食道の前癌状態への新しい治療アプローチ/デューク大学
原文
食道の前癌状態への新しい治療アプローチ
デューク大学医療センター* 2007年5月22日
ノースカロライナ州ダラム-集中させたラジオ波を用いての焼灼が、癌の前駆病変になりうる食道の異常細胞増殖に対する安全で新しい方法になりそうだ。
この新しい方法は、バレット食道(下部食道への胃酸の逆流が続くことにより、長い期間をかけて引き起こされた食道上皮への障害に合併する病態)で調査されている。この病状は比較的よくみられるものだが、この患者の数%は、食道癌を引き起こす可能性のある異形成(dysplasia)という異常細胞へと進行していく。
デューク大学メディカルセンターの胃腸科専門医らは、食道へ挿入したカテーテルを通してラジオ波を集中させて発生させることで、現在の治療法より少ない副作用で異形成を効果的に治療できることを見出した。ラジオ波焼灼法として知られるこの治療後、治療を受けた細胞は死滅・脱落して、4~6週間以内に新しい健康な細胞に換わる。
胃腸科専門医のDarren Pavey MBBS氏によると、デューク大でラジオ波焼灼療法で治療を受けた12人の患者の検討では、治療三ヵ月後に食道に挿入した内視鏡で観察した結果、89%の患者では外見上正常に見られる食道組織が認められた。その新しい細胞のサンプルは検査室で分析され、そのうち半分の患者ではより健康な組織であった。
Pavey氏はワシントンDCで開催されたDigestive Disease Week(消化器病週間)の年次総会で5月22日火曜日、この分析結果を発表した。彼の研究は、デューク大消化器病学科のサポートを受けた。
「この手法に要する時間は約20~30分で、われわれは食道までカテーテルを挿入し、異常な細胞の層を表面的に焼灼する」と、Pavey氏は語った。「この手法は大腸内視鏡検査と同様に、意識下鎮静のもと外来処置として施行される。患者は処置の後ほとんど不快感は感じない。」
Pavey氏は、このラジオ波焼灼療法が現在行われている大規模試験でも効果的であると証明された場合、医師はより少ない副作用と苦痛の少ない手法を提供できるようになるだろうと述べた。
現在のところ、高度異形成を示すバレット食道に対しては、大きくわけて二つの治療法がある。外科的アプローチは、食道の病変部を取り除くことである。これは大手術になり、最大6%の死亡率と逆流や嚥下の問題を残すことがある、とPavey氏は言う。
もうひとつのアプローチは過去10年間用いられてきた光線力学療法として知られているものである。光線力学療法では異常細胞に特異的に取り込まれる感光剤を用いる。それから医師は食道内部にレーザー光を照射し、そのレーザー光が標的細胞を破壊する。しかしながら、患者は数週間にわたり直射日光を避ける必要があり、そして30%未満の患者では食道に嚥下に支障がでるほどの瘢痕が生じる。
「現時のところ、ラジオ波焼灼療法は手術よりも侵襲が少なく、光線力学療法よりも負担が少ない」と、Pavey氏は言った。「このアプローチはバレット食道の患者治療法を劇的に変える可能性がある。」
バレット食道の頻度を決めるのは難しいが、病理解剖の研究では、米国では60~80人に1人の割合で発生し、その多くは白人であるとされている。また、女性より男性の方が4倍発生しやすい。長期にわたる胃腸からの逆流もしくは胸焼けの患者のうち、約10%でバレット食道を発症する。
「われわれの研究では、光線力学療法で不十分にしか奏効しなかった患者に対しても、ラジオ波焼灼療法は効果的と考えられることが分った」と、Pavey氏は言った。
デューク大を含む18のセンターにてバレット食道患者のラジオ波焼灼療法の効果と現存の治療法を比較する試験の登録を行っている。120人の患者の登録が見込まれている。
******
根本明日香 訳
平 栄 (放射線腫瘍医)監修
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
食道がんに関連する記事
術前化学放射線+免疫療法薬チスレリズマブで食道がんの予後改善
2024年12月17日
積極的サーベイランスが扁平上皮食道がん患者の手術回避につながる可能性
2024年10月3日
肺がん、食道がん、鼻咽頭がんの治療の進歩ー日本開催ASCOブレークスルー会議
2024年8月23日
【ASCO2024年次総会】一部の食道がんでFLOT術前術後療法が新たな標準治療となる可能性
2024年7月25日