グリベックが小児および青年Ph+ ALL患者の予後を改善
キャンサーコンサルタンツ
2009年9月
臨床試験協力団体Children’s Oncology Group (COG)に所属する研究グループの報告によれば、大量化学療法に加えて長期的かつ継続的にグリベック(メシル酸イマチニブ)の投与を行った小児および青年のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)患者において、無再発生存率(EFS)の改善がみられている。本試験の詳細は2009年10月8日にインターネット上で公開された。[1]
フィラデルフィア染色体が認められる急性リンパ性白血病患者の割合は、小児および青年患者においては少なく(3-5%)、20~60歳代における20%、および60歳代以上における40%という割合と対照的である。過去の臨床試験では小児PH+ ALL患者を対象に同種幹細胞移植を施行しており、移植を受けた患者においてEFS65%、受けていない患者においてはEFS25%という結果が報告されている。
本試験 AALL0031 では、1~21歳のPH+ ALL 患者92人に対してグリベックの投与(Gleevec 、340 mg/m2/d)と強化化学療法とを組み合わせた療法を施行し、その評価を行った。具体的にはグリベック併用の寛解導入療法、再寛解導入療法 、強化維持療法である。また、治療開始後6カ月目には一部の患者を本試験の対象から除外し、血縁あるいは非血縁ドナーからの同種幹細胞移植を受けた後、維持療法でグリベックを投与することも可能とした。
本試験においては、各患者について42日~280日間の範囲でグリベックの投与日数を増やしており、50人の患者に280日間連続してグリベックを投与した。また、HLA一致同胞をもつ患者には、同種幹細胞移植が施行された。その後、グリベックを併用しない同様の化学療法を受けた患者65人との間で、毒性の発現率の比較を行った。
280日間グリベックの連続投与を受けた患者50人のEFSは、既存対照の35%に対し80%であった。また、同胞ドナーからの移植を受けた 21 人の患者については、3年EFSが57%であった。
グリベックは、強化化学療法と併用しても、毒性の発現率を上昇させることはなかった。
本試験の担当者は、グリベックは、寛解導入療法後に多くの残存病変が認められた小児患者において最も有用性が高いと述べている。
コメント:グリベックが小児PH+ ALL 患者の予後を改善することが、既存対照との比較で明らかとなった。試験データは十分検討されており、グリベック併用化学療法に対する同種間細胞移植の優位性は認められないと言うことができる。グリベック併用化学療法と同種間細胞移植との間における有効性比較の最終結論については、今後のさらなる研究が待たれる。
参考文献:
[1] Schultz KR, Bowman WP, Aledo A, et al. Improved early event-free survival with imatinib in Philadelphia chromosome-positive actue lymphblastic leukemia: A Children’s Oncology Group Study, Journal of Clinical Oncology [early online publication]. 2009; on October 8.
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