低リスク上咽頭がんに放射線単独は化学放射線療法と同程度に有効で、重篤な副作用を免れる
がん 学会食道がん、上咽頭がん、肺がんの治療の進歩-ASCOブレークスルー会議
新しい治療法が生存とQOLの改善に役立つ
食道がん、上咽頭がん、肺がんにおける新たな研究の進展を詳述する3つの重要な研究が、8月8日から10日まで横浜で開催された2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)ブレークスルー会議で発表
中国で実施された第III相臨床試験の結果が更新され、低リスクの上咽頭がん患者において、放射線療法単独は化学放射線療法を併用した治療と同程度に有効であり、難聴や重度の体重減少など、化学放射線療法で生じることのある副作用を回避できることが示された。
世界の他の地域ではまれであるが、中国では上咽頭がんがはるかに多く、年間、男性10万人中25~30人、女性10万人中15~20人が診断される。著者らは、上咽頭がん患者の約20%から40%が低リスク疾患であると推定している。この研究では、低リスク疾患をステージII疾患またはT3N0疾患(リンパ節への限定的転移がみられ、エプスタイン・バー・ウイルス[EBV] DNAが低いがん)と定義している。
この試験には、中国の低リスク上咽頭がん患者341人が参加し、放射線療法単独群(172人)と現在の標準治療である化学放射線療法群(169人)に無作為に割り付けられた。
追跡期間中央値70.1カ月後、5年全生存率は放射線療法単独群で95.2%、化学放射線療法群で98.2%であった。無再発生存率(がんが再発せず、何らかの原因で死亡しなかった人の割合)は、放射線療法単独群で86.2%であったのに対し、化学放射線療法群では88.4%であった。これらの差は統計学的に有意ではなかった。
さらに、聴覚障害を経験した患者は化学放射線療法群の方が放射線療法単独群よりも多かった(約31%対約23%)。治療中の重篤な副作用(口内炎、悪心、嘔吐、食欲不振など)は、放射線療法単独群が化学放射線療法群に比べて少なかった(それぞれ17%対46%)。
「低リスク上咽頭がんに対して強度変調放射線療法(IMRT)を行う時代において、IMRT単独療法は有効かつ安全です。IMRT単独群の患者は、化学放射線療法を受けた患者と比較して、報告されたグレード3または4の有害事象の発生率が有意に低かった。さらに、IMRT単独群の患者の報告では、治療中のQOLスコアが有意に良好でした」と、本試験の筆頭著者である中山大学がんセンターのRui Guo医師は述べた。
「放射線療法単独で治療された低リスク上咽頭がん患者の5年全生存率が同等であることは重要です。このデータは、化学放射線療法は同様の結果をもたらすが、不要な毒性が追加される可能性を示唆しており、各患者に合わせた治療を行うという広範なテーマを物語っています」とダナファーバーがん研究所頭頸部腫瘍学センターがん治療イノベーションセンター長Glenn J. Hanna医師は述べた。
上記の情報は、抄録142 「低リスク上咽頭がん患者に対する放射線療法単独と化学放射線療法の比較:多施設共同非盲検非劣性ランダム化第Ⅲ相試験の最新結果 」の要約である。抄録を見る(原文)
- 監修 小宮武文(腫瘍内科/Penn State College of Medicine)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2024/08/05
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