集中治療室の小児患者の多くはリハビリテーション療法を受けていない

病院の集中治療室(ICU)に入院している成人患者は、しばしばリハビリテーション療法を受け、入院の初期段階から体を動かし続けるよう促される。これによって、褥瘡(床ずれ)、血栓およびその他の短期的リスクが下がると同時に、筋力、身体機能および認知機能が改善することが明らかになっている。しかしながら、全米の小児集中治療室(小児ICU)内の重症児におけるリハビリテーションの普及や欠如については、これまでしっかりとした研究が行われていなかった。

現在、ジョンズホプキンス大学医学部の研究者たちが主導した多施設共同研究によると、調査対象となった小児集中治療室内の患者の65%は研究期間内の入院中に理学療法や作業療法を受けなかったか、または体を動かす機会が十分に与えられていなかった。なかでも女児患者や、発病前に身体機能が正常であった患児は、この重要なケアを受けていない割合が特に高かった。研究チームはさらに、重症の小児ICU患者の19%が同期間中、完全に体を動かせない状態であったことも明らかにした。

研究者らは、Critical Care Medicine誌の2020年5月号で本研究結果を報告した。

PARK-PICU(Prevalence of Acute Rehab for Kids in the PICU:小児ICU患児に対する急性期リハビリ普及率)と呼ばれる本研究で、研究者たちは、全米各地の65の病院内にある82カ所の小児ICUに入院中の重症児のデータを収集した。これは、全米の全小児ICU病床の3分の1に相当する。検証された小児ICU内の患者入院日数は1,769日で、患者が体を動かすことに関して考えられる障害や安全性についても評価した。

「早期のリハビリテーション療法と体を動かすことが、ICU内の成人患者にとって利益があるという証拠があり、子どもにとっても安全で信頼性が高いことがわかっているにもかかわらず、今回の調査結果から、小児ICU内の患者が必要なリハビリテーションのケアを受けていないことが明らかになりました」と、ジョンズホプキンス大学医学部麻酔学・クリティカルケア医学の准教授で、本研究の筆頭著者のSapna Kudchadkar医師は述べている。

Kudchadchadkar医師らは、3 日間以上 小児ICU に入院していた全患児の 3 分の 2 が 、2 歳未満であったことも明らかにした。

「重症疾患の小児サバイバーは多くの場合、長期的な身体的、認知的および心理的な問題を経験しますが、小児ICU内にいる期間は子どもたちの心身が一気に成長する時期と重なるという事実から考えると、これらの問題は一層深刻です」と、彼女は述べている。

研究者らは、研究結果に基づき、病院に対して「脆弱な患者集団のために、小児ICUにおけるリハビリテーション介入を体系的に設計および評価すること」を促している。

翻訳担当者 畔柳祐子

監修 太田真弓(精神科・児童精神科/クリニックおおた 院長)

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