化学療法と放射線療法の順次併用療法と交替併用療法は喉頭癌に対して同様の効果がある

キャンサーコンサルタンツ
2009年1月

欧州癌研究治療機関(EORTC)の放射線腫瘍科グループ関係の研究者らは化学療法と放射線療法を用いる異なった2種類の併用療法が手術可能な進行した喉頭または下咽頭の扁平上皮癌患者に同等のベネフィットがあると報告した。このランダム化比較試験の詳細は2009年1月17日付Journal of the National Cancer Institute誌の早期電子版に掲載された。

転移のない進行した喉頭癌患者に対して従来は喉頭の切除(喉頭全摘術)が行われてきた。この治療法では、患者は声を失うことになる。喉頭癌の治療が進歩し、喉頭温存療法が発達してきた。たとえば化学療法と放射線治療の併用により、生存期間を短縮することなく喉頭温存が可能な患者もでてきた。

順次併用療法は喉頭癌に対して化学療法と放射線療法を併用する方法のひとつで、まず化学療法が行われ、この療法に反応した患者は追加の放射線による治療を受ける。もし反応がなければ、喉頭摘出術による治療が行われる。

さらに最先端の方法が同時併用療法である。この方法では、化学療法と放射線療法の併用が同時に行われる。同時併用療法の喉頭温存率はより高いが、副作用が増すと考えられている。

交替併用療法とは化学療法後に放射線治療を行い、加えて化学療法を行うような治療である。たとえば第1, 4, 7, 10週に化学療法を行い、第2-3, 5-6, 8-9週に放射線治療を行う。研究者らは、この治療法は副作用をより少なくしつつ、同時併用療法と同等の局所制御率を達成できると仮定した。

交替併用療法を評価する目的で、ヨーロッパの研究者らは手術可能な進行した喉頭または下咽頭の扁平上皮癌患者450人を対象に第3相臨床試験を実施した。このうちの半数が交替併用療法を受け、残りの半数が順次併用療法を受けた。化学療法はシスプラチンと5-FU(5-フルオロウラシル)の併用投与であった。いずれの群においても、治療に反応しなかった場合は、喉頭摘出術が行われた。

現時点で、患者の追跡期間は6年を超えている。喉頭温存率や全生存期間、無病生存期間において、両群間に有意差はみられなかった。交替併用療法群の22.1%が手術を必要としたのに対して、順次併用療法群では30.1%であった。交替併用療法群の24.7%で頚部郭清が行われたが、順次併用療法群で頚部郭清が行われたのは34.4%であった。喉頭切除がなされたのは順次併用療法群では67例、交替併用療法群では35例であった。交替併用療法群では36.2%で喉頭機能の温存が可能であったのに対して、順次併用療法群の喉頭機能温存率は30.5%であった。順次併用療法群での無増悪生存期間中央値は3年、順次併用療法群では3.1年であった。全生存期間中央値は、順次併用療法群が4.4年、交替併用療法群が5.1年であった。

粘膜炎のような急性の副作用は、順次併用療法群と比較して交替併用療法群の患者のほうがより少ないとみられた。またグレード3-4の粘膜炎発現率は、順次併用療法群で32%、交替併用療法群では21%であった。

コメント:

以上の結果は化学療法と放射線療法の順次併用と交替併用が同様の効果をもたらすことを示している。しかしながら、喉頭機能の温存と毒性の観点から見ると、交替併用療法のほうが望ましい傾向を今回のデータは示している。

参考文献:
Lefebvre JL, Rolland F, Tesselaar M et al. Phase 3 randomized trial on larynx preservation comparing sequential vs alternating chemotherapy and radiotherapy. Journal of the National Cancer Institute [early online publication]. January 27, 2009.


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翻訳担当者 村中 健一郎(生物物理学)

監修 水向 絢子(基礎医学)

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