小児癌サバイバーは後に腎疾患の問題に直面する
特定の化学療法や腎臓手術を受けた小児癌の成人サバイバーでは腎機能は低下しており、長い時間をかけても腎機能は回復していない。そのため、成人サバイバーでは早期腎不全のリスクが高くなることが米国癌学会誌Cancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに掲載された研究により報告された。
「最近の知見から、特定の治療後に小児癌サバイバーでは腎機能障害のリスクが高くなることが示唆されています。しかし、腎機能が時間とともに回復するのか、あるいは悪化するのかはわかりませんでした」とアムステルダムにあるEmma Children’s Hospital/Academic Medical Center(EKZ/AMC)の小児癌部門の研究員であるRenée Mulder博士は述べている。「この研究は、同一の患者について長期にわたり腎機能を繰り返し測定した、初めての縦断研究です。研究では、長期にわたりほぼ完全に近い追跡調査を行い、数多くの小児癌サバイバーを対象に時間的な傾向を評価しました。」
「腎毒性のある治療(腎臓に障害を及ぼすことが知られている治療)が行われた小児癌サバイバーでは、腎機能は治療後すぐに低下し、回復しないことがわかりました。医療従事者とサバイバーは、小児癌に対し腎毒性のある治療を行った後では、早期腎障害のリスクが高くなることを認識すべきです。こうした患者では、例えば心臓血管疾患などの合併症を発症するリスクもまた高くなるからです。」と博士は延べている。
Mulder博士と同僚の研修者らは、1996年から2010年までの期間にEKZ/AMCのLate Effects of Childhood Cancer外来部門を受診した成人の小児癌サバイバーの中から、研究の被験者1122人を調査した。被験者は18歳以上で、がんの診断と治療を受けた後、5年~42年にわたり追跡調査が行われた。
腎機能の評価には、被験者全員に糸球体機能検査を行い、糸球体濾過率(GFR)が計算された。被験者にはGRFの測定が1回以上行われた。このうちの920人には経過観察期間中に2~15回の測定が行われた。
研究者らは、イホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、高用量のメソトレキセートおよび高用量のシクロホスファミドなどの化学療法剤による腎障害性治療や腎領域への放射線療法、および腎摘出(腎臓の外科的部分または完全切除)による腎機能に対する長期間の影響を研究した。
研究者らは、腎障害性治療を受けなかった小児癌サバイバーと比較し、イホスファミドまたはシスプラチンを投与された小児癌サバイバーと腎摘出術受けた小児癌サバイバーではGFRはより低下し、糸球体機能障害の程度はより高くなることを発見した。また、こうした状態は追跡期間中にずっと続いていた。さらに、高用量のシスプラチンを投与された小児癌サバイバーでは腎機能低下にいたる割合がもっとも高いことがわかった。
研究著者によると、今回の結果から、がん治療後の早い時期に腎機能は低下し、回復しないことが示唆された。また、腎機能は悪化の一途をたどるため、こうした小児癌サバイバーでは早期慢性腎不全に陥るリスクの高いこともわかった。
この研究はアムステルダムのTom Voûte Fundから資金援助を受けている。利益相反はない。
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