静脈内投与を2時間かけて週1回受けました。患者が試験に登録したのは2001年1月から2003年1月の間でした。
研究者たちは治療後24カ月(中央値)にわたって患者の追跡調査を行い、癌の反応と副作用の有無を調査しました。調査は治療直後の効果が消失するまで毎週、その後は2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、そして6カ月ごとへと頻度を減らしていきました。
治療によく反応しなかった患者が数人あり、これらの患者には外科的手術またはさらなる放射線治療が行われました。
この試験はSun Yat-Sen 大学癌センター(中華人民共和国、広州市)のDr. Li Zhang 氏とその研究チームが主導しました。アジア系の人々は非常に高い上咽頭癌のリスクがあります。
結果
放射線治療とオキサリプラチンの併用療法を受けた患者は放射線治療のみを受けた患者に比べて治療成績が著しく良好でした。2年後、放射線化学療法群に死亡がなかったのに対して、放射線治療単独群の生存率は77%でした。
2年後の再発は、オキサリプラチン併用群はわずか4%であったのに対して放射線治療単独群では17%とより高頻度におこりました。原発部位から外部へと癌が広がった(転移)のは放射線治療群の20%に対して、オキサリプラチン併用療法群は8%にとどまりました。
放射線化学療法群の方が治療に伴う副作用が多く認められましたが(すべてオキサリプラチンでよくみられる副作用)、重度ではなく時間の経過とともに減少(または消失)しました。放射線化学療法群の方が悪心、嘔吐が多くみられ、血球数が減少しやすい傾向がありました。また、手足の痺れや刺痛も放射線化学療法群の方が多く認められました。
コメント
米国国立癌研究所(NCI)癌研究センターの上級主任研究員C. Norman Coleman, M.D氏は「この臨床試験は非常によく遂行されています。わが国では1998年の臨床試験Intergroup 0099によって標準治療が変わりましたが、その結果は試験を早期中止してしまうほど効果的でした。このように、今回の確認試験によって放射線化学療法の有効性と使用薬剤に関する重要な追加情報が得られました」
「臨床試験で得られた知見は、放射線化学療法が明らかに、上咽頭癌の多くが該当するような進行した病期と闘うための治療法であることを示しています。どちらの臨床試験も白金系化学療法が用いられ、今回の試験では最初のIntergroup 0099で得られたシスプラチンの結果と同様、オキサリプラチンが放射線治療を補完する優れた選択肢であることが示されました」と述べています。
Coleman氏は転移なし生存率における有益性は特に興味深いけれども、さらに追跡期間が必要であると注記し、「白金製剤を用いる放射線化学療法が癌の制御を局所的に改善することがわかっています。局所的な制御の改善がいつも転移なし生存率や全生存率の改善に結びつくわけではありません。今回のデータは継続的に存在する腫瘍がさらなる転移をもたらすこと、したがって局所的な制御の改善に多くのメリットがあることを示唆しています」と述べています。
それゆえ「放射線化学療法は、最初の治療時には検出できないほど小さな遠隔部位の癌細胞と、継続的に存在する局所腫瘍の結果として起こる二次的転移の両方に効果を及ぼす可能性があります。もちろん、さらに長期の追跡調査が重要です」
最後に「中国人を対象にした試験結果は、米国の患者では再現されないだろうと信じる根拠は何もありません」とColeman氏は述べています。
(Sionn 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修 )
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