膵臓がん細胞が免疫細胞の攻撃を無力化するメカニズムの発見
- マクロファージと呼ばれる免疫細胞は、体内でいち早く初期のがんに反応するの応答システムの1つである。
- マクロファージからの攻撃を無力化する因子を膵臓がん細胞が分泌していることが研究によって明らかになった。
- この知見は、免疫監視機構を阻害し、がんの発症に寄与する新たなメカニズムを説明している。
オハイオ州立大学総合がんセンター James Center Hospital and Solove Research Institute (OSUCCC-James)の新しい研究で、研究者らは、膵臓がん細胞がマクロファージと呼ばれる免疫細胞からの攻撃から身を守るために分泌する物質を同定した。
この研究では、初期の膵臓がんの形成にはGdf-15と呼ばれる物質が必要である可能性が指摘された。また、NF-kB(エヌ・エフ・カッパ・ビー)と呼ばれる分子ががん細胞によるGdf-15の生成を促進していることも明らかになった。
Gdf-15は、マクロファージに取り込まれると一酸化窒素と腫瘍壊死因子という2種類の化学物質の生成を阻害する。これら2種類の化学物質はマクロファージががん細胞を死滅させるために分泌するものである。皮肉なことに、マクロファージ中のNF-kBは一酸化窒素および腫瘍壊死因子の産生においても重要な役割を果たすことがわかった。
この知見はJournal of Clinical Investigation誌に報告された。
「この研究は、GDF-15が膵臓がん発症に重要な役割を果たしていて、またGDF-15が初期の膵臓がんの形成に必要である可能性を示唆している」とオハイオ州立大学がん生化学教授で基礎研究のアソシエイトディレクターである主任研究者のDenis Guttridge医師は述べた。
「このマクロファージを無力化するメカニズムはがん細胞の初期に構築され、小さい腫瘍の生存、増殖を可能にしていると考えています」とOSUCCC – James MolecularのMolecular Carcinogenesis and Chemoprevention Programにも所属するGuttridge医師は述べた。「これらの知見は、膵臓がん発症におけるGDF-15の役割を判断する前臨床研究の必要性を支持しています」。
Guttridge医師らは、膵臓がん細胞株、患者の腫瘍から得た細胞および動物モデルを用いてこの研究を実施した。主な知見は以下のとおり。
- NF-kBはGdf-15の直接調節因子である。
- GDF-15は、一酸化窒素および腫瘍壊死因子の生成を阻害することにより、マクロファージの細胞傷害活性を抑制する。
- GDF-15とNF-kBの両方が、膵臓がん患者において過剰発現する。
Guttridge医師は以下のように述べた。「総括すると、われわれの結果は、膵臓がん細胞のGDF-15合成・分泌はNF-kBが取り仕切っていること、そしてGDF-15がマクロファージにおけるNF-kB活性を阻害し、がん細胞の死滅を阻害していることを明らかにしました」。
この研究は、OSUCCC – Jamesの研究資金を調達する年次の自転車イベントであるPelotoniaから資金提供を受けた。
この研究に関わった他の研究者は以下のとおり。
Nivedita M. Ratnam, Jennifer M. Peterson, Erin E. Talbert, Katherine J. Ladner, Priyani V. Rajasekera, Carl R. Schmidt, Mary E. Dillhoff, Benjamin J. Swanson, Ericka Haverick, Raleigh D. Kladney, Terence M. Williams and David J. Wang, The Ohio State University; and Gustavo W. Leone, now at the University of South Carolina.
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