PARP阻害薬ルカパリブは変異を有する膵臓がんを縮小
BRCA1/2、またはPALB2遺伝子変異を有する膵臓がん患者の大半で、化学療法から経口PARP阻害薬rucaparib[ルカパリブ](販売名:Rubraca)による維持療法に切り替えた後、腫瘍が縮小するか、または増大しなかったことが第2相臨床試験で示された。
「今回の結果は、PARP阻害薬と、治療が困難な膵臓がん治療における前進です」と、研究代表者であるKim Reiss博士(ペンシルバニア大学ペレルマン医学大学院、フィラデルフィア)はニュースリリースで発表した。
「こうした変異を有する膵臓がん患者にとって、ルカパリブは奏効を持続できるのみならず腫瘍を縮小させる、また場合によっては、完全奏効に達する可能性もある安全な選択肢です」とReiss氏は述べる。
米国では現在、ルカパリブは前立腺がん、再発卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんなど特定の患者に対する維持療法として承認されているが、膵臓がんへの適応はない。
本試験は研究者主導型の単群試験であり、BRCA1、BRCA2、またはPALB2に生殖細胞系(g)または体細胞系(s)の病原性変異(PV)を有する進行膵臓がんであり、プラチナベース化学療法を16週間以上受けた後、同薬剤に対する耐性が認められなかった患者46人が登録された。
化学療法は中止され、患者らはがんの進行までルカパリブ(600mg、1日2回)の経口投与を受けた。
評価可能な患者42人のうち、gBRCA2型が27人、gBRCA1型が7人、gPALB2型が6人、sBRCA2型が2人であった。
6カ月時点の無増悪生存率(PFS)59.5%を受けて、「本試験は主要目的を達成した」とReiss氏らはJournal of Clinical Oncology誌で発表した。12カ月時点のPFSは54.8%であった。
無増悪生存期間中央値は13.1カ月、全生存期間中央値は23.5カ月であり、「維持療法としてのルカパリブに顕著な効果が認められた」と付け加えた。
奏効率は41.7%で、完全奏効3例、部分奏効12例が含まれる。病勢コントロール率(完全奏効、部分奏効、安定状態)は66.7%、奏効期間中央値は17.3カ月であった。
「重要なのは、gPALB2 変異またはsBRCA2 変異を有する患者および扁平上皮がん患者への効果が認められたことであり、このことは臨床現場におけるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ阻害薬の役割が拡大する可能性を示唆しています」と著者らは述べる。
大学のニュースリリースによると、「本試験のデータ締め切り時点で、8人の患者が生存中で、ルカパリブの投与開始から2年以上続いている追跡調査の対象であり、そのうち4人が無増悪でした。完全奏効を示した患者3人中2人は1年以上経過した現在も生存しています」。
新たな安全性の懸念は認められなかった。
「本試験は単一施設での単群試験であるため、試験結果はやや慎重に解釈しなくてはいけません。しかし、われわれの結果に基づいて考えれば、ルカパリブは生殖細胞系および体細胞系のBRCA1、BRCA2、またはPALB2変異を有するプラチナ感受性進行膵臓がんに対して、安全かつ有効な治療法であると強く思います」とReiss氏はロイター・ヘルスに電子メールで回答した。
「(今回の結果は、ルカパリブが)膵臓がん患者に対する維持療法として、有効で毒性が低いもう一つの選択肢であることを示すとともに、遺伝カウンセリングや遺伝子検査の重要性を明確に示しています。これは治療方針をより良い方向に誘導するうえで有望です」と、統括著者のSusan Domcek博士(ペンシルバニア大学Basser Center for BRCAエグゼクティブ・ディレクター)はニュースリリースで付け加えている。
本研究は、Clovis Oncology、Basser Center Young Leadership Council、The Konner Fund、The Pearl and Philip Basser Innovation Research Award、Anonymous Foundationの支援を受けた。
出典: https://bit.ly/3o6OYda 2021年5月10日付けJournal of Clinical Oncology誌オンライン版
翻訳担当者 佐藤美奈子
監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)
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