健康状態が良好でない小児癌サバイバーは成人期の失業リスクが高い

・健康状態が良好でない場合、失業リスクは8倍になる
・神経認知機能に障害があると専門職につけない可能性が高い
・神経認知機能の問題が職業ステータスに及ぼす影響は男性よりも女性の方が大きい

フィラデルフィア-米国癌学会(American Association for Cancer Research)のCancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌に発表された研究によると、小児癌サバイバーで身体的な健康状態が良好でなく、また神経認知機能に障害のある場合は成人期において失業しているか、パートタイム職につく傾向にある。

これまでの研究によると、小児の癌克服が増えている一方で、癌治療により将来成長したときの職業的能力に影響を与えるかもしれないような合併症のリスクをもたらす可能性が示されている。

ワシントン州シアトルのフレッド・ハッチンソンがん研究センターの博士研究員であるAnne Kirchhoff医学博士・公衆衛生修士は「先の研究から、小児癌サバイバーは他の人に比べて無職となる可能性が高いことはわかっている。われわれの研究では身体健康上の問題といった要因を指摘しており、小児癌サバイバーの雇用改善に取り組むうえで重要な結果かもしれない」と本研究実施中に述べていた。Kirchhoff氏は現在Huntsman Cancer Instituteの研究者で、ユタ大学医学部(University of Utah School of Medicine)の小児科准教授である。

Kirchhoff氏らは、小児癌サバイバー研究(Childhood Cancer Survivor Study)のデータを用い、25才以上の小児癌サバイバー5,836人について、身体、精神、および神経認知機能と雇用状態および職業ステータスの関係を明らかにするため調査を行った。

Kirchhoff氏によると、標準調査票により標準的なアンケートを行った結果から健康状態の良好でないと定義した小児癌サバイバーは、健康状態の良好な小児癌サバイバーと比べ成人期に失業中の可能性が8倍であった。

「精神的健康状態および神経認知機能上の問題も失業と関係していたが、健康不良のため就業できないという小児癌サバイバーにおいて身体的な障害がかくも大きな要因であることは驚きであった」とKirchhoff氏は言う。

研究者によると、職についているサバイバーの中で、神経認知機能に問題のある場合は専門職についている傾向が低く、パートタイムあるいは専門的な技能が比較的必要のない職についている傾向が高かった。仕事の能率の問題など神経認知機能に問題のある女性の場合、同じ問題のある男性よりも専門的な技能の必要のない職についている傾向が高かった。

さらに、雇用形態の違いが各サバイバーの健康保険利用に影響するとKirchhoff氏らは強調している。癌による長期的な合併症の管理には健康保険が不可欠である。

「小児癌サバイバーは、よりよい職を得られるよう、リスクに関する情報を得て、健康上の問題はないか検査し、それらの問題に対処する方法を学ぶべきである」とKirchhoff氏は述べた。

# # #
ツイッターでAACRをフォロー:@aacr #aacr
フェイスブックでAACRをフォロー:http://www.facebook.com/aacr.org

米国癌学会(AACR:American Association for Cancer Research)は癌の予防および治療を使命としている。AACRは1907年に設立された世界で最も長い歴史を持つ最大の専門家機関であり、癌研究の推進に尽力している。構成メンバーには、米国および90を超える国々の基礎研究、トランスレーショナル研究、および臨床研究員、医療従事専門家、および癌サバイバーおよび支援者が33,000人いる。AACRは、質の高い科学および教育プログラムを通じて癌の予防、診断、および治療の進歩を加速させるために、癌コミュニティーのあらゆる専門知識を結集する。AACRは、革新的で優れた研究の助成や、研究奨励、キャリア形成に対する助成を行っている。AACRの年次会議には18,000人を超える参加者が集まり、関連分野の最新の発見および開発の成果が共有される。年間を通して行われる特別集会では、癌の研究、治療および患者ケアの幅広いテーマにわたって新しいデータが発表されている。Cancer Discovery誌を含め、AACRは重要な論文審査学術誌7誌を発行している(Cancer Research誌、Clinical Cancer Research誌、Molecular Cancer Therapeutics誌、Molecular Cancer Research誌、Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌、およびCancer Prevention Research誌)。AACRの学術誌は2009年の文献引用全体の市場シェア20%を占めていた。AACRはまた、癌サバイバーおよびその家族、患者支援者、医師および科学者向けにCRという雑誌を発行している。

メディア関係者の問い合わせは以下まで;:
Jeremy Moore
(267) 646-0557
jeremy.moore@aacr.org

翻訳担当者 金井太郎

監修 橋本 仁(獣医学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

小児がんに関連する記事

貧困層をターゲットにした小児がん治療改善プログラムの画像

貧困層をターゲットにした小児がん治療改善プログラム

ダナファーバーがん研究所の研究者らが開発した小児RISE(公平性を支援するための資源介入)と呼ばれるプログラムのパイロット試験では、がん治療を受けている子供を持つ貧困家庭を対象にその実...
がん患児が必要な支持療法を受けられるよう支援の画像

がん患児が必要な支持療法を受けられるよう支援

がん治療中の若年患者に症状について定期的に尋ねるという単純な行為によって、患者らがより良い支持療法を受けられ、つらい副作用が軽減されるようになることが、2件の新たな臨床試験結果からわか...
FDAが再発/難治性のBRAF変異陽性小児低悪性度神経膠腫にトボラフェニブを迅速承認の画像

FDAが再発/難治性のBRAF変異陽性小児低悪性度神経膠腫にトボラフェニブを迅速承認

米国食品医薬品局(FDA)2024年4月23日、米国食品医薬品局(FDA)は、BRAF融合遺伝子または遺伝子再構成、あるいはBRAF V600変異を有する生後6カ月以上の再発または難治...
小児がんサバイバーでは、遺伝的要因が二次がんリスクに影響の画像

小児がんサバイバーでは、遺伝的要因が二次がんリスクに影響

米国国立がん研究所(NCI)ニュースリリース高頻度でみられる遺伝的要因は、一般集団においてがんリスクを予測できるが、小児がんサバイバーにおける二次がんのリスク上昇も予測できる可能性があ...