HPV関連中咽頭癌を予測する有望なバイオマーカーを発見
米国国立がん研究所(NCI)/米国国立衛生研究所(NIH)プレスリリース
原文掲載日 :2013年6月17日
研究者らは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対する抗体がHPV関連中咽頭癌のリスクが極めて高い人を特定するのに役立つ可能性を示した。中咽頭とは、喉の中の扁桃がある部分である。
同研究では、癌に罹患していない100人でHPV抗体を有するのは1人未満であるところ、中咽頭癌患者では3人のうち少なくとも1人はHPV抗体を有していた。
これらの抗体は発症の何年も前に見つけることができていた。
これらの発見は、将来的に血液検査で中咽頭癌患者を特定できるようになる可能性を示唆している。
(図)HPVのゲノム構造
米国国立衛生研究所の一機関である米国国立癌研究所(NCI)と国際癌研究機関(IARC)の研究者らが共同で実施した本研究の成果は、2013年6月17日付Journal of Clinical Oncology誌電子版で発表された。
歴史的には、中咽頭癌のほとんどはHPV感染よりも喫煙やアルコール摂取と関連すると説明されてきた。
しかしながら、HPV16型(HPV16)の感染増加により、この悪性腫瘍の発症率は全世界(特に米国と欧州)で増加傾向にある。米国では現在の口腔咽頭癌の60%以上がHPV16型に起因するものであると推計されている。
HPV16の持続感染は癌化への細胞変化を誘導する。
HPV E6(タンパク質)は腫瘍の形成に関与するウイルス遺伝子(産物)の一種である。
HPV関連中咽頭癌の患者を対象とした先行研究では、患者の血液中にE6の抗体が確認されていることが報告されている。
「われわれの研究は単に診断前にE6抗体が存在しているというだけでなく、多くの場合、癌が臨床的に認められるようになる10年以上前に抗体が存在していることを示している。これは、利用価値の高い検査バイオマーカーの重要な特徴である」と、本研究のリーダーでNCI癌疫学・遺伝学部門のAimée Kreimer博士は述べた。
Kreimer博士と共同研究者らは、欧州10カ国の500,000人以上の健康な成人を対象にした長期研究である「欧州の癌と栄養に関する前向き調査」より抽出したサンプルで試験を行った。被験者は研究の開始時に血液検体を提出し、以後継続的に追跡された。
研究者らは1年目から13年目までの間に中咽頭癌を発症した135人と、癌を発症しなかった約1,600人の血液を分析した。
その結果、癌患者の35%でHPV16-E6タンパク質に対する抗体が認められた一方で、非癌患者では1%未満であったことが明らかになった。
平均して診断前6年間分の血液検体が集められたが、検体収集と診断の時間的関連は無い。
HPV16-E6タンパク質に対する抗体は診断より10年前に集められた血液検体でも見つかった。
研究者らはこれまでの発表と同様に、HPV16-E6抗体が生存率改善に寄与するバイオマーカーと考えられることを報告した。
癌の診断前に検査でHPV16-E6抗体陽性反応が出た中咽頭癌患者は、追跡期間終了時点で、陰性の患者より70%も生存率が高い傾向があった。
Dr. Paul Brennan博士(IARC研究リーダー)は「有望ではあるが、これらの発見は未だ予備的段階というべきである」また
「HPV16-E6抗体の予測能力が他の研究でも支持されれば、我々は本研究結果に基づき検査ツールの開発を検討することになるだろう」と語る。
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参照文献: Kreimer AR, et al. Evaluation of human papillomavirus antibodies and risk of subsequent head and neck cancer. JCO. Online June 17, 2013. DOI: 10.1200/JCO.2012.47.2738.
この研究はNCI Intramural Research Program、国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer)およびフランス社会保健省の厚生事務局からの支援を受けており、欧州委員会の助成金番号はFP7-HEALTH-2011-282562である。
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訳
遠藤豊子 監修
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