膵臓がんにルカパリブ維持療法が臨床的奏効を示す

PARP阻害薬ルカパリブ(Rubraca)による維持療法は、BRCAかPALB2に遺伝子変異があってプラチナベースの化学療法に感受性を有する進行膵臓がん患者に忍容性が良好で、臨床的な奏効ももたらすことができた。3月29日から4月3日まで開催の2019年米国がん学会(AACR)年次総会において、実施中の第2相臨床試験に関してこのような中間解析結果が発表された。

「この中間解析では、プラチナ製剤に感受性のある膵臓がん患者にルカパリブ単剤治療の利益が得られている様子が確認できました」と、ペンシルバニア大学病院血液・腫瘍内科の助教であるKim Reiss Binder医師は述べた。「ルカパリブによる治療で完全奏効や部分奏効した患者も数人いました。これは、この治療が、疾患を維持するだけでなく、腫瘍を縮小できる可能性を示唆しています」と同氏は付け加えた。

Reiss Binder医師によると、膵臓がん患者の約6~8パーセントがBRCAまたはPALB2に病原性の遺伝子変異を有している。また、同氏によると、この遺伝子変異を持つ患者は、プラチナベースの化学療法にも感受性を持つことがあるという。「膵臓がん患者のこの小集団にはプラチナベースの化学療法がよく奏効しますが、治療が長期に渡ると毒性が蓄積するため、この治療を持続することができなくなることが多いのです。そうなると承認された治療はありません。そのため、われわれは、より忍容性良好な維持療法がないかを調べたいと考えました」とReiss Binder医師は述べた。

ルカパリブは、プラチナベースの化学療法が奏効する再発卵巣がん、卵管がん、または原発性腹膜がん患者の維持療法として承認されている。「この治療戦略を、プラチナ製剤が奏効する膵臓がん患者にも利用できないか、判断したいと考えました」とReiss Binder医師は説明した。

この単一群第2相臨床試験は、プラチナベースの化学療法で治療歴があって病勢進行しておらず、BRCAかPALB2に遺伝子変異のある進行膵臓がん患者からの登録を積極的に受入れている。中間解析の対象となった患者は、プラチナベースの化学療法を中間値で4カ月間受けていた。患者の80%以上が女性だった。

患者は、病勢進行、または許容できない毒性が認められるまで、ルカパリブ600mgの治療を1日2回受けた。この研究の主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、全奏効率(ORR)も評価項目に入っている。

2018年12月31日現在、24人の登録患者のうち19人が分析評価可能だった。

分析時の無増悪生存期間は、中央値でルカパリブ治療開始後9.1カ月だった。全奏効率は37%で、これには完全奏効(CR)1件と部分奏効(PR)6件が含まれていた。8週間以上疾患が制御できた割合(部分奏効、完全奏効、および安定の合計と定義)は90%だった。8人の患者が6カ月間以上ルカパリブ療法を続けており、2人の患者は1年以上ルカパリブ療法を続けていた。

この治療でよく見られた有害事象は、悪心、味覚障害(味覚のゆがみ)、および疲労であった。

「これはとても早い段階のデータですが、対象患者の一部で臨床的奏効が持続しているのを確認できたのは非常に喜ばしいことです」とReiss Binder氏は述べた。「最近では高頻度マイクロサテライト不安定性を有するがん患者に対して組織非依存の薬剤としてペムブロリズマブが承認されましたが、これを除くと膵臓がん患者にとって有望な標的療法は他にありません」。

「われわれの結果は、膵臓がん患者に生殖細胞系列遺伝子検査と体細胞遺伝子検査を実施する重要性を強調しています」とReiss Binder氏は述べた。「特定の遺伝子変異の有無は治療戦略を導いてくれます。患者も、がん専門医に、検査を受けるか聞くことを自覚するべきです」。

今回のデータは進行中の小規模な単一群臨床検査を予定外に中間解析したものだったため、結果はさらなる検証が必要だとReiss Binder氏は述べた。

この研究はAbramson Cancer Centerがスポンサーになり、Clovis Oncologyが資金提供した。 Reiss Binder医師はClovis Oncology、Tesaro、Bristol-Myers SquibbとLilly Oncologyから研究資金の提供を受けている。

 

翻訳担当者 関口百合

監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

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