小児がんサバイバーの発がんリスクは数十年間続く

米国国立がん研究所(NCI)/ブログ〜がんの動向〜

原文掲載日 :2015年8月31日

新たな研究によると、小児がんサバイバーは、40歳を超えても二次性の、小児期とは別のがんの発生に対して高いリスクを有する。

小児がんサバイバーの二次発がんリスクの増加について報告した研究はいくつかあるが、この研究は、サバイバーの40~50歳代におけるリスクを評価した初の試験である。発がんリスクは年齢とともに増加するが、本研究では、40歳以上の小児がんサバイバーは、一般の人々に比べ、二次発がんリスクが2倍以上高いことが示された。

この結果は、Journal of Clinical Oncology(JCO)誌8月10日号に発表された。

University of Minnesota Medical CenterのLucie Turcotte医師を中心に行われた本研究は、NCIの支援のもと、長期的に行われているChildhood Cancer Survivor Study(小児がんサバイバー研究、CCSS)に参加し、1970~1986年の間に最初に診断された14,000人以上の患者のデータが使用された。

本研究の最後の参加者の調査が実施されたとき、このCCSSコホートにおける3,200人近くの参加者は40歳以上であった。これらの参加者において、615件のがんが診断され、うち2/3(419件)は非メラノーマ性皮膚がんであった。

ほかに高リスクがみられたのは乳がんであり、次いで腎がん、肉腫、甲状腺がんが続いた。長期間サバイバーでは良性腫瘍に対しても高いリスクを有していた。

全体的には、この解析におけるサバイバーの約16%で40~55歳の間に二次がんが発生した。著者らの報告によると、これらのサバイバーにおけるがん発生率は、40歳前に(良性または悪性のいずれであっても)二次がんと診断された経験の有無にかかわらず同程度であった。

サバイバーにおける二次がんは、過去の治療に関連していることが多く、本研究では、放射線治療およびプラチナ系抗がん剤投与と、40歳以上の二次がん発生リスクの実質的な増加との間に有意な相関がみられた。

本研究に含まれた多くのサバイバー(30%)は、小児期にホジキンリンパ腫を経験していた。その理由としては、ホジキンリンパ腫はほかの小児がんより発生年齢が高いため、参加者が調査時点ですでに50~60歳になっている可能性が高いことが1つとして挙げられる。

本研究の対象者が治療を受けた時代には、胸部に向けられた高線量放射線治療は、ホジキンリンパ腫の標準治療であった。この事実は本試験でみられた二次悪性がんの種類に「明らかに影響した」と、JCO誌の付随論説においてMark Applebaum医師とSusan Cohn医師は述べている。

ホジキンリンパ腫サバイバーの60%近くは、良性または悪性腫瘍を40歳以降で診断されているが、その理由は乳がんの発生率が高いからである。

NCIのOffice of Cancer SurvivorshipのディレクターであるJulia Rowland博士は、本解析においてはホジキンリンパ腫サバイバーが過剰に多く含まれていることが研究の欠点であることに同意した。

「しかし、今回の結果から、小児期にある種のがんと診断された人々にとって、二次発がんリスクは消退しないものであることがわかりました」とRowland博士は述べた。

これにはTurcotte博士も賛同し、「われわれの得た結果はホジキンリンパ腫サバイバーにとって最も重要な知見になるでしょう」と述べた。「今回の結果は、高線量放射線治療を受けた人は誰でも、年齢とともに慎重な観察を続けていくべきであることを示唆しています」。

小児がんサバイバーにおける、より短期的な転帰を評価した研究では、肺がん、大腸がん、頭頸部がんのリスク上昇が示されているが、このJCO誌の研究ではこれらのがんの発生リスクは長期的には上昇しなかったことが示された。Turcotte博士曰く、長期間サバイバーにおけるこれら特定のがんの発生率は、同年代の一般の人においても高いため、長期間サバイバーの潜在的な過剰リスクをわかりにくくしていることが理由ではないかと考えられる。

本研究の結果から、健康に関して包括的にモニタリングする方法は、小児がんサバイバーについては別の方法を取らなければならないことが確認された、とRowland博士は強調した。

そして、小児がんの長期サバイバーとの最近の会話についてこう語った。「その方はこう言ったんです。『小児がんはもはや必ずしも死刑宣告とは言えないですね』」。Rowland博士はさらに彼女の言葉を思い出すように続けた。「『でも、それは終身刑宣告なんですよね』。それは若いがんサバイバーに知っておいていただきたい重要な点です」。

画像訳: 新たな研究から、小児がんの長期サバイバーには二次発がんに備えた注意深いモニタリングが必要であることが示唆された。出典:米国国立がん研究所(NCI)

原文

翻訳担当者 大澤朋子 

監修 寺島慶太(小児血液・神経腫瘍/国立成育医療研究センター 小児がんセンター)

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