2012/06/26号◆特集記事「思春期小児・若年成人の癌サバイバーの多くに慢性的な健康問題や不健康な生活習慣がみられる」

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NCI Cancer Bulletin2012年6月26日号(Volume 9 / Number 13)

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

思春期小児および若年成人の癌サバイバーの多くに慢性的な健康問題や不健康な生活習慣がみられる

思春期小児および若年成人(AYA)の癌サバイバーには、癌既往歴のない人々と比べて健康状態が不良で不健康な生活習慣がみられることが、最近の研究で明らかにされた。AYAサバイバーは喫煙者が多く、運動量が少なく、慢性疾患の有病率が高く、肥満、精神的・身体的健康状態不良で、さらに経済的に医療を受けることが困難な場合が多かった。

米国疾病対策予防センター(CDC)の行動的リスク因子調査システム(2009年)のデータを用いて行った本研究結果は、Cancer誌6月11日号に掲載された。

「低年齢の小児や高齢成人と比較して、AYA癌患者では生存期間の改善がみられないという文献が多くなりつつあるので、われわれはこの集団を注意して観察することにしました」と、筆頭著者であるCDC癌予防コントロール部門の医務官Dr. Eric Tai氏は説明した。

AYA癌サバイバーの健康状態についてさらに調査するため、Tai氏らは、15~29歳で初めて癌と診断された4,054人と、癌既往歴のない34万5000人の調査回答を解析した。

AYA期に癌に罹患した人は癌既往歴のない人と比べて、喫煙中、肥満、様々な慢性疾患を有す、障害がある、または精神的・身体的健康状態が不良である人が多いことが明らかになった。さらにAYA癌サバイバーは非雇用者や、働けない人が多く、費用面への懸念から医療を求めていないと報告する人が多かった。

「これらの知見は、AYA癌サバイバーがいかに弱者であるかというメッセージだと思います。この癌サバイバーグループのために私たちが対応しなければならない心理社会的・教育的問題や、雇用、行動上の問題がたくさんあります」と、NCI癌制御・人口学部門予後調査科の行動科学者Dr. Ashley Wilder Smith氏は述べた。

例えばCDCの研究者らは、AYA癌サバイバーの喫煙開始を止めさせ、禁煙を支援することが重要だと考え、次のように述べた。「これは特に思春期小児に当てはまります。彼らが喫煙したいという気持ちは将来の喫煙に密接に関連しているからです」。

本研究の著者らは、この集団では適切な経過観察を受ける割合が低いことにも言及した。「多くのAYA癌サバイバーは癌サバイバーシッププログラムの経過観察を受けておらず、AYA癌とその治療に関連するリスクをよく知らない家庭医の治療を受けていることがしばしばあります」。

医療提供者がAYA癌サバイバーの健康を改善する方法の1つに、医学研究所の2005年の報告書で推奨されている個別のサバイバーケアプラン作成があると、Tai氏は語る(今号の関連記事を参照)。「医療提供者は、小児やAYA患者のために作成された経過観察ガイドラインを用いなければなりません。これらのガイドラインにより、後遺症やリスク因子、検診および治療、さらにカウンセリングや不健康な生活習慣の問題の扱いに関する情報を医療提供者が身に付けることができます」。

Smith氏は、腫瘍内科団体はこの患者群が必要とする経過観察に関し、家庭医を今以上に教育すべきだと付け加えた。「AYAサバイバーは慢性疾患を抱えて長い人生を送ります」と述べ、「さらに、彼らの人生には、人間関係、家族との問題に加え、教育、雇用、頻繁な転居などたくさんの変化があります。これらの出来事は全て相互に作用する傾向があり、ひどい状況をもたらすことかあります。このことが、AYAサバイバーが望ましい経過観察を受ける機会を妨げてしまうのです」と説明した。

AYA癌サバイバーであり権利擁護団体Stupid Cancer Exit Disclaimerを設立したMatthew Zachary氏は、このサバイバー集団が直面する長期間の困難とリスクに驚かなかったと述べた。「この研究結果の多くは、閉鎖的な環境に暮らしているわれわれにとっては長い間ずっと明白でした。けれどもこのような研究が継続して公表されるのは大変良いことです。というのも、これらは私たちがすでに真実であることを知ってといる事柄を裏付けるからです。AYA癌の人々の特別なニーズや懸念に対処することの重要性を公表するのに役立ちます」。

がん治療センターのAYA専門プログラムはもう1つの解決策であるかもしれないとSmith氏は考えている。「小児と成人を主に対象とするがんセンターであっても、プログラムを備えるか、少なくともAYAのニーズや問題を中心とする窓口を置くべきです」と提案した。

「このようなプログラムは、一部のNCI指定総合がんセンターにおいて策定されつつあります。しかし多くの若年成人は地域で治療を受けているので、AYAプログラムや専門知識を有すNCIセンターや大規模な大学付属施設が地域に手を差し伸べて、より多くの若年成人癌患者がサービスを利用できるように計らう必要があります」と述べた。

「本CDC研究は、AYAサバイバーに対するより良い経過観察に取り組む必要性だけではなく、彼らをより総合的に見つめる必要があることを強調した点において重要です」とSmith氏は述べた。

参考記事:「ザ・フー(The Who)のヴォーカリスト、ロジャー・ダルトリー氏に10代のためのがんセンターについて聴く

思春期小児および若年成人に関するNCI Cancer Bulletin特別号」を参照。

–Bill Robinson

【画像内語句訳】

グラフタイトル:自己申告によるリスク行動、慢性状態ならびに健康状態

各項目
Currently Smoke:現在喫煙中
Obese:肥満
Disabled:障害あり
Poor mental health:精神状態不良
Poor physical health:健康状態不良
Unemployed/Unable to work:非雇用者/就労不能
Do not seek medical care医療ケア求めず
出展:行動的リスク因子調査システム(2009年)
【画像原文参照】

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大倉綾子 訳
太田真弓(医療法人社団学風会さいとうクリニック)監修 
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