二重特異性免疫チェックポイント阻害薬カドニリマブはPD-L1発現に関係なく胃がん生存率を改善
PD-1/CTLA-4二重特異性抗体cadonilimab(カドニリマブ)と化学療法の併用は、PD-L1低値腫瘍患者を含む、未治療のHER2陰性局所進行または転移性胃/胃食道接合部がん患者において、化学療法単独と比較して無増悪生存期間および全生存期間を改善した。この第3相COMPASSION-15試験の結果は、4月5日から10日まで開催された米国がん研究学会(AACR)年次総会2024で発表された。
PD-1/PD-L1チェックポイント経路を標的とする薬剤を含めて免疫チェックポイント阻害薬は、HER2を発現しない胃/胃食道接合部がんの一次治療薬として米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。しかし、免疫チェックポイント阻害薬は通常、腫瘍がPD-L1を高レベルで発現している患者に最も有効である。腫瘍のPD-L1発現が低い患者の場合、治療の選択肢は限られていると、Jiafu Ji医師は説明する。同医師は、北京の消化器がんホリスティック統合管理重点研究所、発がんトランスレーショナルリサーチ重点研究所、および北京大学がん病院・研究所消化器がんセンターに所属する教授である。
「多くの国では、これらのがん患者にとって化学療法が依然として最適な治療法であり、彼らの全生存期間は1年未満です」とJi氏は言う。「PD-L1低値、HER2陰性の胃/胃食道接合部がん患者に関しては医療上のニーズが満たされておらず、新たな治療選択肢の探究が切望されています」。
カドニリマブは、PD-1と、もう一つの免疫チェックポイント タンパクであるCTLA-4の両方を阻害する二重特異性抗体である。中国では、プラチナ製剤ベースの化学療法後の再発または転移性子宮頸がん患者の治療薬として承認されている。「カドニリマブと化学療法の併用は、PD-1とCTLA-4の両方を阻害するので、PD-1阻害薬と化学療法の併用よりも生存期間が延長するだろうと予測しました」とJi氏は述べた。
Ji氏らはCOMPASSION-15試験を開始し、未治療の切除不能、HER2陰性、局所進行または転移性胃/胃食道接合部がん患者610人を登録した。患者はカドニリマブ+カペシタビン/オキサリプラチン化学療法群、プラセボ+化学療法群のいずれかに1:1の割合で無作為に割り付けられた。
全体として、カドニリマブ群の患者の無増悪生存期間中央値は7カ月、全生存期間中央値は15カ月であった。これに対して、プラセボ群の無増悪生存期間中央値は5.3カ月、全生存期間中央値は10.8カ月であった。カドニリマブ群では全奏効率65.2%、奏効期間中央値8.8カ月であったのに対して、プラセボ群ではそれぞれ48.9%、4.4カ月であった。
低PD-L1(視認できる複合陽性スコアが5%未満と定義)の患者においても生存期間の延長が認められた。カドニリマブ群の低PD-L1患者における無増悪生存期間は6.9カ月、全生存期間は14.8カ月であったのに対し、プラセボ群の低PD-L1患者においてはそれぞれ4.6カ月、11.1カ月であった。
Ji氏は、PD-L1低発現の腫瘍はCTLA-4などの他の免疫チェックポイントに依存している可能性があり、したがってCTLA-4阻害に反応する可能性があると説明した。「PD-1とCTLA-4の二重阻害は、PD-L1低発現腫瘍患者の免疫療法感受性を改善する可能性があります」とJi氏は言う。「さらに、2つの二重特異性抗体の標的間に相乗効果がある可能性があり、メカニズム研究を進めることが必要です」。
これらのデータはCOMPASSION-15の中間解析から得られたもので、研究者らは長期的転帰を評価するために登録患者のモニタリングを継続する予定である。その一方で、カドニリマブと化学療法の併用療法について、この患者集団を対象とする承認申請を中国国家医薬品監督管理局に提出している。
「これらの知見で、胃がん治療の現状が変わるかもしれません。カドニリマブと化学療法の併用は、PD-L1発現率が低い患者でも、胃がんの一次治療における新たな標準治療となる可能性があります」とJi氏は述べる。
本試験の限界として、中国人患者のみを対象としていることが含まれ、他の地域への結果の適用が制限される可能性がある。
- 監訳 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)
- 翻訳担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2024/04/07
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