貧困層をターゲットにした小児がん治療改善プログラム
ダナファーバーがん研究所の研究者らが開発した小児RISE(公平性を支援するための資源介入)と呼ばれるプログラムのパイロット試験では、がん治療を受けている子供を持つ貧困家庭を対象にその実現可能性と価値を評価した。結果から、RISEが実現可能で価値があることが示唆される。同パイロット試験は、より大規模なランダム化多施設共同第2試験へと継続される。
この結果は、2024年12月7日にカリフォルニア州サンディエゴで開催された第66回米国血液学会(ASH)年次総会および展示会で、小児血液学/腫瘍学フェローのColleen A. Kelly医師によって発表された。同医師は、ダナファーバー/ボストン小児がん・血液疾患センターの小児腫瘍医で主任研究者のKira Bona医師(公衆衛生学修士)の研究室に所属している。
「私たちが描いているビジョンは、新薬を開発するのと同じ方法で、RISEのような介入を研究することです」とBona医師は言う。「臨床試験で、貧困をターゲットにしたこのような介入による転帰の改善がみられれば、私たちは、このプログラムがそれを必要とする人々への支援ケアの標準的な一部になるよう努力します」。
Bona医師は以前の研究で、低所得世帯の子供は、一流の学術センターで高度に標準化された臨床試験による治療を受けているにもかかわらず、恵まれた同年代の子供に比べてがん再発の可能性や生存率低下の可能性が高いことを発見した。こうした不平等は、食糧不安、住宅の不安定さ、交通手段の不足など、健康の社会的要因に基づいている。
「がんと診断された子どもの3人に1人は、子どもががん治療を受けている間、基本的なニーズを満たすことに不安を抱く低所得世帯で暮らしています」とBona医師は言う。「これは驚くべき数字です」。
小児科RISEは、3カ月間、対象となる家族に毎月2回現金を直接送金することで、これらの格差を解消することを目指している。このプログラムの金額は、児童税額控除と世帯の扶養家族の数に基づいて決定される。
このプログラムに参加した家族20組には、いずれもダナファーバーで治療を受けている子どもがおり、その65%は血液がんの治療中であった。子どもたちは主に非白人またはヒスパニック系で、公的保険に加入していた。半数以上がひとり親世帯で暮らしており、世帯収入の中央値は27,250ドルであった。20組のうち19組が、この研究の一部であるアンケート調査とインタビューをすべて完了した。
本試験では、口座振込、プリペイド デビット カード、オンライン決済アプリのいずれかを通じて、すべての家族に現金を振り込むことに成功した。さらに、家族はRISEに非常に満足しているか、ある程度満足していると報告し、資金を家賃や住宅ローンの支払い、食料品、公共料金、交通費に使用し、他の家族にこのプログラムを勧めたいと述べた。さらに、3カ月間のプログラム期間中、家族が報告した食料、住宅、公共料金、交通費に関する困難は90%から74%に減少した。
「家族たちによると、住居や食料、その他のニーズを満たされたことから、このプログラムはとても役立ち、ストレスが軽減されました」とKelly医師は言う。「基本的なニーズを満たす資源もない貧困家庭で、がんを患う子どもの世話をすることは、想像できません」。
親が指摘した主なメリットは、心の平穏が増し、子供のベッドサイドで過ごす時間が増えることであった。家族はまた、基本的なニーズを賄い、治療に伴う収入の減少を補うために、より長い期間にわたって金額を増やす必要があることも認識した。親からのフィードバックに基づいて、Kelly医師とBona医師は介入を迅速に改善し、支払い額と期間を増やすことができた。
プログラム設計には、現金支払いに関する懸念を軽減するための他の構造も含まれている。たとえば、この短期間の介入期間中に他の給付を失うリスクを軽減するため、支払いは非課税の贈与金として扱われる。認定給付カウンセラーとのオプションのセッションが1回提供され、資産調査による政府給付の喪失/削減に関する世帯固有のリスクを検討する。支払いは非営利団体を通じて行われるため、資金と医療との関連性はない。最後に、支払いは治療期間中の家族のあらゆるニーズに適用できるため、交通費、住宅費、食費に限定されない。
「この柔軟性により、家族や治療法ごとのニーズの多様性が考慮され、家族は最も必要としているところにサポートを適用できるようになります」とKelly医師は言う。
次のステップとして、改善されたRISEの実施は、ダナファーバーとコロンビア大学アーヴィング医療センターで、より大規模なランダム化第2相パイロット試験として評価される。
- 監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター)
- 記事担当者 仲里芳子
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- 原文掲載日 2024/12/07
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