外科手術+放射線化学療法は食道癌の生存率を改善する

キャンサーコンサルタンツ
2010年6月

食道癌や食道胃接合部癌の患者では、外科手術の前に化学療法と放射線療法を行うことにより、外科手術の単独治療群と比べて全生存率が改善することがわかった。このような第3相臨床試験の結果が、2010年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。

食道は食物や液体が胃へと向かう際に通過する管状の筋肉である。米国では毎年16,000人以上が食道癌と診断されており、食道癌の死亡者数は14,000人を超えている。

外科的切除が可能な食道癌患者にとって、外科手術は治療で大きな役割を果たす。外科手術の前に化学放射線療法を行うことが切除可能な食道癌患者の治療効果の向上につながるかを調べるため、オランダの研究者が363人を対象とする第3相臨床試験を行った。患者は外科手術のみの治療群と、化学放射線療法後に外科手術を行う治療群に割りつけられた。放射線治療と同時併用された化学療法剤はパクリタキセルとカルボプラチンであった。

•1年生存率は、外科手術の単独治療群で70%であったのに対し、術前化学放射線療法群では82%であった。
•3年生存率は、外科手術の単独治療群で48%であったのに対し、術前化学放射線療法群では59%であった。
•術前化学放射線療法の奏効率は、食道癌のタイプによって異っていた。腺癌患者に比べて扁平上皮癌患者の奏効率が高かった。

本試験の結果から、一部の切除可能な食道癌や食道胃接合部癌患者では術前化学放射線療法が有効であることが示された。

参考文献:
Gaast AV, van Hagen P, Hulshof M et al. Effect of preoperative concurrent chemoradiotherapy on survival of patients with resectable esophageal or esophagogastric junction cancer: Results from a multicenter phase III study. Presented at the 2010 annual meeting of the American Society of Clinical Clinical Oncology, Chicago, IL, June 4-8, 2010. Abstract 4004.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 窪田美穂

監修 平 栄 (放射線腫瘍科)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

食道がんに関連する記事

術前化学放射線+免疫療法薬チスレリズマブで食道がんの予後改善の画像

術前化学放射線+免疫療法薬チスレリズマブで食道がんの予後改善

放射線療法・化学療法・免疫療法薬の併用により、腫瘍を縮小させ手術を可能にすることができ、非外科的治療単独よりもはるかに生存率が向上する切除不能な局所進行食道がん患者において、放...
積極的サーベイランスが扁平上皮食道がん患者の手術回避につながる可能性の画像

積極的サーベイランスが扁平上皮食道がん患者の手術回避につながる可能性

食道がん、上咽頭がん、肺がんの治療の進歩ーASCOブレークスルー会議新しい治療法が生存とQOLの改善に役立つ食道がん、上咽頭がん、肺がんにおける新たな研究の進展を詳述す...
肺がん、食道がん、鼻咽頭がんの治療の進歩ー日本開催ASCOブレークスルー会議の画像

肺がん、食道がん、鼻咽頭がんの治療の進歩ー日本開催ASCOブレークスルー会議

米国臨床腫瘍学会 (ASCO) のブレークスルー会議では、臨床医、腫瘍学のリーダー、医療技術および研究の先駆者が一堂に会し、がん治療技術の最新イノベーションを活用して進歩を加速し、患者...
【ASCO2024年次総会】一部の食道がんでFLOT術前術後療法が新たな標準治療となる可能性の画像

【ASCO2024年次総会】一部の食道がんでFLOT術前術後療法が新たな標準治療となる可能性

ASCOの見解(引用)「切除可能な局所進行食道がんに対して、手術前にすべての補助療法を行うのと、手術前後に『サンドイッチ』補助療法を行うのとでは、どちらが優れた標準治療かについ...