術後カペシタビン+ゲムシタビン併用療法が膵臓がん患者の生存期間延長

プレスリリース

*この要約には抄録にない最新のデータが含まれています。

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解

「膵臓がんは依然として最も治療困難ながんの1つです。一般的な化学療法剤を追加することで、膵臓がん患者の生存期間を延長するだけでなく、患者のQOLにもほとんど影響を及ぼさないことがわかったことは、大きな勝利です」と、ASCOの膵臓がん専門医であるSmitha Krishnamurthi医師は述べた。

膵臓がんに関するこれまでで最大規模の研究の1つである、欧州の第3相臨床試験で、経口剤のカペシタビンをゲムシタビン化学療法に追加することにより、毒性が増大することなく生存期間を延長することが示された。術後補助療法としてのゲムシタビン化学療法は、現在、膵臓がん切除術後の世界的に標準的な治療法である。

この試験は本日の記者会見で取り上げられ、2016年ASCO年次総会で発表される。

「不運にも、ほとんどの患者は膵臓がんの診断を受けた時にはすでに手術適応外です」と、英国・リバプールにあるリバプール大学Department of Molecular and Clinical Cancer Medicineの外科部長であり、本研究の筆頭著者のJohn P. Neoptolemos医師(MA、 MB Bchir(医学士)、 FMedSci)は述べた。「今回得られた知見は、手術を受けることができる膵臓がん患者が、一般的に使用される2つの化学療法の併用により生き延びる可能性があることを示す重要なものです」。

試験の概要

732人の患者を対象としたEuropean Study Group for Pancreatic Cancer 4 (ESPAC-4)臨床試験は、手術を受けた膵臓がん患者を対象に実施された臨床試験のうち2番目に大規模なものである。手術後12週間以内に、早期膵管腺がん患者を、ゲムシタビン単独群、またはゲムシタビン+カペシタビン併用群に無作為に割り付け、24週間にわたり治療を行った。

主要な研究結果

全生存期間中央値は、併用療法群の28.0カ月に対して、ゲムシタビン単独群では25.5カ月であった。推定5年生存率は、併用療法群では28.8%であったのに対し、ゲムシタビン単独群では16.3%であった。「生存期間中央値の差はそれほど大きくないように見えるかもしれませんが、長期生存率の向上については膵臓がんにとって非常に大きいものです」とNeoptolemos氏は述べた。「5年生存率は、手術のみでは8%だったのに対し、術後補助療法を行うことでほぼ30%までに向上しています」。

著者らによると、患者特性は現実世界の膵臓がん患者集団を反映するものであった。大多数の患者は、局所進行性または悪性度が高いこと、腫瘍サイズが大きいこと、または不完全な腫瘍切除などの予後不良因子を有していた。

併用レジメンによる生存の有益性は、これらの因子に関係なく認められた。診断前に喫煙していたが診断後に禁煙した患者は、診断後に喫煙を継続した患者と比べて転帰が良好であった。

全般に、両群間における副作用の種類と重症度に大きな差はなかった。重度の下痢が、併用療法群でわずかに多い頻度で発生し(14人対5人)、疲労についても同様であった(16人対14人)。生活の質(QOL)においても両群間で同等であった。

今後の展開

ゲムシタビン+カペシタビンの化学療法レジメンの安全性が確認されると、この組み合わせに他の治療法を追加する機会が提供され、患者の転帰をさらに改善する可能性がある。今後の研究は、どの患者が特定の術後補助療法から最も利益を得るかを予測するための試験を開発することに焦点が当てられる。

ゲムシタビンおよびカペシタビンについて

ゲムシタビンは、早期膵臓がんに対する標準的な術後補助療法として使用される静脈内化学療法である。米国では、ゲムシタビンは、乳がん、卵巣がん、肺がん患者の治療薬としても承認されている。カペシタビンは、米国で乳がんおよび大腸がん患者の治療薬として承認されている経口化学療法剤である。ゲムシタビンとカペシタビンは、いずれもジェネリック医薬品が販売されている。

膵臓がんについて

2012年には、世界中で338,000人が膵臓がんと診断された[1]。膵臓がんの発生率が最も高い地域は北米および欧州であり、最も低い地域はアフリカおよびアジアであった。2016年には、米国における推定53,070人の成人が膵臓がんと診断される見込みである[2]。膵臓がんは、米国におけるがんの死因第4位である。本年は、膵臓がんによる死亡は41,780件発生すると推定されている。

この試験はキャンサーリサーチUK(Cancer Research UK)より資金援助を受けた。

本試験の抄録の全文はこちら(英語)

1http://www.wcrf.org/int/cancer-facts-figures/data-specific-cancers/pancreatic-cancer-statistics. Accessed May 16, 2016.
2http://seer.cancer.gov/statfacts/html/pancreas.html. Accessed May 16, 2016.

翻訳担当者 星野恭子

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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原文掲載日 

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