FDAが限局非転移固形がん小児患者のシスプラチン聴器毒性低減にチオ硫酸ナトリムを承認
2022年9月20日、FDA(米国食品医薬品局)は、限局した非転移性固形がんをもつ生後1カ月以上の小児患者を対象に、シスプラチンに伴う聴器毒性のリスクを低減する薬剤として、チオ硫酸ナトリウム(販売名:Pedmark [ペドマーク]、Fennec Pharmaceuticals Inc.社)を承認した。
有効性は、シスプラチンベースのがん化学療法を受けている小児患者を対象とした2件の多施設共同非盲検ランダム化比較試験(SIOPEL 6試験 [NCT00652132]、COG ACCL0431試験 [NCT00716976])で評価した。
SIOPEL 6試験には、周術期にシスプラチンベースの化学療法を6サイクル受ける標準リスクの肝芽腫患者114人が登録された。患者は、シスプラチベースの化学療法にチオ硫酸ナトリウムを併用する群(現体重に対して10 g/m2、15 g/m2、20 g/m2)と併用しない群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、治療後または 3.5 歳以上のいずれかの時点で、標準純音聴力検査で Brock Grade 1以上と評価された難聴がある患者の割合であった。難聴の発生率は、チオ硫酸ナトリウムとシスプラチンの併用群(39%)の方がシスプラチン単独群(68%)よりも低かった(未調整相対リスク 0.58 [95% CI:0.40, 0.83])。
COG ACCL0431 試験には、累積シスプラチン投与量が 200 mg/m2 以上で1回のシスプラチン点滴投与時間が 6 時間以内の化学療法レジメンを受けている固形がんの小児患者 125人が登録された。患者は、シスプラチンベースの化学療法にチオ硫酸ナトリウムを併用する群と併用しない群に1対1の比率でランダムに割り付けられた。有効性は、限局した非転移性固形がん患者77人のサブセットで評価した。主要評価項目は、米国言語聴覚士協会(ASHA)の基準による難聴で、ベースライン時点およびシスプラチンの最終投与から4週間後に評価した。難聴の発生率は、チオ硫酸ナトリウムとシスプラチンの併用群(44%)の方がシスプラチン単独群(58%)よりも低かった(未調整相対リスク 0.75 [95% CI:0.48, 1.18])。
2つの試験で最も多く見られた副作用(25%以上、シスプラチン単剤療法と比較した群間差5%以上)は、嘔吐、悪心、ヘモグロビン減少、高ナトリウム血症、低カリウム血症であった。
チオ硫酸ナトリウムの推奨用量は、現体重による体表面積に基づく。チオ硫酸ナトリウムは、1~6時間かけてシスプラチンを点滴した後、15分かけて点滴静注する。
Pedmarkの全処方情報はこちらを参照。
監訳:太田 真弓(精神科・児童精神科/クリニックおおた 院長)
翻訳担当者 粟木 瑞穂
原文掲載日
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